生命保険文化センターが行った調査によると、老後の生活に不安を感じている人は85.7%もいるとの結果が出ています。そしてその不安の要因として、「公的年金だけでは不十分」というお金への不安が最も高く、80%以上を占めています。今回はそんな老後のお金に関する問題を紐解き、老後の生活を豊かにするための具体的な対策をご紹介します。
老後はどのような状況か
生命保険文化センターの調査によると、60歳以上の無職世帯(2以上の世帯)1ヶ月あたりの消費支出が約24.8万円であるのに対し、可処分所得(年金などの収入から税金や社会保険を引いた金額)は約18.0万円であるため、1ヶ月あたり約6.8万円不足する計算になります。
加えて、60歳以上の無職単身者世帯では1ヶ月あたりの消費支出は14.4万円、可処分所得は約10.3万円であるため、1ヶ月あたり約4.1万円不足してしまいます。つまり60歳以上の無職世帯においては、毎月約4〜7万円を貯蓄から取り崩す必要があるのです。
厚生労働省が発表した「第22回生命表」によると、日本人の平均寿命は男性80.75歳、女性は86.99歳と過去最高記録を更新しています。仮に60歳で退職し、男性の平均寿命である80.75歳まで夫婦二人で上記の生活費をかけて生活した場合は、約1,693万円(6.8万円×12ヶ月×20.75年)、単身の場合でも約1,021万円(6.8万円×12ヶ月×20.75年)は生活資金として必要であることがわかります。
上記の例はあくまで生活するためのお金です。趣味や孫の世話など、より豊かな老後を過ごすためには、あらかじめ計画を立て、資産形成を行っておくべきでしょう。
老後で困ること(パートナー、お金、住居)
老後の具体的なお金の問題は、生活費以外にも様々です。例えば、病気になってしまった場合を考えてみます。厚生労働省が発表した「平成26年度 国民医療費の概況」によると、65歳未満の医療費を平均すると18万円程度です。しかし65歳を超えると医療費は一気に跳ね上がり、65歳以上では72万円、70歳以上では81万円、75歳以上は90万円ほど年間に医療費がかかるとの結果が出ています。通常、医療費は全額負担ではないと言え、収入がない高齢者に大きな負担になるのは確実です。
また老後特有のライフイベントとして、パートナーの介護が必要となる場合があります。生命保険文化センターの2015年度に行われた「生命保険に関する全国実態調査」によると、実際に介護を経験した人の一時費用(自宅改築や介護用ベッドなどの介護用品購入費等)は平均80万円でした。
そして月額の介護費は約7.9万円との結果で、介護期間継続的に必要な出費となります。同センターの調査では、平均介護期間は4年11ヶ月(59.1ヶ月)と試算されており、全て合計すると、547万円(7.9万円×59.1ヶ月+80万円)もの金額が平均でかかっていることになります。
紹介した例のように、老後は医療や介護など、若い頃は気にしなかったようなことでお金がかかります。その時になって焦らないように、事前に必要な金額を想定し、対策をしておくべきでしょう。
今から出来る対策とその方法
老後の悩みの圧倒的多数は「お金の悩み」です。一つの解決策として、「老後も働く」という方法があります。日本FP協会の調査によると、実際に年金受給者のうち24.5%の方がお仕事をしているとのことです。しかし生きがいや楽しみのためではなく、生活のために老後も働き続けるというのは大変ではないでしょうか。
有効な対策方法のひとつは「金融商品で増やす」という方法です。金融商品を有効に活用すれば、現在の資産を増やし、安定した老後の生活に繋がるでしょう。全ての金融商品には価格変動のリスクがありますが、株式以外にも債券など価格変動が少ない商品も多くあります。また、投資対象や時間を分散した長期投資であれば、比較的リスクを抑えた運用が可能です。
しかし大切な老後の資産を、いきなり金融商品で運用するのはハードルが高いと感じる方も多くいます。したがって、まずはFPやIFAなどの専門性の高い資産形成のスペシャリストに相談することをお勧めします。ライフプランに合わせ、専門家のアドバイスを聞きながら、許容できるリスクと期待リターンを明確にしたうえで、運用戦略を考えるべきでしょう。
やり直しがきかないからこそ準備が必要
老後の生活費に加え、介護費用、子供や孫の援助、趣味に使うお金など、準備しておきたい老後資金は多くあるはずです。しかしお金が必要なライフイベントに直面した時に資金がなければ、若い世代に比べ労働でお金を工面することは非常に大変ですし、頼れる相手も限られています。ライフイベントを迎えた時に金銭的に焦らずに済むように、事前に準備をしておくことは非常に大切です。
昨今では、老後に向けたライフプランニングを行う、「シニアライフプランニング」という言葉があるほど、退職後のライフプランニングの重要性は高まっており、注目を集めています。豊かな老後を送るためにも、なるべく早めに老後のライフプランを立案し、必要に応じて専門家に相談できる関係性を築いておくことは重要でしょう。