くら寿司を運営するくらコーポレーション <2695> の株価が9月8日、14.2%の急落を見せた。順調に上昇トレンドを継続していた同社株にとっては久々の大幅下落となり、同社株を保有する投資家もおそらくは肩を落としたことだろう。
最新の業績発表(第3四半期)の翌日に起こったことから、業績悪化が引き金となったと考えられるが、業績を確認してみると14.2%もの下落を演じるほど悪い内容ではなさそうだ。同社の現状を確認しつつ、今後の見通しを探っていきたい。
くらコーポレーション 最近の動きは?
くらコーポレーションは「くら寿司」「KULA」などを国内外にて展開する回転寿司チェーン企業で、にぎり寿司や巻き寿司を100円で提供するコストパフォーマンスの高さが目立つ。最近では「しゃりカレー」など寿司以外の商品も多く提供しており、オンラインメニューを確認すると3分の1近くが寿司以外のメニューとなっている。
さらには、食べ終えたお皿の枚数に応じてグッズがあたるゲームに挑戦できる「ビッくらポン」や人気アニメ「銀魂」とのタイアップなどエンターテインメント要素も取り入れ、ファミリー層向けの集客にも成功している。
米国や台湾にも積極展開しており、特に米国では和食「REVOLVING SUSHI BAR」として西海岸沿いに位置する都市を中心に店舗を展開している。世界的な和食人気を追い風に、店舗を拡大している。
最新の業績推移 前回は売られなかったはずなのに……
最新(第3四半期)の数値は以下となっている。
29年10月期第3四半期
売上高:910億7600万円、純利益:33億4300万円
28年10月期第3四半期
売上高:840億1500万円、純利益:31億9700万円
前期(同期間)と比べ、売上高は8.4%、純利益は4.6%の増収増益となっている。また、第2四半期の業績の伸び率は前期比で売上高は8.8%、純利益は8.1%の伸びとなっている。
第2四半期と比べて若干の伸び悩みが見られるものの、本業は好調なようだ。5月に実施したふぐフェアやアニメフェアが好評、新規出店においても米国テキサス州や台湾に2店舗出店するなど事業拡大は進んでいるようだ。店舗改装など他飲食業との差別化を図る積極投資なども行っており、引き続き業績伸長に期待がかかる状況だと言えそうだ。
結局のところ売られた要素は?
業績鈍化傾向は見られたものの、くらコーポレーションの株式は好業績の株主優待銘柄ということもあり、15%近い下落は少々異常だと言わざるを得ない。
考えうる理由としては、好業績推移のペースが鈍化したことで現在の株価水準が高すぎると判断され、換金売りを誘ったのではないかということ。同社の最新業績を鑑みて、成長性の面で失望売りをした大口投資家がいてもおかしくはないだろう。
換金売りをする理由はさまざまだが、高すぎる株式を売却し、これから上がりそうな株を新規で買うために株を売ることがある。最近では、いきなりステーキを展開するペッパーフードサービス <3053> や串カツ田中 <3547> が新高値をつけており、より成長が期待される外食企業へ資金が移動したことも十分に考えられる。
押し目形成中か 今後の巻き返しに期待
こう考えると、現在の同社株は押し目を形成中だと考えることもできる。押し目とは上昇の途中で起きる反動のようなもので、時間をかけて売りを吸収したのちは何事もなかったかのように再び上昇をし始めるタイミングのことをいう。
もちろん今後、くらコーポレーションの業績が下方修正されるような悪材料が出てくることで、株価のトレンドが変わるということもあるかもしれない。
しかし寿司をはじめとする和食はまだまだインバウンド需要としての側面も持ち、今後オリンピックが近づくにつれ注目される日本文化の目玉のひとつとなりそうだ。
谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「
インカムライフ.com
」。著書に「
超優待投資・草食編
」がある