要旨

  • 2016年、生保はさまざまな商品・サービスを開発、発売した。
  • 2016年4月からスタートした患者申出療養に対応して2016年9月に発売された商品や、2013年6月に金融審議会ワーキンググループが提言した不妊治療保険に対応して2016年10月に発売された商品などがある。
  • このほか、長生きすればするほど受取額が大きくなる年金や、健康で長生きできる期間である「健康寿命」に着目した新サービスも現れた。
  • また、各生保会社は同性パートナーを保険金受取人などに指定することを認めるようになった。
  • こうした動向を紹介することとしたい。

はじめに

2016年、生保はさまざまな商品・サービスを開発、発売した。

とくに注目されるのは、2016年4月からスタートした患者申出療養に対応して2016年9月に発売された商品と、2013 年6月に金融審議会ワーキンググループが提言した不妊治療保険に対応して2016年10月に発売された商品だろう。

また、高齢化社会の中で、長生きすればするほど受取額が大きくなる年金や、健康で長生きできる期間である「健康寿命」に着目した新サービスを提供する保険会社も現れた。

さらに、2015年11月、渋谷区が、同性カップルに対し、結婚に相当する関係と認定する「パートナーシップ証明書」の交付を開始したのを契機に、各生保会社が同性パートナーを保険金受取人などに指定することを認めるようになった。

年末にあたり、こうした2016年の生保新商品・新サービスの概要を紹介することとしたい。

新商品

◆患者申出療養を保障する新商品

2016年4月に導入された、新たな保険外併用療養(混合診療)の仕組みである患者申出療養については、2016年9月21日、第1号として「腹膜播種陽性または腹腔細胞診陽性の胃がんに対する国内未承認の治療」(パクリタキセルという抗がん剤の腹腔内投与など)が承認された(1)。

アクサ生命は2016年9月20日から、この患者申出療養の技術料を保障する、業界初の「患者申出療養サポート」の販売を開始した。

医療保険などとセットで販売されており、患者申出療養給付金は1回につき1000万円、通算2000万円が支払限度で、保険料は年齢、性別を問わず月400円に設定されている(2)。

患者申出療養は患者の申出にもとづく国内未承認の抗がん剤などが想定されていることなどを加味して、すでに各社から発売されている先進医療特約の保険料(年齢、性別を問わず月100円程度)と比較して高めの保険料が設定されている模様である。

◆不妊治療を保障する新商品

不妊治療保険は、2013 年6月7日、金融審議会「新しい保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキンググループ」が取りまとめた報告書「新しい保険商品・サービス及び募集ルールの在り方について」で提言された。

同報告書は、「不妊治療への社会的関心は高まっているが、その治療内容によっては多額の費用を要することから、当該費用をてん補するための保険に対する需要が高まりつつある」と指摘している(3)。

こうした提言を受け、日本生命は2016年10月2日、特定不妊治療などを保障する業界初の商品として、出産サポート給付金付3大疾病保障保険”Chou Chou !”(シュシュ)を発売した。

がん、心筋梗塞、脳卒中の3大疾病への罹患を保障する3大疾病保障保険(300万円)に特定不妊治療給付金などが組み込まれた商品であり、特定不妊治療給付金は加入から2年経過後の体外受精、顕微鏡受精に伴う採卵または胚移植について、1回目から6回目は5万円、7回目から12回目は10万円が支払われる。

また、加入から1年経過後の出産については1回目が10万円、2回目が30万円、3回目が50万円など出産回数に応じて段階的に増額する出産給付金が支払われ、満期一時金(保険期間10年の場合、100万円から給付金相当額を控除した金額)もある。

月払保険料は30歳女性・保険期間10年で10,128円、40歳女性・保険期間10年で月払10,869円などとなっている(4)。

◆その他の新商品

米国では、85歳以降など超高齢を迎えた以降の生活資金の確保を目的とする新しい終身個人年金として、2000年代以降、「長寿年金」が発売されている(5)。

日本においても、人生100年時代ともいえる長寿社会到来の中で、日本生命は2016年4月2日、トンチン性(死亡者の持分を生存者に分配することで生存保障性を強める性質)を高め、解約払戻金を低く設定した終身年金として、長寿生存保険(低解約払戻金型)”Gran Age”(グランエイジ)を発売した。

長寿生存保険では、たとえば50歳男性が払込期間20年で月4万7946円の保険料を支払うと、70歳から年60万円の終身年金を受け取ることとなる。

89歳で受取年金額累計と総払込保険料がほぼ同額となり、99歳まで生きると総払込保険料の1.5倍以上の年金が受取れる(6)。

このほか、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は、2016 年9月20 日から、月々500円の保険料で加入できるネット専用保険として、「リンククロスコインズ」を発売した。

保険料は年齢、性別にかかわらず月500円で、保障を先進医療と臓器移植に限定し、先進医療保障は先進医療の技術料相当額を支払う先進医療給付金(通算2000万円まで)と先進医療一時金(1回につき5万円)、心臓・肺・肝臓・膵臓・小腸・腎臓の臓器移植には1000万円が支払われる(*7)。