結果の概要:個人所得、消費ともに前月から伸びが加速、市場予想には一致
5月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は4月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.4%(前月:+0.2%)となり、前月から伸びが加速、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.4%(前月改定値:+0.3%)と、前月比横這いから上方修正された前月改定値からも伸びが加速、市場予想の+0.4%に一致した(図表1)。
価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.2%(前月改定値:+0.5%)と、こちらは+0.3%から上方修正された前月改定値からは伸びが鈍化、市場予想の+0.2%に一致した(図表5)。貯蓄率(1)は5.3%(前月:5.3%)と3ヵ月連続横這いとなった。
価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:▲0.2%)と、前月からプラスに転じ、市場予想の+0.2%に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月:▲0.1%)と、こちらも前月からプラスに転じたほか、市場予想の+0.1%も上回った(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.7%(前月改定値:+1.9%)、コア指数が+1.5%(前月:+1.6%)と、いずれも前月から伸びが鈍化した(図表7)。
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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率
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結果の評価:1-3月期の消費鈍化が一時的である可能性が高まった
名目個人消費支出は(前月比)は、昨年12月に+0.6%となった後、2月まで低調な伸びとなっていた(図表1)。この結果、1-3月期の実質GDP成長率における個人消費支出も、前期比年率+0.6%(前期:+3.5%)に留まり、消費減速が懸念されていた。
今回、3月の名目個人消費支出が上方修正されたほか、4月が昨年12月以来の伸びに加速したことから、個人消費の減速が天候など一時的な要因による可能性が高まったと言える。
雇用の力強い伸びが持続する中、消費者センチメントが依然として高水準にあり、消費を取り巻く環境は引き続き良好である。このため、4-6月期には再び個人消費の伸びが3%超に加速することが期待できる。
一方、物価(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに2ヵ月連続で伸びが鈍化した。FRBは6月にFOMCを控えており物価の判断が注目されるが、足元で原油価格に持ち直しの動きがみられるほか、労働市場が完全雇用に近づいている中で、今後賃金上昇からの物価上昇圧力の高まりも予想されることから、6月の追加利上げ判断への影響は限定だろう。
所得動向:賃金・給与の伸びが大幅に加速
個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.7%(前月:横這い)と、前月から伸びが大幅に加速し、2月以来の水準となった。一方、利息・配当収入は▲0.1%(前月:+0.3%)と、こちらは昨年6月以来のマイナスに転じた(図表2)。
個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.4%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した一方、価格変動の影響を除いた実質ベースでは前月比+0.2%(前月:+0.5%)と、前月から伸びが鈍化した(図表3)。実質ベースの鈍化は、物価が前月のマイナスからプラスに転じた影響が大きい。
消費動向:財消費は耐久財、非耐久財ともに改善
名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.7%(前月:▲0.3%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた一方、サービス消費は+0.3%(前月:+0.6%)と、こちらは前月から伸びが鈍化した(図表4)。
財消費では、耐久財が+0.9%(前月:▲0.4%)、非耐久財も+0.6%(前月:▲0.2%)と、いずれも前月からプラスに転じた。耐久財では、自動車・自動車部品が+1.2%(前月:▲1.5%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じたほか、非耐久財ではガソリン・エネルギー関連が+4.1%(前月:▲6.8%)と、前月の大幅なマイナスからプラスに転じた。
サービス消費は、医療が+0.3%(前月:+0.2%)と小幅ながら前月から伸びが加速した一方、住宅・公共料金が+0.1%(前月:+1.4%)、外食・宿泊が+0.1%(前月:+0.7%)と、前月から伸びが大幅に鈍化したほか、娯楽サービスが▲0.4%(前月:+1.6%)と前月からマイナスに転じた。
価格指数:エネルギー価格(前月比)が3ヵ月ぶりにプラスに転じた
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.0%(前月:▲3.3%)と、3ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.4%)と、こちらは4ヵ月連続のプラスとなった。
前年同月比では、エネルギー価格指数が+10.2%(前月:+13.2%)と、前月から伸びが鈍化したものの、4ヵ月連続で2桁の上昇となった(図表7)。食料品価格指数は、▲0.6%(前月:▲0.7%)と、こちらは12ヵ月連続でマイナスとなるなど、物価下落圧力が続いている。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
主任研究員
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