結果の概要:成長率は前期から大幅に上昇、ただし市場予想は下回る

7月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は4-6月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。4-6月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率(1)で+2.6%となり、1-3月期(同+1.2%)から大幅に上昇、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+2.7%は下回った(図表1・2)。

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4-6月期の成長率を需要項目別にみると、前期に成長率を大幅に押下げた個人消費が前期比年率+2.8%(前期:+1.9%)と、前期から大幅に伸びが加速し、成長押上げに転じた(図表2)。また、民間設備投資が+5.2%(前期:+7.2%)と好調を維持したほか、外需の成長率寄与度も+0.18%ポイント(前期:+0.22%ポイント)と2期連続のプラス寄与となった。さらに、政府支出も前期比年率+0.7%(前期:▲0.6%)と前期からプラスに転じた。

一方、在庫投資の成長率寄与度が▲0.02%ポイント(前期:▲1.46%ポイント)とマイナス幅は縮小したものの、2期連続でマイナスとなったほか、過去2四半期好調であった住宅投資が前期比年率▲6.8%(前期:+11.1%)と3四半期ぶりにマイナスに転じた。

このように、4-6月期の成長率は住宅投資の減少などはみられたものの、個人消費が牽引する形で成長率が上昇しており、個人消費主導の景気回復が持続していることを確認できる結果と言えよう。

今回は、年次改訂に伴い14年以降の成長率について改定値が発表された。改定の結果、成長率(前年比)は14年が+2.4%→+2.6%(+0.2%ポイント)、15年が+2.6%→+2.9%(+0.3%ポイント)と上方修正された一方、16年が+1.6%→+1.5%(▲0.1%ポイント)に下方修正された。また、16年の四半期毎の成長率(前期比年率)は、1-3月期(+0.8%→+0.6%)、4-6月期(+1.4%→+2.2%)、7-9月期(+2.8%→+3.5%)、10-12月期(+2.1%→+1.8%)に改定された。四半期の成長率では4-6月期と7-9月期の改定幅が大きくなった。

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1)以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。
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結果の詳細:

◆(個人消費・個人所得)自動車以外の財消費が回復

4-6月期の個人消費のうち、財消費は前期比年率+4.7%(前期:+0.7%)と、前期から大幅に伸びが加速した(図表3)。耐久消費財が+6.3%(前期:▲0.1%)と前期からプラスに転じたほか、非耐久消費財も+3.8%(前期:+1.1%)と前期から伸びが加速した。耐久消費財は、自動車・自動車部品が▲1.7%(前期:▲9.6%)と2期連続のマイナスとなったものの、家具・家電が+8.0%(前期:+4.6%)、娯楽・スポーツカーが+13.4%(前期:+10.6%)となるなど、全般的に伸びが加速した。また、非耐久財では、ガソリン・エネルギー+5.7%(前期:▲5.9%)や、衣料・靴+9.3%(前期:▲3.7%)が前期からプラスに転じた。

一方、サービス消費は+1.9%(前期:+2.5%)と、こちらは前期から伸びが鈍化した。暖冬による暖房需要の減退から前期の消費が不振であった住宅・公共料金が、+2.8%(前期:▲0.4%)とプラスに転じたほか、医療サービスも+3.0%(前期:+2.1%)と前期から伸びが加速した。一方、娯楽サービス▲0.7%(前期:+4.4%)や外食・宿泊▲1.5%(前期:+2.6%)がマイナスに転じサービス消費の足を引っ張った。

所得は、実質可処分所得が前期比年率+3.2%(前期:+2.8%)と前期から伸びが加速した(図表4)。貯蓄率は3.8%(前期:3.9%)と前期から低下した。

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◆(民間投資)設備投資は、2期連続で3分野がプラス成長

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4-6月期の民間設備投資の内訳をみると、設備投資、建設投資、知的財産投資の3分野ともに2期連続でプラス成長となった(図表5)。もっとも、成長率は設備機器投資が前期比年率+8.2%(前期:+4.4%)と前期から伸びが加速した一方、建設投資+4.9%(前期:+14.8%)、および知的財産投資+1.4%(前期:+5.7%)は前期から伸びが鈍化した。

一方、住宅投資では、戸建てが前期比年率+3.8%(前期:+10.6%)と前期から伸びは鈍化したもののプラスを維持した一方、集合住宅は▲3.0%(前期:+11.8%)と前期からマイナスに転じた。

◆(政府支出)連邦政府が3期ぶりのプラス成長

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政府支出は、州・地方政府が前期比年率▲0.2%(前期:+0.5%)と3期ぶりにマイナスに転じた一方、連邦政府支出が+2.3%(前期:▲2.4%)と3期ぶりにプラスに転じて、成長を牽引した(図表6)。

連邦政府支出では、非国防支出▲1.9%(前期:▲1.2%)が2期連続のマイナスとなったものの、国防関連支出が+5.2%(前期:▲3.3%)と3期ぶりにプラスに転じた。

◆(貿易)輸出入ともに前期から伸びは鈍化

4-6月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率+4.1%(前期:+7.3%)となったほか、輸入も+2.1%(前期:+4.3%)といずれも前期から伸びが鈍化した(図表7、8)。

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輸出を仔細にみると、サービス輸出が前期比年率+6.5%(前期:+1.0%)と前期から伸びが加速した一方、財輸出が+2.8%(前期:+10.8%)と大幅に伸びが鈍化した(前掲図表7)。財輸出では、食料・飲料が+24.8%(前期+3.3%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、自動車を除く資本財も+0.3%(前期:▲3.0%)と前期からプラスに転じた。しかしながら、自動車・自動車部品が▲8.1%(前期:+40.8%)、自動車関連を除く消費財も▲10.9%(前期:+19.3%)と前期からマイナスに転じた。

輸入では、サービス輸入が+2.4%(前期:+2.5%)と前期とほぼ同水準の伸びとなった一方、財輸入が+2.0%(前期:+4.7%)と伸びが鈍化した(前掲図表8)。財輸入では工業用原料が+1.5%(前期:横這い)と前期から伸びが加速したものの、自動車・自動車部品が▲8.4%(前期:+12.8%)、石油製品も▲16.0%(前期:+14.8%)と前期からマイナスに転じた。

◆(物価・名目値)PCE価格指数は総合指数、コア指数ともに物価上昇圧力が後退

4-6月期のGDP価格指数は、前期比年率+1.0%(前期:+2.0%)と前期から伸びが鈍化、市場予想(同+1.3%)も下回った。もっとも、名目GDP成長率は前期比年率+3.6%(前期:同+3.3%)と、こちらは実質GDP成長率の回復により、前期から上昇した(図表9)。

FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数(2)は、前期比年率+0.3%、前年同期比+1.6%(前期:+2.2%、+2.0%)といずれも前期から伸びが鈍化した(図表10)。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も前期比年率+0.9%、前年同期比+1.5%(前期:+1.8%、+1.8%)と、総合指数と同様の傾向となった。
PCE価格指数(前年同期比)は前期にFRBが目標とする2%の水準に達していたものの、エネルギー価格の下落もあり再び2%割れの水準に低下した。また、16年10-12月期まで緩やかな上昇がみられたコア指数(前年同期比)についても、17年に入ってから2期連続で低下しており、基調としての物価上昇圧力はみられない。

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2)現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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