電化製品,平均使用年数,買い控え
(写真=PIXTA)

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皆さんの家にある電化製品は購入してどれくらい経つだろうか。内閣府は、毎年3月に主な耐久消費財の買い替えるまでの平均使用年数を調査している。最新調査(2017年3月)によると、エアコンは13.6年、冷蔵庫は13.3年、洗濯機は10.2年と10年を超える製品も多い[図表1]。さらに、ここ数年は、いずれの製品も使用年数が長期化している。

滅多に買わないと、今どれくらいの値段でどんな製品が売られているのか、なかなか分からないのではないだろうか。総務省が公表している消費者物価指数から、平均使用年数を基に現在との物価を比較すると、カメラを除いてどの品目も50%以上下落している[図表2]。

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特に、ビデオカメラは下落が著しく、平均使用年数である10年前から87%も下落している。例えば当時5万円で買ったビデオカメラは、今なら6,500円の価値しかないということになる。ただ、一般の家電量販店に行っても、この価格帯のビデオカメラが並んでいるわけではない。店頭の価格帯は10年前と変わらず、製品の価値が7.7倍になったということである。

物価とは、純粋な物の値段の動きを把握するために、対象品目の機能や規格、容量を定めて毎月同じ商品を調査している。ただ、技術進歩によってより高機能の新商品が次々と登場する電化製品などは、調査商品を頻繁に入れ替える必要があり、その際に性能や品質が向上した分は、物価が下落したとみなしている。

わが家の洗濯機は買って1年目だ。家族が増えて9年ぶりに買い替えた。その際、情報収集をして初めて気付いたが、今の洗濯機はより少ない水量と時間で洗えるように進化していた。洗濯物は増えたが、買い替えたことによって水道使用量は却って減った(洗剤の使用量も減った)うえに時短になったのには驚いた。図表2によれば、約10年で洗濯機の物価指数は55%下落しており、10年前と同一価格の製品の性能は約2倍向上している。その性能差は使ってみると実感できるものだった。

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ただ、筆者のように上位品目を求めて買い替える人は8%と少数派のようだ[図表3]。79%と大部分の人が故障してから洗濯機を買い替えている。しかし、前触れなく、突然家電が故障することもあるだろう。娯楽のための物ならまだしも、洗濯機や冷蔵庫など毎日の生活に使用する物だとたちまち不便を強いられる。特に、冷蔵庫は壊れるのを待ってからでは色々と手遅れである(*1)。故障時の不便さに直面するのは当然として、購入時もなるべく早く調達できることに目が行きがちで、性能や価格の吟味が十分にできない可能性が高い。これでは満足度の高い買い物ができるか疑問である。

まだ使えるのに買い替えるのはもったいないと感じるのは日本人の美徳かもしれない。ただ、性能の良い製品が次々と登場するなかで、同じ製品を長期間使用することも、ある意味もったいないと言える。時間のある時に家電量販店に足を運び、今使っている電化製品にない新機能、性能の向上した点を知ることも必要ではないだろうか。

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(*1)なお、長期使用製品安全表示制度(2009年4月施行)により、エアコンや洗濯機等の一部製品には「設計上の標準使用期間」等の表示が義務付けられている。
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白波瀨康雄(しらはせやすお)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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