内閣府が8月14日に公表した2017年4-6月期の実質GDPは、前期比年率で4.0%の増加だった。設備投資や個人消費などの内需が堅調で、家計部門では自動車や家電などの耐久財の消費が牽引したからだ。一方、8月28日に政府がまとめた8月の月例経済報告では、『景気は、緩やかな回復基調が続いている』とし、記者会見に臨んだ茂木経済再生担当大臣は、戦後2番目となる「いざなぎ景気」に並ぶ可能性が高いとの認識を示した。

また、8月26日の内閣府『国民生活に関する世論調査』をみると、現在の生活に対する満足度は、『満足(「満足している」+「まあ満足している」)』が昨年の70.1%を超えて73.9%にのぼった。所得・収入面の満足度は、『満足』が51.3%と『不満(「やや不満だ」+「不満だ」)』の46.9%を上回る。『満足』が『不満』を逆転したのは、平成8年以来21年ぶりのことだ。以上のような報道に接すると、日本の社会経済はきわめて順風満帆のようにみえるが、何か生活実感にそぐわない気もする。

一方、日銀が目指す安定的物価目標である2%のインフレの実現は難しそうだ。消費者の節約志向が強く、一段の値下げに踏み切る一部企業もある。家具大手のイケア・ジャパンは人気商品を中心に1,450品目を平均で25%、流通大手のイオンは日用品114品目を平均で10%ほど値下げするという。しかし、逆に宅配業界は最大手のヤマト運輸をはじめ佐川急便や日本郵便の値上げが予定されている。ネット通販の拡大により深刻な人手不足に陥り、配送員の待遇改善が急がれるからだ。

デフレ脱却には、必需品価格はできる限り安く抑えながら、嗜好品は付加価値に見合うプレミアム価格を設定するなど、「安値志向」と「プレミアム志向」の「消費の二極化」に同時に応えることが必要だ。宅配便も時間指定など付加価値の高いサービスは値上げを、宅配ボックス受け取りなど人件費の削減できるサービスは値下げをするなど、消費者の理解を得られる適正な料金設定が求められるだろう。それが企業収益と働く者の賃金をアップし、消費の拡大と経済成長をもたらすのではないか。

現在、政府は「働き方改革」を進めているが、とりわけ残業を規制し、長時間労働を抑制することに重点が置かれている。しかし、『国民生活に関する世論調査』の「収入と自由時間についての考え方」では、『収入をもっと増やしたい』が『自由時間をもっと増やしたい』を10ポイント以上も上回る。デフレを脱却し、われわれがさらに豊かさを実感するためには、時間当たりの労働生産性を向上し、 「労働時間縮減」と「所得向上」を同時に目指す「働き方改革」を実現しなければならない。

(参考)研究員の眼『 デフレ脱却の「プレミアム消費」~「こだわり」を顕在化する商品とサービス 』(2017年7月25日)

土堤内昭雄(どてうちあきお)
ニッセイ基礎研究所 社会研究部 主任研究員

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