結果の概要:個人所得、消費ともに前月から伸びが鈍化、所得は予想も下回る

8月1日、米商務省の経済分析局(BEA)は6月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比横這い(前月改定値:+0.3%)となり、+0.4%から下方修正された前月を下回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%も下回った。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.1%(前月改定値:+0.2%)と、こちらは+0.1%から上方修正された前月から伸びが鈍化したものの、市場予想の+0.1%には一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比横這い(前月改定値:+0.2%)と、こちらは+0.1%から上方修正された前月から伸びが鈍化、市場予想の+0.1%も下回った(図表5)。貯蓄率(1)は3.8%(前月:3.9%)と前月から低下した。

価格指数は、総合指数が前月比横這い(前月:横這い)と、▲0.1%から上方修正された前月、市場予想に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.1%)と、こちらも前月および市場予想に一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月改定値:+1.5%)と、+1.4%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想の+1.3%は上回った。コア指数は+1.5%(前月改定値:+1.5%)と、こちらは+1.4%から上方修正された前月に一致したほか、市場予想の+1.4%を上回った(図表7)。

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1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
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結果の評価:4、5月から消費のモメンタムは低下

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名目個人消費支出(前月比)は、6月は貯蓄率が前月から低下するなど所得対比では伸びたものの、4月の+0.3%、5月の+0.2%から2ヵ月連続の伸び鈍化となった(図表1)。

この結果、4-6月期の名目個人消費支出は前期比年率+3.1%(前期:+4.2%)と前期から伸びが鈍化した。先日発表された4-6月期の実質個人消費支出は同+2.8%(前期:+1.9%)と前期から伸びが加速していたが、物価の下落による影響が大きかったことが分かる。

物価(前年同月比)は、総合指数が4ヵ月連続で低下した一方、コア指数は一旦下落に歯止めがかかった。総合指数は、引き続きエネルギー価格による物価押上げが減退しており、今後も原油価格をはじめエネルギー価格の動向に左右されるとみられる。一方、景気回復が持続する中でコア指数が底入れするようであれば、FRBの年内1回とみられる追加利上げ見通しには影響しないだろう。

所得動向:賃金・給与が回復も、前月の反動で利息・配当収入が下落

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.4%(前月:+0.2%)と、前月から伸びが加速する一方、利息・配当収入が▲1.8%(前月:+1.3%)と、前月から大幅に下落して所得の伸びを押下げた(図表2)。利息・配当収入の落ち込みは、一部企業の株式特別配当があった影響で、前月が大幅上昇となった反動によるところが大きい。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が横這い(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化したほか、価格変動の影響を除いた実質ベースでは前月比▲0.1%(前月:+0.5%)と、16年12月以来のマイナスとなった(図表3)。

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消費動向:非耐久財の伸びが大幅に鈍化

名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.3%(前月:+0.3%)と前月と同水準の伸びを維持した一方、財消費が▲0.4%(前月:▲0.3%)と2ヵ月連続でマイナスとなり、消費の伸びを押下げた(図表4)。

財消費では、耐久財が+2.7%(前月:+0.8%)と前月から伸びが大幅に加速した一方、非耐久財が+0.1%(前月:+4.7%)と前月から大幅に伸びが鈍化し、財消費の足を引っ張った。なお、財消費やサービス消費の詳細な内訳については本稿執筆時点(8月2日)では公表されていない。

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価格指数:エネルギー価格(前月比)が2ヵ月連続で物価を押下げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.7%(前月:▲3.1%)と、マイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続で下落した(図表6)。一方、食料品価格指数も▲0.1%(前月:横這い)と、物価を押下げた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+2.1%(前月:+5.4%)と、8ヵ月連続のプラスを維持したものの、5ヵ月連続で伸び鈍化となった(図表7)。食料品価格指数は、▲0.1%(前月:▲0.1%)と、こちらは14ヵ月連続でマイナスとなっており、物価下落圧力が続いている。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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