どの企業が、人材育成や人事評価に優れていているのでしょうか、そんな問いに「JPX/S&P 設備・人材投資指数」が答えてくれるかもしれません。指数上位企業3社が採用している人事諸制度を参考にしながら、見本となりそうな人材育成・人事評価制度のヒントを探ってみました。

(写真= janews/Shutterstock.com)
(写真= janews/Shutterstock.com)

「JPX/S&P 設備・人材投資指数」とは

企業価値を示す指標のひとつとして「JPX/S&P 設備・人材投資指数」が注目されます。

「JPX/S&P 設備・人材投資指数」とは、文字通り日本取引所グループと東京証券取引所(JPXグループ)、およびS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出する指数です。東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄の中から、流動性、信用力、市場評価の観点から200銘柄を選定し、算出されます。

人材投資に熱心な注目企業3選

● コマツ
世界を舞台に活躍の舞台を広げる建設機械・鉱山機械メーカーのコマツは、全社員が永続的に継承すべき価値観「コマツウェイ」を共有するため、さまざまな制度を整えています。

人材強化の方向は、「グローバル人材の育成」と「ものづくり・現場力強化」。「グローバル人材」に関しては、職能別に選抜研修、階層別研修、職能別専門研修、ビジネスリーダ選抜育成制度を実施し、グローバルに活躍できる経営幹部候補の育成を目指しています。

また「ものづくり・現場力強化」のために、各職場での勉強会やグルーブ討議などを通じて各個人の技術の研鑽に努め、その成果発表会として「オールコマツ技能競技大会」を開催。また、さまざま技能別に「マイスター制度」も導入し、専門技術の習得と継承に努めています。

● 花王
洗剤、トイレタリー、化粧品など、多くの製品分野で国内外のシェアを誇る花王では、「社員個人の成長と組織の発展が重なること」を重視し、階層別全社教育、部門専門性教育、自己開発など、さまざまな機会を捉えて育成環境の整備を進めています。

特に生産部門においてはエンジニアの育成および技術・技能伝承などを目的とした選抜制の研修「グローバルテクノスクール」を実施。各工場で約7ヵ月間に及ぶ長期の集合研修を実施し、花王ならではの独自技術の進化と継承を支えています。

● 武田薬品工業
高齢化社会の進展とともに、薬品業界全体で業績の好調が期待されています。なかでも武田薬品工業は、積極的なM&Aを通じてグローバル企業としての飛躍を目指しています。同社が進めている人材育成の要は、まさにグローバル人材の育成です。

このため武田薬品工業では、入社後の導入研修、各部門や営業所での研修、eラーニング、OJT、階層別研修、その他「外部派遣研修」や「自己啓発支援」を充実させています。さらに世界的に統合された段階的かつ重層的な育成プログラム「スコラ・コギト」を確立し、グローバルな分野で指導力を発揮する人材の育成を進めています。

注目企業での人事評価の特徴的な取り組み

人材育成と人材評価はまさに車の両輪です。優秀な人材を育成できる制度を整えても、結果を正当に評価し、処遇や昇級に生かす仕組みがなければ、制度は絵に描いた餅になりかねません。

例えば上に紹介した武田薬品工業の人事評価は、部門横断的なオープン環境でのディスカッションで実施されます(部門による)。業務の進行中でも適時チェックやフィードバックが行なわれ、その記録はシステム化され、つねにアップデートされています。

また、花王では認定期間当初に業務目標を設定し、期間内に達成度を定量的に把握・評価するシステムを構築。期末に改めて面談を行い、達成度を評価することで、評価結果の公平性や社員本人の納得度、モチベーション向上につなげています。

コマツでは人事評価を行う全ての管理者に対して、評価者訓練、eラーニングによるフォローアップ教育、さらには事業所単位で評価委員会を設置するなど、人事評価の正当性を担保するためのさまざまな仕組みを構築しています。

人事評価はより多様にフレキシブルに

「JPX/S&P 設備・人材投資指数」はあくまで投資判断の目安に利用される指数ですが、人材投資に関する制度や考え方を知ることのできる貴重の指標でもあります。

今回紹介した企業を含め、上位にランクされている企業の多くは、教育制度や人材評価に関して特長を持っているようです。それは例えば、単なる座学やOJTのみにとどまらない、現場重視の職能教育や専門技術者教育などです。

また人事評価制度に関しても、個別の評価者に依存しない多様性やオープン性を重視した、客観的な評価システムの整備が注目されます。通常の企業での人事評価が年に一回、上長、もしくは人事担当者により実施されるのに対して、きめ細かく機会を設定し、複数の評価者により、社員の能力把握に努めるような取り組みも広がっています。

それらの体制が整備されていれば、結果は個々の社員の報酬へ、さらには業績向上へとつながり成長の好循環が生まれるでしょう。

人事評価は会社の業績に直結する、そんな当たり前の考え方を「JPX/S&P 設備・人材投資指数」の上位ランク企業は改めて教えてくれているといえそうです。

(提供: あしたの人事online

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