要旨

中国,旧西側諸国,国際秩序,共存共栄の道
(写真=PIXTA)

1――既存の国際秩序を揺るがし始めた中国
中国が既存の国際秩序を揺るがし始めた。2015年12月にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)を創設、2016年10月には国際通貨基金(IMF)の特別引き出権(SDR)の構成通貨にも加わった。そして、2017年10月の党大会では「現代化した社会主義強国」になると宣言、既存の国際秩序を築いてきた旧西側諸国は身構えることとなった。

2――世界経済で存在感を高める中国
中国のGDPは欧米先進国を上回るスピードで成長を続けており、世界経済はこれまでの米欧2大経済圏から中国を加えた3大経済圏へと変化していきそうだ。特に世界金融危機後の中国は米国とともに世界経済を牽引する色彩が強まっている。なお、中国のGDPはその正確性を疑う声もあるが、貿易面や自動車市場などGDP以外の統計を見ても中国の存在感は米国と並ぶまでに巨大化している。

3――旧西側諸国と中国の経済体制の相違点
中国は東西冷戦終結後、「社会主義統制経済」から「社会主義市場経済」へ移行し始めたため、旧西側諸国との「資本主義」か「社会主義」かの対立は残ったとしても「統制経済」か「市場経済」かの対立は解消に向かうはずだった。しかし実際上は、「資本主義」か「社会主義」かの対立よりも、「統制経済」か「市場経済」かの対立の方が鮮明になりつつある。

4――社会主義強国を目指す中国との共存共栄の道を探る
世界金融危機後、自らの経済運営に自信を深めた中国は統制を強めており、政治理念を異にする2つの経済システムが将来に渡って並立したままとなる可能性が高まってきた。政治理念の異なる旧西側諸国と中国は、人権問題や言論統制など様々局面で対立しがちだが、世界経済の持続的発展という共通の目標に向けて、相互にその存在価値を認め共存するとともに、相互に切磋琢磨して共栄する道を歩むことを期待している。

既存の国際秩序を揺るがし始めた中国

世界第2位の経済大国となった中国が既存の国際秩序を揺るがし始めた。2013年10月、中国の習近平国家主席は、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では賄いきれないインフラ整備のための資金需要に応えることを目的として、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を提唱した。当時は主要先進国の中に参加する国はないと見られていたが、2015年3月に英国が参加を表明したのを皮切りに、ドイツ、フランス、イタリアが相次いで参加を表明、2015年12月には57ヵ国の創設メンバーを得て発足した。但し、米国と日本は参加を見送った。また、中国には欧州と陸路でつなぐ「シルクロード経済ベルト(一帯)」と海路でつなぐ「21世紀海上シルクロード(一路)」からなる「一帯一路」構想があり、それを実現する上でもAIIBは大きな役割を担うと見られている。

また、国際通貨基金(IMF)は2015年11月、通貨危機などに備えて加盟国に配る特別引き出権(SDR)の構成通貨に、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円に次ぐ第5番目の通貨として中国の通貨(人民元)の追加を決めた。中国の貿易額は、既にユーロ圏や米国と肩を並べる規模にまで達していたため、貿易面だけを見ればその決定は遅すぎたくらいだが、厳しい資本規制を残し管理変動相場制を維持する人民元が自由利用可能通貨としての役割を果たせるのかと疑問視する声もあった。これに対しIMFのラガルド専務理事は「中国の通貨、為替、金融システムの改革努力の前進を反映したものだ」と説明、結局人民元は2016年10月からSDRの構成通貨に加えられた。

そして、習近平氏は2017年10月の中国共産党第19回全国代表大会(党大会)で、21世紀半ばまでに「現代化した社会主義強国」になると高らかに宣言、東西冷戦時代のようなイデオロギー対立の復活かと、既存の国際秩序を築いてきた日本を含む旧西側諸国は身構えることとなった。新たに超大国が誕生するとそれまで覇権を握っていた超大国との間に軋轢が生じ、ともすれば戦争に発展しかねないとする「ツキジデスの罠」を懸念する声も増えている。そこで本稿では、世界経済における中国の現状を確認した上で、旧西側諸国からは極めて異質に見える中国の経済体制とその背景にある政治理念を分析することを通じて、両者が世界で共存共栄する道はないかを探ることとした。

世界経済で存在感を高める中国

◆米欧2大経済圏から中国を加えた3大経済圏へ

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世界経済を概観すると、16年の世界GDPは75.3兆ドル、第1位は米国で18.6兆ドル、第2位は中国で11.2兆ドル、第3位は日本で4.9兆ドル、第4位はドイツで3.5兆ドル、第5位は英国で2.6兆ドルなどとなっている(図表-1)。

また、欧州連合(EU)28ヵ国をひとつの経済圏とすると、第1位は米国で24.7%、第2位は欧州EUで21.8%、第3位は中国で14.9%のシェアとなっている(図表-2b)。5年前(2006年)と比べると、米国が2.2ポイント、欧州EUが8.1ポイントのシェア低下となった一方、中国のシェアは9.5ポイント上昇した(図表-2a、図表-2b)。そして、国際通貨基金(IMF)が公表した見通しでは、5年後の2021年には、米国が23.1%、欧州EUが20.7%、中国が17.2%と、さらに米国と欧州EUのシェアは低下し中国のシェアが上昇するため、世界経済は米欧2大経済圏から中国を加えた3大経済圏へと変化していきそうだ(図表-2c)。また、英国がEUから離脱し、さらにEUから離脱する国が増えるような事態になれば、世界経済は米中2大経済圏になる可能性もある。

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◆世界金融危機後、米国とともに世界経済を牽引した中国

世界金融危機後、世界経済を牽引したのは米国と中国だった。リーマンショック直後の2009年、世界経済はマイナス成長を経験、世界GDPは63.7兆ドルから60.3兆ドルへ3.4兆ドルも減少した。世界GDPは1980年前後の世界石油危機時にも若干ながら増加しており、前代未聞の事態となった(図表-3)。

その2009年、欧米先進国が軒並みマイナス成長に落ち込んだ中で、中国は大型景気対策を打ち出して前年比9.2%増の経済成長を実現、世界経済の危機回避に貢献した。その後の世界経済はプラス成長を続け、2016年の世界GDPは75.4兆ドルとなっている。また、2009-16年の8年間に増えた世界GDPは11.7兆ドルだったが、そのうち中国は過半に相当する6.6兆ドルを生み出し、米国が生み出した3.9兆ドルを大きく上回った。ちなみに、これは日本の2016年のGDP(4.9兆ドル)を遥かに超える規模である。また、欧州EUのGDP増加額は、英国がEU離脱に向けて動き出すなど政治的混乱が続いたことからユーロに対する信認が低下したため2.8兆ドル減少、日本はほぼゼロ、その他は4.0兆ドルの増加だった(図表-4)。

なお、世界金融危機の前までは、欧州EUと米国が世界経済を牽引しており、1998-08年の10年間に増えた世界GDPは32.0兆ドルだったが、そのうち欧州EUは3割に相当する9.6兆ドルを生み出し、米国も5.6兆ドルを生み出す中で、中国が生み出した3.6兆ドルに留まっていた。

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◆GDP以外の統計を見ても中国は米国とほぼ並ぶ

中国のGDPに関しては、海外からばかりでなく国内でもその正確性を疑う声が大きい。そこで、GDP以外の視点から、中国の経済規模を類推する上で有効と考えられる統計を確認してみよう。

まず、貿易金額を国際比較してみた。輸出入には相手国もあるためGDPよりも正確性が高いとともに、貿易相手国への影響力を見る上でも有効と考えたからである。図表-5に示した2016年の輸出額(ドルベース)を見ると、中国の輸出額は2.2兆ドルで、米国とほぼ並ぶ規模となっており、日本の2.7倍となっている。

また、G20諸国を対象に米中どちらへの輸出が多いかを確認してみた。カナダとキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)で強く結び付く米国向けが圧倒的に多く、欧州諸国ではEU域内貿易が多いため米中のシェアは相対的に低いものの米国向けが多い。他方、オーストラリアやロシアでは中国向けが米国向けの2倍を超えているほか、韓国、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカでも中国向けが米国向けよりも多い(図表-6)。

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次に、自動車市場を国際比較してみた。自動車に関しては、統計が比較的充実しており、耐久消費財としては最大で消費市場の規模を国際比較する上では有効と考えたからである。自動車販売(2016年)を見ると、米国は1787万台でシェア19.0%、欧州は2013万台でシェア21.5%、中国は2803万台でシェア29.9%となっており、中国のシェアは欧米よりも10ポイント前後多く、日本の約5.6倍となっている(図表-7a)。また、使用中自動車(2016年)を見ると、米国は約2.6億台でシェア20.6%、欧州は約3.9億台でシェア30.2%、中国は約1.6億台でシェア12.7%となっており、中国のシェアは米国の約6割、欧州の約4割に留まるものの、日本の約2倍となっている(図表-7b)。所得水準の高い日米欧と中国では1台あたりの単価に差があると見られるものの、自動車市場における中国の存在感は米国とほぼ並ぶ規模ではないかと見られる。但し、中国国内で販売された乗用車のブランド別シェアを見ると、中国ブランドは43.2%に留まり、日米欧韓のブランドの乗用車の販売が過半を占めていることから、中国ブランドは決して強いとはいえない状況にある(図表-7c)。

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最後に、2017年春にピュー・リサーチ・センターが実施したアンケート調査を確認しておこう。これは米国、欧州EU、中国、日本の4つを選択肢に挙げた上で、世界経済を牽引しているのはどこだと思うかを尋ねたものである。図表-8に示した結果を見ると、米国では、「米国だと思う」が51%、「中国だと思う」が35%、その他が14%となっており、世界経済は米国が牽引しているとの意識が強い。他方、欧州(英国、ドイツ、フランス)では、「米国だと思う」が30%前後、「中国だと思う」が45%前後となっており、世界経済は中国が牽引しているとの思う人の方が多い。

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一方、日本では「米国だと思う」が62%、「中国だと思う」が19%となっており、世界経済は米国が牽引していると思う人が圧倒的に多い。この結果を見ると、日本人は米国経済の牽引力を過大評価し、中国経済の牽引力を過小評価している恐れがあり、今後の世界経済を考える上では、価値観を共有する旧西側先進国との間に意識のズレが生じないよう注意しておく必要があるかもしれない。

旧西側諸国と中国の経済体制の相違点

◆理論上の違い

世界経済の歴史を振り返ると、第2次世界大戦後の東西冷戦下、欧米など旧西側諸国が掲げた「資本主義市場経済」とソ連や中国など旧東側諸国が掲げた「社会主義統制経済」とが鋭く対立していた。その後1991年にソ連が崩壊し冷戦が終結するとともに、「資本主義市場経済」と「社会主義統制経済」の対立も収束、旧東側諸国が旧西側諸国の「資本主義市場経済」の要素を取り入れる形で、急進的か漸進的かスピードに違いはあったものの歩み寄ることとなった。そして、中国では1993年に憲法を改正、「社会主義市場経済」を発展させるとし、市場経済を通じた社会主義の実現を目指して、それまでの「社会主義統制経済」から「社会主義市場経済」へと移行することになった。

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中国が目指すことになった「社会主義市場経済」という概念は、日本を含む旧西側諸国の我々にとって極めて理解しづらい。そこで、筆者が考案した「社会・経済マトリックス分析(概念図)」を用いて整理してみた(図表-9)。縦軸は社会面の違いを示す軸で、上にあるほど資本主義的、下にあるほど社会主義的となる。横軸は経済面の違いを示す軸で、右にあるほど自由主義的、左にあるほど国家統制的となる。この概念図では理論上、「資本主義市場経済」を掲げる日本を含む旧西側諸国は資本主義的&自由市場的(右上の枠)に位置する。一方、冷戦時代の中国は「社会主義統制経済」を掲げており社会主義的&国家統制的(左下の枠)に位置した。しかし、冷戦終結後の中国は「社会主義市場経済」へと掲げる旗を変更して社会主義的&自由市場的(右下の枠)へ移行することになった。即ち、中国は社会面では「社会主義」を維持しつつも、経済面では「市場経済」を取り入れて、市場に対する国家統制を緩めてその自由度を増す取り組みを進めることになったのである。従って、旧西側諸国と中国とは対立は理論上、「資本主義」か「社会主義」かの社会面では残ったとしても、「統制経済」か「市場経済」かの経済面ではなくなるはずだった。

◆実際上の違い

それでは、実際上の中国は理論上「社会主義市場経済」があるべき位置にあるのだろうか。そこで、前述の社会・経済マトリックス分析に具体的な統計数値を当てはめ検証してみた。まず、自由市場的か国家統制的かに関しては、市場自由度が高ければ自由市場的、低ければ国家統制的と評価することとした。そして、具体的な統計数値としては世界銀行が評価したビジネスのしやすさ(Ease of doing business index)のランキングを用いた。また、資本主義的か社会主義的かに関する統計数値の選択は難題だったため下記のように考えた。そもそも社会主義は資本主義を否定するところから始まった。社会主義は資本主義によって生み出される社会的矛盾を、生産手段を共有することで解消しようとするところに原点がある。また、資本主義では、主権を有する国民が選挙で選んだ代議員などが決めた法令を遵守する範囲内でなら、どんな手段を用いてでも儲けることが良いことだとする考えが根本にある。そして、他人より多く儲けようと国民が競争することで、国全体の経済発展にも資することになる。その反面、競争に敗れた人々は貧しい生活を余儀なくされるという社会的矛盾を生んでしまう。従って、本稿においては、社会的矛盾(≒所得格差)が小さければ社会主義的、大きければ資本主義的と考えて評価することとした。そして、具体的な統計数値としては世界銀行が推計したジニ指標(GINI index)を用いた。その試算結果を示したのが図表-10である。

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この試算結果を見ると、旧西側諸国に関しては、米国は資本主義的&自由市場的(右上の枠)の位置にあり、理論上の位置づけと一致した。また、日本を初め欧州諸国(英国、ドイツ、フランス)は社会主義的&自由市場的(右下の枠)の位置にあり、所得格差が小さく、理論上の位置づけよりも社会主義的な色彩があるようだ。以上のように旧西側諸国の中には資本主義色の濃い国もあれば社会主色の濃い国もあるが、自由市場的であるという点では一致した。

一方、中国は資本主義的&国家統制的(左上の枠)に位置するという結果となった。まず、国家統制的か自由市場的かという観点で見ると、中国は冷戦終結後、漸進的だが前向きに市場に対する国家統制を緩めてその自由度を増す取り組みを重ねてきたため、インドやブラジルに比べると市場自由度は高い。しかし、日本を含む旧西側諸国に比べると、中国の市場自由度はまだ低く国家統制色を強く残しており、中国が「国家資本主義(国家が資本主義に介入し管理する経済)」の代表格とされる所以でもある。次に、資本主義的か社会主義的かという観点で見ると、中国は「社会主義」の旗を降ろした訳ではなく理論上は社会主義的なはずだったが、実際上は旧西側諸国よりも所得格差の大きい資本主義色の濃い国となっている。理論上は社会主義的&国家統制的(左下の枠)から社会主義的&自由市場的(右下の枠)へ移行するはずだったが、実際上は資本主義的&国家統制的(左上の枠)へ移行してしまった。この点に関して中国共産党は、所得格差の拡大は「社会主義市場経済」への移行する社会主義初級段階に起きる一時的現象だと整理している。そして、「資本主義」か「社会主義」かの対立よりも、「統制経済」か「市場経済」かの対立の方が鮮明になりつつある。

以上のような現状を踏まえると、資本主義か社会主義かのイデオロギー論争が旧西側諸国と中国との間で復活する可能性はほとんど無いだろう。中国はもはや旧西側諸国以上に資本主義的だからだ。しかし、中国共産党の内部では、社会主義のあり方を巡るイデオロギー論争が復活する恐れがある。習近平氏が自身に権力を集中する過程で失脚させた内部勢力が結集する上では、旧西側諸国以上に深刻化した所得格差問題を取り上げて、社会主義との矛盾をめぐる論争を展開しかねないからだ。習近平氏が党大会の冒頭報告で、「現代化した社会主義強国」を目指す前段階では(2035年まで)、貧困対策や所得格差縮小に注力するとしたのは、こうした事情が背景にあるのだろう。党大会が終われば2021年に始まる第14次5ヵ年計画に向けた議論が本格化するだけに、この点にも注目したい。

社会主義強国を目指す中国との共存共栄の道を探る

市場の自由を尊重してきた旧西側諸国は世界金融危機後、再びこうした緊急事態を引き起こさぬよう、特に金融面において統制の強化に動き出した。一方、中国は東西冷戦終結後、「社会主義統制経済」を「社会主義市場経済」に移行すべく統制を緩め自由化を進めていたため、両者の経済システムは近付くかに見られた(図表-11)。

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しかし、ここもと両者の経済システムは並立したままとなる可能性が高まっている。中国が統制を強め自由化の歩みを躊躇するようになったからである。その背景には中国共産党の指導下で実施してきた経済運営に自信を深めたことがある。リーマンショック直後の2009年には、欧米先進国の成長率が軒並みマイナスに落ち込む中で中国は前年比9.2%増の経済成長を実現、世界経済の危機回避に貢献した。その後も、中国共産党の指導下で、国有企業が抱えた過剰設備・過剰債務問題はゆっくりとだが着実に解消に向かっており、国有銀行が抱えた不良債権の処理も波乱なく進んでいる。また、中国共産党の指導下で打ち出した「インターネット+」などの施策が奏功して新興企業が続々と誕生しネット消費が活性化、中国経済は欧米先進国の3倍を超えるスピードの経済成長を続けており、「市場経済」へ急いで移行する意義が薄れた面がある。さらに、「資本主義市場経済」が世界金融危機を引き起こし、統制の強化に動き出したこともあって、「市場の失敗」の怖さを再認識した面もある。そして、2017年10月の中国共産党第19回全国代表大会では、習近平氏が冒頭の報告で「党がすべての活動を指導する」と統制の強化を示唆し、2013年の3中全会で「資源配分で市場に決定的な役割を担わせる」とした自由市場重視の姿勢は影を潜めた。そして、両者はそれぞれ別々に最適な経済システムを模索しており、政治理念を異にする2つの経済システムが将来に渡って並立する世界となりそうだ。

民主的な制度で国家指導者を選び三権分立で国家権力の乱用を防ごうとする旧西側諸国と、マルクス・レーニン主義(*1)を掲げ「中国共産党による国家の指導」の正当性を主張する中国の間には、政治理念の上で大きな隔たりが存在する。そして、政治理念の違いは最適な経済システムも異なるものとしている。しかし、世界経済が持続的に発展する上では両者が並立することは決して悪いことではない。世界経済危機時のように一方の経済システムが失敗しても、もう一方の経済システムが健全であれば世界経済全体が破綻する恐れが減るからだ。政治理念の異なる旧西側諸国と中国は、人権問題や言論統制など様々局面で対立しがちだが、世界経済の持続的発展という共通の目標に向けて、相互にその存在価値を認め共存するとともに、相互に切磋琢磨して共栄する道を歩むことを期待している。

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(*1)マルクス・レーニン主義では、資本主義社会から共産主義社会に移行する過渡期には、プロレタリアートによる独裁が必要としている。中国において、「中国共産党による国家指導」を正当化するための思想的根拠となっている。
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三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

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