山田さんは、35歳会社員。昨年子どもが生まれたので、そろそろマイホームを購入しようと思い、休日に妻と近所に建設中のマンションのモデルルームを訪れた。不動産屋の営業マンに物件の説明を受けた後に、「購入を希望するなら」といわれ、いくつかの項目に答えたら、「このくらいのご年収がおありなら購入できますよ」といわれ、妻はすっかりその気になっている。このマンション、買ってもいいものだろうか?

モデルルームで見たマンション、ローンが組めたら、買っていいのか?

(写真=PIXTA)

答えは、「ダメ!」。たいていの家庭は、こうやって住宅を買っているはずなのに、どこがダメなのか? 自分がいくら借りられるかを知らずに先に物件を決めるのはNG。5000万円のマンションを見たら、それが欲しくなり、買うために無理やりローンを組んでしまう。銀行のローン審査に通れば、もちろん借りることは可能だ。しかし、それはあまりにも危険な行為である。

不動産屋の営業マンが「これくらいの住宅ローンでこの物件が買えますよ」と提示するのは、返済期間35年(いちばん長い)、変動金利(いちばん金利が低い)で組んだローンと決まっている。これが、毎月の住宅ローンの返済額を最も安くする方法だからだ。しかし、冷静になって考えてみよう。これから35年間、70歳になるまでローンの返済が続けられるのだろうか? 2017年4月時点では0.625%程度の変動金利だが、6カ月ごとに見直されるため、いつ、どの程度上がるかわからない。返済期間が長く、金利が低い条件で借りると、借入額が身の丈以上に大きくなるというリスクが生じる。低金利の今は、とにかく借りすぎに注意することが重要だ。

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同じ「毎月12万円」の返済でも、返済期間と借入金利で借入可能額が600万円違う

返済期間35年、変動金利0.625%という条件がどのくらい多く借りられるものなのか、ほかの場合と比較してみよう。

たとえば、毎月の返済額を12万円(ボーナス月の増額ナシ)にしたい場合、返済期間と金利タイプの選び方で借入可能額が変わってくる。みずほ銀行のホームページにある「 住宅ローン借入可能額シミュレーション 」で計算すると、返済期間が35年なら借入金額が4525万円だが、返済期間が30年なら3938万円になる。返済期間が5年短いと借入金額に600万円近い差が出る。しかし、65歳までに返済を終えたいのなら、30年で組むべきではないか? もし、定年を迎える60歳までに返済を終えようとすると、返済期間25年としなければならず、さらに借入可能額は3332万円と少なくなる。

同じ35年でも、固定20年の1.2%を選ぶと借入可能額が4113万円に減る。また、金利上昇の場合を考えて、金利を3%にすると、3118万円に減るし、7%と想定すると、借りられる金額は1878万円しかない。本当に4525万円借りて大丈夫なのだろうか? 今後金利が上昇したら、返済額が12万円以上になることが十分に想定される。

借りられる額は、職種・働き方・勤務先属性で変わる!

そもそも、35歳で年収700万円の人がいくら借りられるのか? 「年収の5倍まで」「返済負担率が年収の25%以内」などの目安はある。年収700万円の5倍なら3500万円まで、年収の25%以内なら、年間返済額が175万円。月払いのみにすると、約14.6万円が目安だ。しかし、これはあくまでも目安で、個々の属性によってかなり差がある。

住宅ローンの借り換えサービスの提供など、住宅ローンのアドバイス事業を行っているMFSが、2017年1月から提供し始めた「 MOGE SCORE (モゲスコア)」は、新規借入客を対象とした無料ウェブサービス。個人がそれぞれの属性(条件)を入れると、借入可能額や借入金利を試算してくれるスグレものだ。

モゲスコアに、3つの違う条件を入れて比較してみた。「年齢35歳、年収700万円、勤続年数2年以上、既婚で扶養家族が2人、その他の負債はゼロで、住宅購入地は東京」という部分は同じで、「職種・働き方・勤務先属性」だけを変えた。パターン1の「教師・公務員・官公庁」では、年収の8.4倍の5878万円が借りられると出た。パターン2は「製造業・会社員(一般)・非上場(社員30~500人)」としたら、5.86倍の4098万円。パターン3は借りにくいとされる自営業を想定して、「飲食業・自営・個人経営」とすると、2.95倍の2064万円しか借りられない結果に。

もちろん、個別の事情を銀行に話して交渉する余地はあるだろうが、なかなかシビアな結果が出た。このように、年齢と年収が同じでも借りられるローンの額は違ってくるし、適用される金利も変わってくる。自分のケースを試算してみて、借りすぎないように注意しよう。

まずは、モゲスコアで自分の借入可能額を試算してみて、それに貯蓄から出せる頭金、親から受けられる援助の額を足し、そこから物件価格の5~10%程度の諸費用を引いた額が、あなたが買える物件の価格だ。首都圏の物件価格は上昇傾向にある。新築だけでなく中古物件も視野に入れて、無理のない物件探し、住宅ローン選びをしていこう。

生島典子(いくしま・のりこ)フリーライター
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。主な執筆テーマは、マネー、子育て、住まい、働き方など。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。子どもを持つ保護者として、学童クラブの父母会活動、PTA活動に参加。「居場所づくり」がこれからのテーマ。

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