世界各地でキャッシュレス化が進む中、2016年には世界中で330万台のATMが新規導入され、3%の成長を記録した。新規に導入されたうち、過半数がアジア太平洋地域に集中しており、地域別の成長率は6%に達している。
特にATM大国、中国での新規導入率が高く、インドやフィリピンでも需要が高まっているという。しかしATMのピークは過ぎたとの見方もあり、意見は大きく分かれている。
中国でも「セルフサービス端末」の普及で、ATM導入数は頭打ち?
データは英国の金融情報調査会社リテール・バンキング・リサーチ(RBS)が、世界180カ国・地域のATM動向を分析し、2022年までの需要を予想したもの。
アジア太平洋地域(日本、中国、香港、インド、韓国、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなど16カ国・地域) でのATM新規導入率は、2022年までに世界の54%に達すると予想されている。
中国での飛躍的な伸びは、各金融機関が新たな顧客獲得に向け、それまでATMが設置されていなかった一部の都会や過疎地に、新たな機械を導入したことによるものだ(Finextra より)。
しかし中国ではATMよりも多くの機能が付いているにも関わらず、コストを抑えられる「セルフサービス端末」の普及が進んでいることから、ATMの新規導入数には既に低迷の兆候が見えているという。
インドやフィリピン、パキスタン、バングラデシュなど金融インクルージョン(貧困層を含むすべての人々が金融サービスを受けられる状況)が活性化しているアジア諸国でも、ATMの成長率は伸びているが、データが集計された2016年から市場が変化している点も考慮すべきだろう。
インドに関しては「ATMの需要が急激に落ちこんでいる」という、まったく正反対の情報が最近エコノミック・タイムズ紙に報じられた 。ATM導入のピーク時であった2015年を境に、過去半年は導入数がほとんど伸びていないという。
キャッシュレス化が進む欧州ではATMの需要が減少
RBSの調査では、欧州の3大市場である英国、ドイツ、フランスで成長が後退傾向にあることも分かっている。カードやモバイル決済など代替決済法の需要が急速に伸びた背景が指摘されているが、そうした傾向は中国やインドといった新興国の方が強いため、やはり腑に落ちない部分がある。
各国のFinTechの普及率を測定したEYの「FinTech Adoption 指数」 でも、中国での普及率は69%、インドは52%と圧倒的だ。その中でもスマホを利用した決済・送金が最も利用されている。基本的にはATMでの支出・入金が不要のサービスである。
しかし両国のような人口大国に急激な経済成長期が訪れている事実を考慮すると、恐らく人口あたりのATM台数が他国よりも少ない(あるいは少なかった)こと、経済成長に伴い入金・送金の需要が増えたことなどが、代替決済と共にATMの需要を押し上げているものかと推測される。
近年、紙幣還流型(出金・入金を機械内部の紙幣で補い合うシステム)ATMなども増えているが、コスト面や効率性の問題が指摘されている。 (アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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