有名ラーメン店の「一風堂」などを展開する力の源ホールディングス <3561> が上場した。
上場前から注目度が高く、初値は上場前の公募価格600円に対して、大幅に上回る2230円がついた。初値形成初日を含めて、その後わずか3日で株価を伸ばし2017年3月24日の終値は3200円と公募価格に対して実に5倍以上にまで株価を伸ばしている。
注目度が高いとはいえ、ここまで株価が大幅上昇している理由はいったいどこにあるのだろうか。力の源ホールディングスの事業内容や株式需給面での注目点を振り返るとともに、その理由を探っていきたい。
一風堂だけではない!力の源ホールディングスの事業内容
ちからの源ホールディングスというと、国内外でラーメン店一風堂を展開する企業というイメージが強いが、他にも様々な事業を展開している。
例えば国内に於いてはこがしラーメンで有名なラーメンダイニング「五行」や沖縄料理を展開する「行集談四郎商店」などが有名だ。麺類を中心に「家族や友人同士で飲める店」を幅広く展開していることがわかる。そのほかにも、2016年には米国で展開されてきたカジュアル中華料理店「Panda Express」をラゾーナ川崎でオープンするなど話題を呼んだ。
飲食のみならず、飲食業態プランニングと称して未来の老舗作りを行うコンサルティング事業や店舗運営において重要な人財育成事業などを手がけている。
どうしても飲食業というとIPO市場においては地味な印象が拭えないが、数年前に上場したバルニバービ同様、同社は話題性や有名性などで外食産業の中でもIPO投資家好みの案件であった。
力の源ホールディングス 気になる業績推移は?
企業の話題はあるとして、肝心の業績はどうだろうか。売上高はここ3期で堅調な推移を見せている。
【売上高】
2015年3月期 178億4500万円
2016年3月期 208億6500万円
2017年3月期 167億1300万円(3Qまで)
【1株あたり利益】
2015年3月期 -25.38
2016年3月期 12.16
2017年3月期 13.23(3Qまで)
(※企業業績数値は力の源ホームページより)
売上高は堅調に推移している模様だ。また2015年には赤字だった1株利益も16年からは盛り返しており、17年度には第三四半期までで昨年度を抜いている。
今後主力の一風堂事業に加えて、話題性のあるPanda Expressなどのファストフード事業が波に乗れば業績上ぶれも期待できそうだ。
需給が良いIPO銘柄は思わぬ大幅高を演じることも
IPOにおいては企業ごとに需要と供給が異なる点で初値形成時の価格や初値形成後の株価の動きが大きく変わる。
今回の力の源ホールディングスの場合、公募株数と売出株数を合わせた株数が100万株で公開価格が600円という値段から吸収金額が6億円後半という小型の案件であったことが初値を暴騰させた。
また上場後に株式を大量に市場に放出する可能性が高いベンチャーキャピタルの保有株にロックアップ(保有期間での売却制限)が設けられていることも上場後に株価が上がる要因となっている。
力の源ホールディングスに限らず、そのIPO銘柄の大きさや保有株主の動向予想は株価形成に大きな影響を与えると考えられている。
現在のIPOブームも一因
トランプ大統領が政権を勝ち取った2016年11月以降、米国市場を皮切りに日本市場の株価も堅調な上昇を見せた。しかし、2017年に入ってからは株価は高値圏で推移し、神経質なこう着状態に陥っている。
そんな中、材料株として短期資金が集まりやすいのもIPO株の特徴である。IPO株の場合、どうしても個別企業へと目が向きがちだが、その時の相場状態が株価に影響を与える場合が多い。
最近上場した別企業の話となるが、前評判が低かった銘柄が予想を反して初値暴騰を演じる形成が散見されていることも直近のIPOブームと深く関係しているはずだ。
逆にもし2016年1〜2月の時のような暴落相場だったなら、ここまで力の源ホールディングスの株価が上昇することはなかったかもしれない。
今後も注目
力の源ホールディングスのような外食系IPOの場合には株主優待の新設や、株式分割するなど流動性の改善に伴った株価上昇が生じることがある。またマザーズ上場ということもあり、今後は東証一部へと向けた企業のなんらかの施策が行われるかもしれない。
今後も事業動向のみならず株価やIRなど注視しておきたい銘柄だ。
谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学を卒業後、証券会社において証券ディーリング業務を経験。ヤフーファイナンスの「投資の達人」においてコラムニストとしても活動。2015年には年間で「ベストパフォーマー賞」「勝率賞」において同時受賞。個人ブログ「
インカムライフ.com
」を運営。著書に『
元証券ディーラーたにやんの超・優待投資 草食編 Kindle版
』(インカムライフ出版)がある。