「朝」を活用すれば、24時間がもっと充実する!
多くのビジネスマンにとって、ウィークデーに自分のために使える時間は「朝の始業前」と「仕事が終わってからの夜の時間」しかない。朝型になるために前者が重要なのは言うまでもないが、実は朝からフルパワーで活動できる人は、その前日の「夜」の過ごし方から違っている。「朝活」で有名な識者2人に、朝と夜それぞれのお勧めの過ごし方について伝授していただいた。
朝活の達人2人の「朝」の過ごし方
池田氏の朝の過ごし方
早朝勉強で大学受験に成功、会社員時代にも朝型生活に切り替えたことでキャリアを躍進させた池田氏。出産後、わずか2カ月で仕事に復帰できたのも朝時間のおかげ、と語る。
現在の朝時間は、大きく二つのパートに分かれる。4時起床~7時半に保育園へ向かうまでは、授乳と身支度と「考え事」の時間。その後、出社までの時間でタスクを整理。今後のキャリア展望についても、朝ならではの前向きな気持ちで思いを巡らせる。
(1)朝シャワーに目覚めの香りをプラス
池田氏は、起床後すぐにシャワーを浴びる習慣を出産前からずっと続けている。
「朝にシャワーを浴びると、すっきりと目が覚めるので、お勧めです」
さらに、目覚めをさわやかにするひと工夫がある。
「最初に、柑橘系のアロマオイルを2~3滴床に垂らし、それからシャワーを開栓すれば、ミストサウナのように香りが広がって、気分爽快です」
アロマポットを用意する必要もなく、手軽にできるのもポイントだ。
(2)出社前にカフェでTODOを整理
池田氏は9時頃まで駅前のカフェで過ごす。「4時~7時半まで頭の中で考えていたことを、コーヒーを飲みながら手帳に書き出します」
その日やるべきことを中心に、TODOを整理する――出勤前にこうした時間を持つことは、その日のパフォーマンスに大きく関わってくるそうだ。
「何をどう行なうか考え、出勤後は実行するだけの状態にします。いわば、エンジンをかける時間ですね」
(3)電車の中では「耳を使う作業」を
朝の混雑した通勤電車では、本を開いたり、スマートフォンを操作したりといった動作もままならないことがある。
そこで、池田氏は「耳からの情報インプット」を勧める。「FeBe」「Audible」などのオーディオブックで読書ならぬ「聴書」をしたり、英語ニュースを聴いて英語力アップや情報収集を図ったり。手が使えるときは、ふと浮かんだアイデアやタスクを、スマホから自分宛でメール送信することも。
小川氏の朝の過ごし方
以前は夜型だったが、起業後に朝型生活を開始。朝4時に起床してからの3時間は、もっぱら「思考」に注ぎ込む。
「経営者の役割は意思決定ですから、考えることはもっとも重要な仕事と言えます。一人で過ごせる朝以外で、この時間を確保するのは不可能です」
7時半にいったん自宅に戻って朝食をとり、家族との時間を過ごす。会社の始業時間が来たら再び出社。その後は、朝に考えたことを着々と実行に移す。
(1)「簡単ストレッチ」で身体と脳をONにする
小川氏は、起き抜けの洗顔後、軽くストレッチをすることを勧める。身体をほぐしながら「今日やること」をイメージすると、脳も身体も同時に目覚める。
「前の晩、簡単にTODOを書いておくのですが、身体を動かしていると『そういえば、これもしておいたほうがいい』と新たに思い出すことが多いですね」
ちなみに、この段階では食事は摂らない。「4時では食事する気になりませんし、空腹のほうが集中力も上がります。飲み物だけ飲んで、すぐ出社します」
(2)一人きりの時間にアイデア出しと計画を
小川氏は自宅からオフィスまで徒歩通勤。4時半に出社した後は集中力を高めて、頭に浮かんだことを書き出す。こうしたプランニングとアイデア出しは、朝イチでやることを勧めている。部下から相談を受けることもなく、電話がかかってくることもなく、誰にも邪魔されないゴールデンタイムだからだ。
「7時に一度自宅に戻り、朝食を摂って9時に再び出社しますが、その後の指示や実行は『作業』に近いものです。誰にも邪魔されない早朝の時間は、思考に使うための貴重な時間なのです」
(3)「朝すること」の内容は随時アップデートする
「朝に何をするか」は随時見直そう、と話すのは小川氏。
「習慣として根づいてしまうと、成長曲線は緩やかになり、やがて止まります。同じことを何年も続けるのは、朝時間の空費になる可能性があります」
朝にすべきこととは、「したいと思っているが、現時点でできていないこと」だと小川氏は考える。
「すでに習慣化したことは朝以外の時間に回し、新たなチャレンジを取り入れることが必要。随時内容を組み替えることで、前進・向上できます」
朝活の達人2人の「夜」の過ごし方
池田氏の夜の過ごし方
仕事は17時に終わらせ、18時半までに帰宅。その後保育園へお迎えにいき、19時に子供の夕食、20時前には夫婦の夕食も済ませる。
ちなみに夕食を作るのは基本的に夫が担当している。作り置きなども活用して、家事の時間は極力短縮するよう心がけている。
20時に順次入浴、20時半頃には親子ともども就寝してしまうという。このように「早寝」の池田氏、夜は全般にリラックスして過ごす。「込み入ったことは考えず、1日の疲れをリセットし、明日に備えます」
(1)朝に計画、昼に実行。夕方は自由に過ごす
「朝時間の活用は生活全体の充実につながる」と池田氏は考える。そのため、朝にしっかりプランを立てておけば、昼はそれを実行するのみ。こうして効率よく仕事を進められれば、早く仕事を終えることができ、その結果、夜の時間が自由になる。
「勉強や習い事に使うのも良いし、家族と過ごすのも良いでしょう。会食や、友達と会う時間にしても良いですね。年齢や環境、生活の変化ごとに、過ごし方を自由に変えていって良いと思います」
(2)帰りの通勤電車はくつろぎモードでOK
「帰宅するときの電車の中では、行きとは逆に、ボーっとして過ごします」と池田氏。
ONとOFFのメリハリをつけることが、日中の仕事の精度を高めるコツだからだ。眠っても良いし、好きな本を読むなど、仕事とは離れたことをするのが良い。
資格試験等の勉強をしている人は、その時間に充てるのも良い。
「ただしこの場合も、あまり思考力を働かせず、『英単語をひたすら暗記』など、単純なインプット作業に使うのがお勧めです」
(3)明日の朝やることをイメージしながら眠る
池田氏が就寝前に勧める行動は二つ。一つは、明日の服装を決めること。もう一つは、ごく簡単に明日のTODOを箇条書きにすること。
「『明朝、~しよう』と思ってから眠ると、頭にその意識が残り、翌朝パッと起きられます」
なお、これらの作業は「入眠儀式」としても機能する。ベッドの上でTODOを書く→眠くなる、という自然な流れができるのだ。
「入眠儀式は良い睡眠に不可欠です。『ホットミルクを飲む』など内容は自由。眠くなるスイッチをつくれば、寝つきが格段によくなります」
小川氏の夜の過ごし方
ひとりで過ごす朝とは対照的に、夜は人と会う時間として活用。同日に2件以上のアポイントが入ることもあり、昼夜合わせて年間約700件もの会食をしているという。
夕方にオフィスを出る前のひと工夫は、体調によって「やりかけ」を用意しておくこと。疲れが溜まっていると感じたら、あえて書きかけの書類や未返信メールを残し、翌朝起きる動機づけを強める。
その後会食に向かい、帰宅後は即、就寝して体力をチャージ。ちなみに昼にもこまめに仮眠をとり、疲労の蓄積防止も万全にしておく。
(1)「人との交流」で学びと人脈を広げる
小川氏の会食の回数は「年間700件」と膨大。ひと晩に2回、3回組むことも少なくないそうだ。
どんな人物に会うか、の基準は「学びを得られる人」。年長者に限らず、最新情報を得られるような若い人との出会いも有益だという。
「自分が得るだけでなく、こちらが提供できる情報や知恵も携えておきます。到底及ばないような大先輩なら、『今後の可能性への期待』を提供します」
興味の方向性に共通項がある人どうしの「つなぎ役」になり、多数で会食することも。大人数に同時に会えて効率性も高く、人の輪も広げられる。
(2)明日に備え、一刻も早く就寝する
朝が早くても、睡眠はしっかり取ることが重要だ。睡眠不足は効率の最大の敵になる。
会食がある場合も、基本的にはなるべく2時間以内で終わらせて、翌日に響かないよう工夫すると良い。小川氏の場合、帰宅後はシャワーなど最低限のことだけ行なってすぐに就寝するそうだ。早く帰れた日なら、20時頃に就寝することもあるという。
「ただし、明日のTODOだけは簡単に書きます。とはいえあまり深く考えず、問いのような形のメモを書きつける程度です。そうするだけで、夢の中で答えが浮かぶことも多いんですよ」
池田千恵(いけだ・ちえ)〔株〕朝6時代表取締役
福島県生まれ。二度の大学受験失敗を機に早起きに目覚め、半年の早朝勉強で慶應義塾大学総合政策学部に入学。ワタミ㈱、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年に独立。始業前の時間を有効活用する大人の学び場「Before9プロジェクト」を主宰。著書に、『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(PHP文庫)など。
小川晋平(おがわ・しんぺい)Smart Asset HD創設者
1985年生まれ。慶應義塾大学在学中にデイトレーダーとして活躍、24歳で起業。現在はブロックチェーン事業を中心に国内外含め12社の経営に携わりつつ、「成果が出る習慣」を学ぶ『チーム100』も主宰。著書に、『一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか』(俣野成敏氏との共著、クロスメディア・パブリッシング)など。(取材・構成:林 加愛)(『
The 21 online
』2016年12月号より)
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