約25.2億円で売りだされる高級住宅。売り手である不動産投資会社が掲げている条件は、「ビットコインでの買い取り」だという。

英国初のビットコイン物件は、ノッティングヒルのポートベロー通り近くにある6階建ての超高級住宅で、価格は1700万ポンド(約25.2億円)。

1BTC4213ポンドという2017年10月14日現在のレート(XE.com)で換算すると、4600BTCということになる。

最終的な目標はビットコインを不動産売買の決済法として浸透させ、「(不動産売買に必要な)弁護士や財産の所有権といったものをなくすこと」だという。

「ビットコインのパイオニアになる」という野望

ジュリア・ロバーツとヒュー・グランド主演作の大ヒット映画「ノッティングヒルの恋人(1999年製作)」の舞台としても有名なノッティングヒル。ロンドンの高級住宅街というイメージが強いだろうが、今年6月に約80人の死者をだした高層公営住宅火災でも一躍注目を浴びた。英国で最も裕福な通りと低所得層が暮らす公営住宅が立ち並ぶ不思議な街だ。

イブニング・スタンダード紙の報道によると、現在の所有者は不動産投資会社ロンドン・ウォールの共同設立者、レヴィ・ロジノヴ氏。2013年に950万ポンド(約1.4億円)この物件を購入した。

ビットコインのパイオニアになる野望を抱いているというロジノヴ氏は、自らビットコインを利用した不動産販売の手本となることで、「ビットコインの未来を変えたい」と語っている。

「ビットコインに精通したアジアのIT実業家」が購入する?

ビットコインで高級物件を売りだすという試みは、ロジノヴ氏の会社、ロンドン・ウォールを通して行われる。「銀行を利用するよりも効率的で簡潔、かつ素早い売買プロセス」を同氏は期待している。

「ロンドンで高級物件をビットコイン販売する」という発想は初めてではない。ロンドン南東部ペッカムの豪邸を170万ポンド(約2.5億円)が売りだされた際、ビットコイン決済がオプションに含まれていたものの、最終的にはポンド建て決済となった。

それにしても1900万ポンドもの超高級住宅をビットコインで購入できる人物など、現時点では限られているのではないだろうか。ロジノヴ氏の予想では「ビットコインに精通したアジアのIT実業家」になる可能性が高い。

また不動産屋への手数料や英国歳入税関庁(HMRC)への印紙税の支払いに、どのような決済手段を使うのかという点も気になる。不動産屋はまだしも、HMRCはビットコインでの納税を受けつけていない。

こうした問題点も含め、ロジノヴ氏の試みにはまだまだ課題が山積みのようだ。しかし期待通りビットコインでの大型不動産取引が成功すれば、不動産決済の新たな道筋となることは間違いない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

FinTech online編集部

【編集部のオススメ FinTech online記事】
FinTech普及率調査「中国は日本の3倍以上」 EY報告書
機械学習するAIハッカーがセキュリティプログラムを打ち破る
ブロックチェーン・カンファレンス開催、ビットコインの犯罪捜査やセキュリティに関して議論
「ビットコインは詐欺」JPモルガン・ダイモンCEOが相場操縦と訴えられる
銀行とFinTechスタートアップが役割入れ替え API使ったビジネス模擬プレゼン