株式投資家のバイブルといっても過言ではない『会社四季報(春号)』が3月17日に発売された。数千にものぼる上場企業の情報が記載されている書籍で、東洋経済新報社が毎年3月、6月、9月、12月の四半期ごとに発売している。
「株式投資を始めてみたいが、たくさん銘柄があって、どれを購入すればいいのかわからない」と考え、株式投資を始めることをためらう人達も多いのではないだろうか。世の中には業績が悪化する企業がある一方で、最高益を叩き出す企業もある。株価の上昇要因は、企業の成長性や業績の伸び、そして企業の安全性等が関係している。
業績が良好な銘柄をいかにして探し出すか、そんな方におすすめしたいのが四季報だ。四季報の読み方について解説していこう。
安易に銘柄を選んではいないか
投資する銘柄を選ぶ時、「よくわからないから、知っている企業や好きな企業、その時に話題の銘柄をとりあえず買ってみる」という人が案外多い。SBI証券が発表しているNISA口座での国内株式ランキングを見ると、ここ数カ月、個人投資家の多くが「NISA(ニーサ)=少額投資非課税制度」を利用して、東芝 <6502>を購入している様子が見てとれる。みんなが知っている大企業の東芝が安くなっているから、とりあえず買っておこう」といった考えだからだろうか。
株式投資で儲ける基本は、「株価が安い時に買って、高くなったら売る」だ。その視点で言えば、株価が安くなった東芝株を購入することは間違いではない。しかし、よく考えてほしい。NISA口座で購入した株や投資信託等から発生した利益に対して税金がかからない一方で、特定口座や一般口座の株等と損益通算を行えないというデメリットがある。
米国の原子力関連会社「ウェスティングハウス社」を中心とした東芝の巨額損失問題が発覚して以降、いまだ状況は変わっていない。株価が今後、買った価格よりも上昇する可能性もある。その一方で、株価が安値を近辺でうろうろするだけならまだしも、更なる下落や上場廃止になる場合もある。損失を被るのは自分自身であることを忘れてはならない。
会社四季報の各種指標はこう見る
会社四季報には、社名や住所、事業内容といった基本情報に加え、財務内容から業績、主要株主、加えて発行元である東洋経済新報社記者の取材に基づいたコメント等が掲載されている。また、インターネット版の「会社四季報オンライン」もあり、書籍では提供できない投資情報を定期的に更新している。他にも簡単な株価チャートやフェイスマークも掲載されているので、株価動向も確認できる。必ず読みたい項目は以下で解説していこう。
①コメント記事欄
東洋経済新報社の記者の取材に基づいたコメントを掲載。今後の株価動向を考える上で将来性があるのかを把握するためにも、「上振れ」「大幅増益」「増配」「最高益更新」「減額」「鈍化」といったコメントに注目したい。購入を検討する際はもちろん、保有株の売買を検討する際にも必見だ。
②株式・財務・キャッシュフロー、株主欄
株式の取引単位や、株主優待や貸借銘柄の有無、株主資本比率や負債、株主構成等が確認できる。自己資本比率や有利子負債欄ではその企業の安全性をおさえておきたい。株主欄では、どのような株主構成なのかを把握したい。
③業績欄
売上や利益、配当金等の動向を過去から将来にわたって掲載。業績が伸びている、もしくは今後飛躍的に伸びる可能性を秘めているのかを分析する。業績が伸びる可能性があれば株式は買われ、業績が悪化する可能性があれば株式が売られる可能性もある。必ず確認したい。
④株価チャート・フェイスマーク
中長期的な株価の動きを株価チャートで掲載。株価が下落基調の銘柄よりも上昇基調の銘柄を選択したいので、株価動向を確認。さらに、フェイスマークがついている銘柄は会社四季報編集部の注目度が高いと考えられ参考にしたい。
書籍とオンラインをフル活用しよう
どのように会社四季報を活用したらいいのか、筆者の活用法を紹介したい。
会社四季報は書店で発売されているが、忙しくて書店に行けない時もあるかもしれない。そうした事態を避けるために、定期購読を申し込んで届けてもらおう。銘柄がたくさんあるためパラパラと読むだけでも楽しいが、お目当ての銘柄を忘れてしまうことも多々ある。そうした事態を避けるために、付箋等を活用して目印をつけたい。書き込む項目は以下の通りだ。
- 選んだ銘柄の名前(銘柄コード)
- 業務内容
- 業績
- 株価(現時点、目標株価)
- 選んだ理由
加えて、インターネット版の会社四季報オンラインを活用する。書籍版は銘柄のカタログという点では優れているが、発売が年4回のため最新情報を捕捉できない。株式市場全体や個別銘柄に関する日々の投資情報は、インターネットを活用して参考にしたい。
会社四季報の内容を受けて、発売日以降に株価が急騰もしくは急落することも多々ある。さらには、発売後に株価が上昇するのではないかと考えて、インターネット版で情報を取得して先回り買いを行う個人投資家もいる。そのため、会社四季報の発売日前から、先取りして株価が動意付く場合もある。
株式を売却し、利益を得て初めて、その株式投資が成功だったと言える。日々の値動きに一喜一憂して、本業に差し障るような投資をあえてする必要はない。会社四季報を活用して、好業績かつ株価の上昇が期待できる有望銘柄を探してみてはどうだろうか。
プロフィール
横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、
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、講演活動、株塾を行う。