「高級住宅が値上がりした都市ランキング」で、広州市、ケープタウン、アスペンがトップ3に輝いた。2017年から2ランクアップした広州市を筆頭に、ケープタウンは10ランク、アスペンは21ランクもアップした。

トップ30中も順位を上げたのはリグーリアで、86位から21位へ急上昇。パリも45位から8位へと跳躍した。対照的に2017年首位だった上海は15位へ、2位だった北京は20位へと転落。

東京はトップ30入りを逃したものの、49ランクアップで48位に。成長率も8.79%減から2.0%増へと好転した。

ランキングは英不動産コンサルティング企業ナイトフランクが、世界100都市における中古高級住宅市場の価格変動(2016年12月~2017年12月)を調べたもの。

最も値上がりした30都市と2017年順位

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(画像=Africa Studio/Shutterstock.com)

30位(初登場) サン・レミ・ド・プロヴァンス(フランス) 5.0%
29位(17位) ロサンゼルス(米国) 5.1 %
28位(47位) オスロ(ノルウェー) 5.3%
27位(32位) エディンバラ(スコットランド) 5.4%
26位(23位) シンガポール(シンガポール) 5.6%
25位(37位) ボストン(米国) 5.8%
24位(21位) サンフランシスコ(米国) 5.9%
22位(5位) オークランド(ニュージーランド) 6.5%
22位(27位) 西アルガルヴェ(ポルトガル) 6.5%
21位(86位) リグーリア(イタリア) 6.6%

20位(2位) 北京(中国) 6.7%
19位(73位) メキシコシティ(メキシコ) 6.9%
18位(16位) バルセロナ(スペイン) 7.2%
17位(38位) 香港(中国) 7.3%
16位(6位) トロント(カナダ) 8.8%
15位(1位) 上海(中国) 9.2%
14位(12位) メルボルン(オーストラリア) 9.8%
12位(13位) ベルリン(ドイツ) 9.9%
12位(59位) ブエノスアイレス(アルゼンチン) 9.9%
11位(15位) ミュンヘン(ドイツ)  10.0%

10位(29位) マドリード(スペイン) 10.6%
9位(11位) シドニー(オーストラリア) 10.7%
8位(45位) パリ(フランス) 12.0%
7位(11位) シアトル(米国) 12.2%
6位(19位) フランクフルト(ドイツ) 12.9%
5位(4位) ソウル(韓国) 13.2%
4位(8位) アムステルダム(オランダ) 15.0%
3位(24位) アスペン(米国) 19.0%
2位(14位) ケープタウン(南アフリカ) 19.9%
1位(3位) 広州市(中国) 27.4%

アジア地域の成長は0.8ポイント減、中国のバブル抑制対策の影響?

広州市では2017年から引き続き高級住宅が大幅に値上がり。成長率が10%以下で頭打ちした香港や北京とは対照的に30%近い伸びを見せた。香港、北京の後退は、政府による住宅バブル抑制対策の影響を受けたものと思われる。広州市のみが順位を上げた理由は、香港や北京と比べて、元々の住宅価格が低かったためだろう。香港では1㎡あたり12万人民元(約202万円)が相場とされているが、広州市では7万人民元(約118万円)が平均だ。

中国の失速はアジア太平洋地域全域に広がっており、地域的な平均成長率は4.4%と2017年から0.8ポイント下がった。

ほかにソウルやシンガポールも順位を下げたが、ナイトフランクは需要が供給を上回っている背景から、今後も堅調な成長を期待している。本土から香港に多額の投資が流入している点もポジティブな展望を予感させる。また49も順位を上げ、トップ50入りした東京の今後にも注目だ。

オーストラリアでは、メルボルンとシドニーの順位が入れ替わった。アジア地域同様、需要不足が高騰を招いた。しかし同国でも2017年、政府による外国人購入者の規制が導入されたため、今後その影響がさらに色濃く価格に反映されるのではないかと推測される。

国外投資家による米不動産への投資は1530億ドル

注目すべきは、大幅に順位を上げたケープタウンとアスペンだ。ケープタウンはビーチリゾート地、アスペンはスキーリゾート地として人気が高い。

ロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミなど「典型的な米人気都市」の成長率はそれぞれ5.1%,、4.6% 、2.2%と低め。しかしドル高が続いていたにも関わらず、2016年4月~2017年3月にかけて、国外の投資家が米不動産に投じた金額は1530億ドルを超えていたというから、根強い需要があるという事実は変わりないだろう。

またアムステルダム、フランクフルト、マドリード、ミュンヘンなど欧州都市を中心に、価格が高騰している。45位からトップ10入りしたパリは、エマニュエル・マクロン大統領への期待が高級住宅市場を活気づけた。成長率は1.2%と低めだが、前年比1.1ポイント増と勢いづいている。

同じ欧州でも数年前までは高級住宅が飛ぶように売れていたロンドンは、2015年を境に需要が急激に低下。Brexitや賃貸用不動産購入の印紙税引き上げが、高級住宅バブルに歯止めをかけた。2017年は72位(0.7%減)に落ち込んでいる。

またチューリッヒ(68位、0.3%減)やジュネーヴ(75位、0.9%減)といったスイスの大都市もマイナス成長となった。

モナコの不動産価格はケープタウンの10倍

不動産の価格自体(2017年第4四半期データ )はモナコが圧倒的な強さを維持。100万ドルで手にはいるのは、たった16㎡である。次いで香港(22㎡)、ニューヨーク(25㎡)、ロンドン(29㎡)、シンガポール(39㎡)。

これらと比べると上海(54㎡)、東京(76㎡)、メルボルン(90㎡)などが安く感じる。成長率では2位のケープタウン(157㎡)はそれよりさらに価格が低く、モナコのほぼ10分の1の価格だ。価格と成長率を重視すると、非常にお買い得といえるのかもしれない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)