金融業界の足元の求人動向は、順調のようだ。

インテリジェンスの「DODA転職求人倍率レポート」によると、2016年4月の金融業界の転職求人数増加率は前月比でわずかながら伸びている。商社/流通が▲6.6%、メディカルが▲3.9%など大きく減らし、全体でも1.3%の増加でしかないなかで、2.5%伸びているのだ。

求人倍率はまだ低めで0.67倍。全体の1.07と比べると見劣りする。しかしこれはIT/通信が2.72倍と好調で全体を引き上げている影響もあるだろう。DODAによる業種9分類でも、1倍を超えているのはIT/通信、メディカル、サービスの3業種しかない。

だが金融、特にFinTech分野での人材の話になると、「FinTechが進むと銀行マンが失職する」といった、一見ネガティブな指摘が聞かれる。今後、金融業界のビジネスパーソンは将来のキャリアについてどう考えればいいのだろうか。

FinTechで進む銀行のアンバンドリング化

昨今、FinTechという単語が取り上げられる機会が増えたせいか、新しく生まれたサービスというイメージがあるかもしれないが、実は何も新しいものではない。実際、昔から金融機関は顧客の利便性を高めるため、サービスの質を高めるためにITの力を使ってきたし、ネット証券、ネットバンキングなどのサービスは10年以上前から存在している。

FinTechはすなわち金融業界でのIT活用の推進だ。こうしたIT、テクノロジーの活用による効率化が進めば、これまで人間がやっていたことをやらなくてもよくなっていく。

またテクノロジーの進化のみならず、規制緩和の影響もあって、過去には資金力とシステムを持つ大手金融機関しかできなかった決済、融資という金融サービスも、スタートアップができるようになってきている。海外では米アマゾン、中国のアリババなど電子商取引を扱う流通系企業もこの分野に参入している。銀行業務の機能分化、「アンバンドリング化」が進みつつあるといった指摘もある。

また仮想通貨ビットコインや基盤技術のブロックチェーンなど、昔なかったサービスや商品も誕生している。時代は音を立てず、しかし大きく変わりつつあるのだ。

10年前にスマホがここまで進化すると予測できたか?

DODAの金融業界専任コンサルタントの鈴木智勝氏は、こうした時代の変化について金融業界のビジネスパーソンはもっと危機感を持つべきだと指摘する。

「たとえばスマホ。ここ数年でスマホは一気に革新的になりました。10年前に現在のスマホの進化を誰が予想できたでしょうか? 金融業界でも同じことが起きていると考えたほうがいい」

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金融は規制業種だ。しかし規制は裏をかえせば、規制の範囲内では守られているということでもある。だから「金融業界は安泰だ」と思っている人は少なくないはずだ。

しかし鈴木氏の指摘ももっともだろう。FinTechの進行により、今後金融機関が求められることは変わっていくだろう。そこで働く人たちの意識や行動においても変化が求められる時代になりつつあるのだ。

金融業界、それ以外で生き残るためには、環境の変化を踏まえ、将来を見据えたキャリアを築くという意識をもつことが必要だ。漫然と働いていたのでは、いつ仕事を失ってもおかしくない。

たとえ「自分の職種はAIにはできない」と思っていても、「FinTechによる全体の効率化の影響で人員が余剰になった」という状況になることだってあり得る。目の前だけでなく、将来の社会や産業構造を考えて、キャリアパスを考えなければいけない時代に突入しているのだ。( FinTech online編集部

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