メディセレ社長が語るターニング・ポイント
薬剤師国家試験予備校として急成長を続けているメディセレスクール。授業内容のわかりやすさだけでなく、心理面での手厚いサポートが評判となっている。その背景には、同校を率いる児島惠美子社長の「ある体験」があったという。自身の人生を変えたそのターニングポイントについて語っていただいた。
震災の混乱の中で薬剤師試験に失敗
学部を卒業すれば誰でも薬剤師になれる」……そう思っている人は多いと思いますが、実際はその前に「薬剤師国家試験」に合格する必要があります。合格率は75%ほどですから、4人に1人は不合格に。そのまま薬剤師になることを諦めてしまう人もいます。
そんな人を一人でもなくしたいという思いから、2007年に薬剤師国家試験予備校を立ち上げて、すでに10年になります。始めた理由は、私自身が薬剤師国家試験に失敗したから。まさに、人生のターニングポイントでした。
元々医学部を目指していた私は、親の病気もあり断念。代わりに薬学部に入学したのですが、どうも勉強に身が入りません。さらに、試験を控えた1995年1月に阪神・淡路大震災が発生。神戸にあった大学は一時閉鎖され、勉強する場所をなくした友人たちを家に集めて勉強会などをしていました。
当時の合格率は90%以上。合格するだろうと勝手ながら思っていたので、相当なショックでした。
ただ、本当につらかったのはその後です。実はすでに薬局の内定をもらっており、1年間、働きながら勉強を続けたのですが、資格を持たない私にできる仕事は限られています。常に「針のむしろ」状態です。友人たちも気を使って誰も声をかけてくれず、それがまた私にはつらいことでした。
翌年、無事に合格するも、「こんな思いを誰にもさせたくない!」と、薬局を辞め教育の世界へ。予備校にて国家試験対策の講師となったのです。
「歌って踊れる薬剤師になろう」などと替え歌で薬の名前を覚えさせたりしたものだから、周りの先生たちからは不満の声もあったようです(笑)。ただ、授業は好評で、合格率も向上。外部から求められて講義をすることも増え、その後の独立につながっていったのです。
「合格して当たり前」のプレッシャーをケアしたい
この間、薬剤師の世界では大きな変化が起きました。薬学部の修業年限は4年から6年へ。薬剤師のニーズは飛躍的に増加。薬学部が続々新設され、現在では70以上。一方で、国家試験の合格率は年々低下していきました。
「合格して当たり前」と思われがちな薬剤師国家試験のプレッシャーは、大学受験よりもむしろ強いと私は考えています。だからこそ大事なのは心のケアと考え、私自身が心理カウンセラーの資格を取りました。そして、生徒のモチベーションサポートに力を入れるとともに、講師陣にも心理カウンセラーの資格を取らせています。すべて、私自身のつらい体験を誰にも味わわせたくないという想いからです。
一方で、あの失敗があったからこそ、今の私があります。
失敗したら、それを活かせばいい。人生に無駄な経験はありません。苦労の分、人に優しくなれます。試験に失敗したら、一年間より深く薬について勉強する機会を得たと思えばいい。
私自身の体験から、多くの人にそのことを伝えていきたいです。
児島惠美子(こじま・えみこ)メディセレスクール代表取締役社長
神戸薬科大学卒業。武庫川女子大学大学院薬学修士号取得。名古屋商科大学大学院経営学修士号取得(MBA)。認定薬剤師。内閣府認証心理カウンセラー。認定スポーツファーマシスト。2007年、(株)メディセレを創設。08年、メディセレ教育出版(株)創設。12年、メディセレ薬局を開局。15年、(株)メディキャリ創設。NPO法人医療心理学協会理事長。(『The 21 online』2018年01月17日 公開)
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