“住宅ローン”は、銀行などの金融機関が主力とする個人向けの商品の一つです。日銀の大規模な金融緩和政策によって“超低金利”状態である今、住宅ローンの借り入れ・借り換えにはチャンスであるといわれています。

特に、日銀が2016年2月に始めたマイナス金利政策によって、銀行への住宅ローン借り換えの相談件数が例年の2倍以上になっているともいわれています。

借り入れ・借り換えのいい検討タイミングといえる現在において、金融業界では金融×テクノロジーの造語である「フィンテック」が盛んに取り立たされています。ここでは、ユーザーにとって現在タイミングがいいとされる住宅ローンとフィンテックとの融合について考えていきましょう。

住宅ローンは単なる金融商品といえるのか

fintech
(写真=Panchenko Vladimir/Shutterstock.com)

まず、“金融商品”と聞くと、銀行や証券会社などで取り扱っている商品を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。基本的に金融商品と呼ばれる多くのものは、自分の持っている金融資産を増やすことを目的とした預貯金(※)や、資産運用として購入される株式・債券・投資信託、一定の条件下において金銭的な保障が得られる保険などになります。(※2017年4月現在はほぼゼロ金利)

しかし、それらとは全く違った性質の金融商品があります。それは、「住宅ローン」などの負債(借金)に分類されるものです。要するに、資産を預けるのではなく借りるのです。つまり、住宅ローンは“単なる金融商品ではない”ということです。

住宅ローンは、自分が現状持っている金額以上のもの(住宅)を購入するために、お金を借りるというレバレッジ効果を利用することを主な目的としています。そのために、貸す側である金融機関は、リスクを軽減するために主に二つのことを行います。

一つは、住宅(=不動産)を担保に入れることです。もし住宅ローンの毎月の返済が滞る場合、住宅自体を差し押さえて、その後売却します。

もう一つは、借り入れ人の信用度、つまり「この人はきちんと計画通りに返済することができるのか?」という審査です。その審査において、信用情報の履歴が重要となります。これは「クレジットヒストリー」とも呼ばれており、例えば米国などでは自身のクレジットヒストリーに基づいた「クレジットスコア」という個人の信用度が数値化されたものが明確にあります。それによって個人の支払い能力が格付けされているのです。

しかし、そもそも日本にはクレジットスコアという概念自体がなく、各個人に対する審査基準・内容についてはブラックボックスとなってしまっています。そのため、クレジットカードやカードローン、そして住宅ローンなど一つひとつに申し込み、審査を受けてみないと結果がどうなるかわからないという、非常にユーザーにとって不便な状況にあるのが実情です。

そもそもフィンテックとは

フィンテック(FinTech)という言葉は、金融(Finance=ファイナンス)と技術(Technology=テクノロジー)とを掛け合わせた造語です。日本では2012年以降から金融業界を中心に広く使われ始め、2017年現在では徐々に一般的な言葉として浸透しつつあります。

ここではフィンテックを「金融とITの融合によって生まれた新しいサービス」と定義します。具体的には、スタートアップ企業から大手金融機関、大手通信事業会社といった非金融企業が、さまざまな技術を駆使した新しい金融サービスへ参入し始めています。(例:みずほFGとソフトバンクGでのAIによる個人融資のジョイントベンチャー設立など)

フィンテックの分野は大きく2つに分けられます。管理当局による規制分野として「融資」「決済」「送金」「投資」、非規制分野として「情報管理」「業務支援」などです。最近では「仮想通貨・暗号通貨」も新技術の下に広がりつつあり、後追いで法整備が進められているような状態です。

住宅ローンとフィンテックとの融合

では、飛躍的に利便性が向上しつつあるフィンテックサービスの中に、単なる金融商品ではないといえる住宅ローンに関するものが、今後日本で広がるのか?という問いへの答えは、

「その可能性はとても高い」

といえます。

例を挙げると、新興勢力である「ネット銀行」は、ユーザー視点でペーパーレスや来店不要を前面に打ち出しながら顧客獲得を着実に進めています。また、非金融機関のスタートアップ企業による独自のクレジットスコア算出などがサービスとして提供され始めており、徐々にその拡大の素地ができつつあるといえます。

今後日本で住宅ローンに関するフィンテックサービスが広がる可能性の高い最も大きな理由としていえることは、融資を受けるために審査が必要である住宅ローンは、基本的に事業性融資とは違って面談が必須ではないことが挙げられます。

例えば、申し込み・審査・契約・融資までのすべての流れにおいて、手続きすべてをペーパーレスにし、審査に必要な信用情報の非ブラックボックス化やAI(人工知能)による精査・効率化に進化できることで、手続きの煩雑さが大幅に解消され、かつ申し込みから融資までの時間が大幅に短縮されます。住宅ローンの借り入れだけでなく、借り換えもしやすくなるでしょう。

結論として、“面談”というユーザーと金融機関が会うアナログな行動が必要ないことから、住宅ローンとフィンテックとの相性は、悪いはずがなく、お互いの融合は十分可能といえます。今後は、日本の住宅ローンのフィンテック化によるユーザーの利便性向上と、住宅ローン市場自体のさらなる拡大に期待することができるといえるのではないでしょうか。(提供: 住宅ローンのすゝめ

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