「爆買い」と騒がれた一時期の勢いは引いたものの、中国人観光客の存在は、いまや国内小売業や観光業にとって無視できない存在となっている。そんな中国人観光客を誘致する上で欠かせないのが、中国で急成長中のスマートフォンによる電子決済サービス「アリペイ」だ。

日本でも4万店がアリペイ導入

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(写真=WAYHOME studio/Shutterstock.com)

「アリペイ」は、中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)系の電子決済サービスで、中国語では「支付宝(アリペイ)」と書く。

中国での利用者はすでに5億人を超えており、中国人観光客が多い東南アジアの各国でも、小売店や飲食店などが積極的に導入している。いまや世界36カ国・地域で利用が可能だ。

ネットショップだけでなく、リアル店舗での導入も進む。日本でも、コンビニエンスストアや百貨店、家電量販店などで急速に導入が進む。日本ではすでに4万店で利用できるという。

東京・御徒町にある中国人観光客に人気の量販店・多慶屋では、2015年12月からアリペイでの支払いを導入した。導入直後の同年12月の総販売件数のうち約10%、金額にして約25%がアリペイでの支払いだったという。

「手軽」な電子決済サービスが普及の決め手

アリペイが中国人に好まれる理由は、ずばり手軽だからだ。利用者は、商品を購入する際にECサイトの支払い画面からログインするか、モバイルアプリでQRコードを読み込んで決済をする。友人や家族など、ユーザー間での送金も可能だ。

中国では日本の百貨店などでも利用が多いデビットカードの「銀聯(ぎんれい)カード」は広く普及していたものの、クレジットカードの普及は他国に遅れを取っていた。しかし、スマホが爆発的に普及したことで、手軽で安全な決済手段としてアリペイのような電子決済が広く浸透するようになった。

アリペイの導入方法は2種類

アリペイの導入方法には、「消費者提示型」と「店舗掲示型」の2パターンが存在する。「消費者提示型」は、ユーザー側のスマートフォンなどの端末に支払い用のQRコードを表示させ、店員がカメラ付きタブレットやレジの決済端末でコードを読み取るというもの。「店舗掲示型」は、アリペイを導入する店があらかじめ店頭のステッカーやPOPに固定のQRコードを掲示し、消費者に手元のスマートフォン端末のアプリでQRコードをスキャンさせて決済するというものだ。QRコードには、各店舗の決済情報が含まれている。

「消費者提示型」の場合、店舗側がカメラ付きの端末を用意する必要がある。一方、「店舗掲示型」だと、消費者のスマホを利用するため、店側は、QRコードを読み込むためのPOS端末やタブレットを用意しなくて良い。そのため中国では、より初期投資が少ない「店舗掲示型」が主流で、多くの小売店や飲食店で導入されている。

マーケティングツールとしても利用

中国人観光客へのアピールを考えている小売店や飲食店は、アリペイを単なる決済手段としてだけでなく、マーケティングツールとしても利用できるだろう。

O2O集客のためのクーポン機能となる「口碑(koubei)」を使い、クーポンやセールの情報をアップすることで、アリペイ利用者に訴求できる。ユーザー側は、現在地付近でアリペイ利用者が多い人気店や、クーポンやセールを提供している店舗を探すことができ、利便性が向上する。

多慶屋の近隣に位置する上野のアメヤ横町(アメ横)では昨年12月、上野商圏で初の地域を挙げてのマーケティングキャンペーンを展開し、個人商店など16店舗が新たにアリペイを導入した。地域全体での取り組みは、大阪の道頓堀や心斎橋などにも広がっている。

東京五輪に向け導入検討を

日本ではまだ現金が決済手段の主流を占めているが、中国では急速に電子決済の普及が進んでいる。中国で広く使われている電子決済手段には、アリペイのほか、中国ネット大手である騰訊(テンセント)系の「微信支付(ウィーチャット・ペイ)」もある。こちらも海外展開を本格化し、既に日本を含む25カ国以上での利用が可能だ。

今後は、これまで以上に世界各国から観光客が日本に訪れることが期待される。急増する中国人観光客の需要を取り込むためにも、アリペイ利用を検討する価値は大きいだろう。(提供:百計オンライン


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