最新の総務省の発表によると、高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口割合)は約27%であり、日本は4人に1人が高齢者である超高齢化社会です。統計データでは2060年まで高齢化は進み続けることが予想されているため、「介護」は今後のライフプランを語る上では欠かせないテーマの一つです。
介護による負担は精神的なものだけではなく、金銭的な負担も重くのしかかってくるものです。今回はそんな「介護」によるライフプランの変化について考察していきます。
のしかかる介護の負担
「介護」には様々な負担が考えられますが、金銭的な負担を明確にするために、まずは介護保険の制度をおさらいしましょう。
介護保険制度とは「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを創設」することを目的に、2000年に施行された法律です。現在介護保険を利用できるのは要介護、または要支援認定を受けた65歳以上の第1号被保険者か、40歳以上の第2号被保険者が要介護認定を受けた場合です。
介護保険の被保険者となれば、公的な介護保険サービスを受けることができるようになります。そしてそのサービス利用料のうち1割、または収入によっては2割が本人の負担となります。ただし介護保険サービス以外のサービス利用料は全額自己負担となります。
超高齢化社会のため年々介護費用は増えており、財源を圧迫しています。実際に政府は介護保険の自己負担分を最大3割とする改正案を既に閣議決定しており、2018年8月からの施行が目指されています。今後もさらに介護保険に関する制約や自己負担は増える可能性が高いでしょう。
介護が必要になった時の選択肢(自宅介護、施設介護など)
介護が必要になった場合の介護方法は、大きく分けて2つの選択肢があります。1つは自宅で介護士や家族が介護を行う「在宅介護」です。もう一つは老人ホームなどの施設に入居し介護サービスを受ける「施設介護」です。
「在宅介護」は比較的自由度が高く、施設を利用しない分介護費用も比較的抑えやすくなります。ただし夜間には必ず介護が必要になり、旅行など長期で家を空けることができなくなります。また介護の疲れから、介護者自身が精神的に参ってしまうケースも少なくありません。
「施設介護」は常に介護士などが付いているため、適切な介護サービスを受けることができます。しかし一方で在宅介護に比べると金銭的な負担は多くなる傾向があります。また集団生活のため人付き合いがうまくいかない、雰囲気が合わないなど、環境に慣れることができず、気苦労をしてしまう場合もあります。
上記のように双方メリット、デメリットがあります。どちらで介護を行うかは、ご本人の素直な気持ち、介護をする方のライフスタイル、経済力などを総合的に鑑み、結論を出すべきでしょう。
介護にはこれだけの時間とお金が必要
介護が必要になった場合、在宅サービスや車椅子、場合によっては自宅をバリアフリーに改築するなど、様々なことにお金がかかります。そして時には仕事を辞めて介護をせねばならない場合もあるなど、介護費用に対して漠然とした不安をお持ちの方も多いでしょう。では具体的にはどれだけのお金がかかるのでしょうか。
生命保険文化センターの2015年度に行われた調査によると、実際に介護を経験した人の一時費用(自宅改築や車椅子や介護用ベッドなどの介護用品費等)は平均80万円でした。そして月額の介護費は介護保険自己負担分を含め7.9万円でした。介護期間については、同センターの調査によると4年11ヶ月(59.1ヶ月)と試算されています。こちらを全て合計すると、547万円(7.9万円×59.1ヶ月+80万円)もの金額が介護には必要であることがわかります。
厚生労働省が発表した生命表によると、日本の平均寿命は伸びているため、547万円よりもさらに多くの介護費用を準備しておく必要がありそうです。
また雇用保険には上限があり、認定された要支援や要介護の程度によって利用できる上限金額も変わるため注意が必要です。
両親の介護に備える重要性
今回は介護費用についてご紹介しました。全く備えていないうちに急な「介護」が発生してしまった場合、ご自身のライフプランは大きく変わらざるを得ません。しかし超高齢化社会の今、「介護」の問題は避けては通ることができない問題です。「介護」を円滑に進め、自身のライフプランも達成するためにも、なるべく多くのお金を早めに準備しておく必要があるでしょう。
また今回ご紹介した試算は、あくまで一人当たりの金額です。両親がともに介護を必要とする状態になった場合、単純計算すれば2倍の負担があるということです。介護費用は非常に大きな金銭的負担になる可能性があるので、両親の資産状況も踏まえ、介護費用を計画的に準備しておく必要があります。
現在は退職後にお金をどう管理し使っていくか目標を立てる、「シニアライフプランニング」という言葉もあります。介護費用を適切に準備していくためにも、これからはFPなどの専門家に両親も含めた包括的なライフプランニングの立案を相談すると良いでしょう。