東京株式市場が波乱含みの展開になってきました。米FOMC(連邦公開市場委員会)後に円高・ドル安が進んだことや、米トランプ大統領の政策遂行が不安視され始めて米国株が下落したこと、国内では森友学園問題が混迷を深めたこと等が逆風となりました。日経平均株価は3/23(木)に19,000円を割り込む場面もみられました。

こうした中、株式市場は4月より「新年度」を迎えます。機関投資家によっては、新しい運用方針のもと、投資対象の銘柄を入れ替えてくるケースも想定されます。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、上場銘柄の主要バリュエーションを見直し、中長期投資の対象にもなり得るような銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。特に重視したのがROE(自己資本利益率)です。「資本を有効に生かして稼ぎ出す力」が向上し、株式市場の評価が高まると予想される銘柄は何でしょうか。


「資本を有効に活かして稼ぎ出す力」が向上し、市場の評価が高まりそうな銘柄は?

機関投資家が銘柄選別の指標として重要視し、株式市場でも時折注目を集める指標にROE(自己資本利益率)があります。計算式を示すと以下の通りになります。

(ROE)=(純利益)/(自己資本)

ここでは「自己資本」も「純資産」や「株主資本」と同義に取り扱うことにします。株主から払い込まれた資本をどのくらい有効に活かし、利益を生み出しているのかを示しています。自己資本の金額は増資等によっても変動するので、通常「自己資本」は2会計年度の平均を用いることが多いようです。

一般的に、ROEは8%がひとつの目安であると考えられています。ROEが8%以上の銘柄はそれ以下の銘柄に比べて投資パフォーマンスが良くなる傾向にあるようです。今回のスクリーニングではアナリストの予想ROEを参考に、来期にかけてROEが向上し、かつ8%を上回ると予想されている銘柄を中心に考えてみました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)時価総額1千億円超の上場銘柄であること
(2)アナリスト2名以上が業績予想を行っていること
(3)来期にかけROEが上昇し、かつ8%以上になると見込まれていること
(4)今期予想PERが20倍未満であること
(5)今期営業増益が見込まれ、かつ最終損益が黒字見通しであること
(6)来期営業利益が10%以上増加する見通しであること
(7)2016/11/9以降の株価上昇率が同期間の日経平均上昇率(17.2%)未満であること

上記の(1)~(7)の条件をすべて満たした銘柄を来期予想ROEの高い順に10銘柄並べたものが表1となります。

ROEを向上させるには「利益を増やせば良い」というものではないと考えられます。事業資金の調達について、必ずしも増資によってではなく適切な規模で借り入れを行うなど資本政策の適正化等も重要です。資本が多過ぎると認識された場合は自社株買いの後に消却すること等も重要です。

なお、ROEが高いことですでに株式市場から高い評価を得ている銘柄も多いと考えられます。そこで、PERや株価上昇率を使って、すでに高い評価を得ている可能性のある銘柄が入らないようにしています。なお、(7)で基準日とした2016/11/9は、米大統領選でトランプ氏が当選確実となり、その日は大きく下落したものの、その後は上昇相場になったためです。

「資本を有効に活かして稼ぎ出す力」が向上し、市場の評価が高まりそうな10銘柄

スクリーニング銘柄の投資ポイント

表1に掲載した銘柄のうち、上位5銘柄の投資ポイントをご紹介します。

図1:シークス(7613)・日足
図1:シークス(7613)・日足

シークス <7613> は海外生産にとって必要な「部材のグローバル調達」から「物流」、「受託製造(EMS)」まで、モノづくりのさまざまなアウトソーシング・ニーズに応えるユニークなグローバル企業で、サカタインクス <4633> の持分法適用会社です。品目別構成比では車載用機器(売上構成比45.8%)、家電機器(22.2%)他となっています。
2016/12期は円高が10億円の減益要因になったにもかかわらず、前期比2.5%増の営業増益を確保しました。2017/12期は15%の営業増益を見込みますが、1ドル105円前提であり保守的な印象を受けます。売掛金回転期間の短縮や在庫削減等の資本効率改善に取り組んでいます。

図2:スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)・日足
図2:スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)・日足

スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> はゲームソフトの老舗的な企業です。ヒット作の有無で収益が大きく変動するイメージの強かった企業ですが、足元では2013/3期を底に増収・増益が続いています。2017/3期も「ファイナルファンタジー」の最新作が国内外で伸び、増益を目指します。スマホ向けゲーム市場が成熟化し、技術力や知的財産の蓄積が差別化要因となる中で、当社の競争力が改めて評価され得る局面となっています。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)市場が拡大することも追い風になりそうです。

図3:富士通(6702)・日足 ※図1~図3は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成 図3:富士通(6702)・日足
※図1~図3は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成

富士通 <6702> は我が国を代表する情報サービス企業の一角を形成しています。2017/3期は第3四半期までの累計営業利益が682億円と前年同期の16億円から大幅に改善しています。国内システム開発が好調で利益を押し上げています。市場では今期予想営業利益1,200億円超に対し、来期は1,700億円超を見込んでいるようです。AI市場の広がりが当社のようなスパコンメーカーにも追い風になり、大型受注の獲得にもつながっているようです。なお、富士電機 <6504> と持ち合い解消を進めていますが、資本効率の改善には前向きな話題とみられます。

バンダイナムコホールディングス <7832> は任天堂同様、豊富な知的財産を有しているのが強みになっています。それを玩具、アニメ、ゲーム、音楽、映像など多くの分野に展開できる可能性を秘めています。2017/3期は家庭用ゲームとスマホゲームの伸長が見込まれ、過去最高益の予想です。来期は不振だった玩具事業の回復が期待されます。

三和ホールディングス <5929> はシャッター業界の最大手です。地域別売上高構成比(第3四半期累計)は日本52%、米国32%、欧州16%と世界に展開しています。今期は円高で収益が目減りする反面、原材料価格が低下し、増益を確保できそうです。来期は国内向けの回復も期待できそうですが、円高の影響が一巡しそうなことも追い風になりそうです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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