春香クリスティーン,政治ノート
(写真=The 21 online/春香クリスティーン(タレント))

空気感までリアルに記録したいから「手書き」にこだわっています

政治に詳しいタレントとして知られ、情報番組などに出演する際には、率直に自分の意見を述べる姿が印象的な春香クリスティーンさん。その鋭いコメントの源泉にもなっているのが、国会見学や演説の傍聴などをする中で使い分けている2種類のノートだ。営業や仕事時の情報整理にも応用できそうなそのノート術についてうかがった。

存在感まで記録できる紙のノートの強み

春香クリスティーンさんが日頃、活用しているノートは二種類。そのうち、使い込まれた厚手のB5版ノートが「政治家ノート」だ。

「政治家の方にお会いしたときの記録をまとめたいという思いで、2012年に始めたノートです。これほど集まるとは思わずに、なんとなく始めたので、今になって『分厚くて丈夫なノートしてよかった』と思っています(笑)。

本当は形式をきちんと揃えたらきれいにはなると思うのですが、サインの大きさや書き方は人それぞれ個性がありますし、写真の枚数も違うので、完全には形式を決められないですね。一応は2ショット写真といただいた名刺、サインを1ページに、というのが基本です」

写真の横には、日付はもちろん、撮影場所なども書いてある。記憶喚起の助けにするためだ。

「記録しておけば、『この前、お会いましませんでしたっけ?』『ああ、あのときの、えーと』と言いながら名前が出てこない……といったことをなくせますよね。本当はお会いしたすべての人を記録できれば理想的だと思います。それはさすがに無理ですが、政治家の方については記録しておこうと。公人であり、快く写真を撮らせていただけるからというのもあります。次に会ったときに『○○でお会いしました』と話の種にもなります」

ある意味データベースでもある政治家ノート。デジタルツールではなく、あえて紙のノートにしたのはなぜだろうか。

「携帯に入っている写真は、埋もれてしまうんです。名刺も、書かれている情報だけならスキャンして整理もできます。でも、名刺にはモノとしての存在感もある。石原伸晃さんの名刺は形が面白いし(写真参照)、平沢勝栄さんの名刺は木でできているんです。こういうデータにならないことをそのまま残しておきたいんです。あとは、やはりサインを書いてもらうということは大きいですね」

ちなみに、このノートの並びは完全な時系列ではない。A議員の隣にB議員のサインはお願いしづらい……といった配慮から、ページを飛ばしたりすることがあるためだ。

「こちらが勝手に気を遣っただけなんですけどね(笑)。でも、時系列で並んでいなくても、ノートだと探すときにはさほど困りません。『この人は最初のほうのページだったはず』『たしか真ん中あたりの右ページ』といった感覚的な記憶が残っているから。これも、デジタルデータではできないことですよね」

「まとめ直し」「清書」をあえてしない理由

国会傍聴、選挙戦中には街頭での演説取材など、情報収集を日常的に行う上ではメモも欠かせない。以前は携帯でメモをとっていたこともあるが、現在は「傍聴メモ」もアナログ派だ。

「携帯を操作していると、別のことをしているんじゃないかと思われる気がしてしまって。この前の都知事選のときは、街頭演説を聞いて取ったメモを、しばらくはお守りのように持ち歩きました。仕事でコメントを求められたときは『小池さんの演説の特徴……たしか、こういうキーワードを使っていた』というように参照して。そういう場でも、携帯やパソコンを手元に置いてコメントする人もいますが、いかにも『今調べてますよ』感が強い。メモだったら、ちゃんと準備してきました、というのが伝わりますよね」

また、自分の手で書くからこそ、書かれた内容以上に「思い出が詰まる」のもメリットだという。

「いきなり文字が全部青になっているページがあると、『あのとき黒のインクが切れたんだ』と思い出したり。演説のメモは特に、見ればその場の空気まで思い出します。

メモをきれいに清書したり、まとめ直したりできれば理想だなと思うこともあります。でも、清書してしまうと、メモを取っていたその場の感覚を思い出せなくなるんですよ。だから、見なおす時にはマーカーを引いたり、付箋を貼ったりするくらいです」

まとめ直したりはしないからこそ、後で見てわかりやすいように書くことも心がけている。

「形式は決まっていないですが、大臣の答弁には印をつけるとか、3色ボールペンで発言者によって色を分けたり。答弁以外で気になった情報を『傍聴者多い。整理券が配られる』のように囲みで入れることもあります」

切って並べ替えることも。美しさより実用性

ノートは「使ってなんぼ」という春香さん。使い方は融通無碍だ。

「メモはその時手元にあるノートに取るので、たとえばTPPの委員会審議のメモがいろいろなノートにバラけていたら、それだけを破って集めて、並べ替えて持っておきます。ノートは結構、切りますよ。美しくまとめたノートの価値ももちろんわかっていますが、私の場合は、『役に立てばいいじゃない』と思う部分はあります。最終的にきれいであろうとなかろうと使えなければ意味がない。

ただ、そうして使い終わると、どこかに仕舞い込んでなくしてしまうことも……。使い終わったノートの整理が、今後の課題です」

春香クリスティーンさんのノートその1「政治家ノート」
春香クリスティーンさんのノートその1「政治家ノート」

B5ノートに、会った政治家のサイン、名刺、写真をまとめたもの。初回に撮れなかった写真をその次に会ったときに補完する、といったこともよくある。誰もが知る大物議員から、すでに落選してしまった議員まで、眺めているだけで「時代を感じられる面白さ」が伝わるようなノートになったのは、ページ数の多い、使い切るのに時間がかかるノートを選んだからこそだ。まずは、今使っているこの1冊を埋めて完成させるのが目標だという。

春香クリスティーンさんのノートその2「傍聴メモ」
春香クリスティーンさんのノートその2「傍聴メモ」

国会審議や選挙演説をメモするためのノートは複数冊、並行して使うこともある。手に持って書かなくてはいけない場面も多いことから、小さめのA5サイズが基本。特に、1ページの大きさにでき、ノート自体を筆記台にできるリング式がお気に入り。ページを切り離しやすいのも後の活用に便利だ。「人に見せるものではない」と言いながらも、後で読んでわかりやすいメモになっているのが印象的だ。ちなみに筆記具は3色ボールペンで、ジェットストリームとフリクションを愛用しているという。

春香クリスティーン(はるかくりすてぃーん)タレント
1992年、スイス連邦チューリッヒ市生まれ。父は日本人、母はスイス人のハーフ。日本語、英語、ドイツ語を操る。2008年に単身来日し、タレント活動を開始。日本政治に強い関心をもち、週に数回、永田町で国会論戦を見学することも。趣味は国会議員の追っかけ、国会議員カルタ制作。テレビ番組のコメンテーターなどを務めるほか、新聞、雑誌への寄稿も多数。(取材・構成:川端隆人 写真撮影:長谷川博一)(『 The 21 online 』2017年1月号より)

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