給与明細は会社から毎月手渡される書類ですが、じっくりチェックされる人は少ないかもしれません。勤め先によってはペーパーレスとなり、「全く見ない」という人もいます。実は、給与明細には「トクすること」が隠されているケースもあります。今回は、給与明細のトクする読み方とともに注意すべきポイントについて紹介します。

給与明細で、給与の内訳をチェック

給与明細のトクする読み方
(画像=asife/Shutterstock.com)

給与明細には、会社から受け取る給与や給与から引かれているものの内訳が書かれています。給与明細の形式は会社によって違いますが、大きく分けて「勤怠」「支給」「控除」となっています。勤怠は出勤や欠勤日数、残業時間など出勤状況についてです。支給は基本給や役職手当、その他各種手当金の金額が記載されています。

控除については健康保険料や年金保険料、税金(住民税、所得税、)そのほか給与天引きで処理されるものです。支給額から、控除額を引いたものが「総支給額」となり、実際に振り込まれる手取り金額となります。

何が引かれている?

健康保険料、介護保険料

加入している健康保険によって保険料の計算方法は違いますが、一般的には「標準報酬月額×料率」で算出します。協会けんぽの場合は都道府県ごとに料率は変わり、東京都の場合は9.90%(2018年度)です。40歳以降は介護保険料も引かれ、料率は全国一律1.57%になっています。実際に給料から引かれるのは上記金額の半分です。残り半分は会社が費用を負担してくれています。

標準報酬月額とは、会社から支給される基本給、各種手当、残業代など1ヵ月分の総支給額における3カ月間の平均(基本的には4、5、6月)をある区分にあてはめた金額です。給与の大きな変動がない限り、1年間の保険料額は同じとなります。

厚生年金保険料

健康保険と計算式は同じです。厚生年金の料率は、18.3%(2017年9月分~、厚生年金基金に加入されていない人)となっており、この半分(9.15%)がお給料から引かれています。健康保険と年金保険を合わせると、14.1%がお給料から引かれていることになるのです(東京都、40歳未満)。標準報酬月額が30万円の人ですと、毎月4万2,300円の健康保険料と厚生年金保険料が給料から引かれて、実は「大きな支出」となっています。

雇用保険料

毎月の支給額×3/1,000(農林水産業、建設業、清酒製造業は4/1,000)が給料から引かれる金額です。残業代などでお給料が変動すると、保険料も毎月変動します。

税金(所得税、住民税)

会社員の場合、「源泉徴収制度」といって、会社が支払い給与からあらかじめ所得税を引いて個人に代わって納税を行っています。住民税の場合も、前年1月から12月までの所得に応じて決定した税金を12分割して毎月給与天引きにより会社が納税を行う流れになっています。

その他

組合費や個人的に契約している共済等の保険料、財形貯蓄がある場合は、給与から引かれています。労災保険は、全額会社負担なので、給与から引かれることはありません。

おトクな読み方と注意するポイント

社会保険をフル活用~教育訓練給付金でキャリアアップ~

キャリアアップのために資格取得をする際には、雇用保険の「教育訓練給付金制度」がおすすめです。現在お勤めの人も、離職中の人も、要件を満たせば申請することができ、受講料の20%が支給されます(上限10万円。3年に1度が限度)。また、専門技術を習得する場合は、教育訓練施設に支払った経費の50%(上限は年間40万円、最大3年間)が支給される「専門実践教育給付金」があります。「専門実践教育給付金」の場合は、受講終了後にはさらに20%が支給される追加給付もあり、キャリアアップを考えている人にはうれしい制度です。

いずれも厚生労働大臣の指定施設での受講が必要となり、在職者の場合は雇用保険の加入期間が3年以上(はじめて支給を受ける場合は特例あり)、離職者の場合は資格喪失日(離職日の翌日)から1年以内に受講を開始しなければいけないなどの要件を満たす必要があります。資格取得を考えている人は、希望の資格が指定講座にあるかどうか、事前にチェックしてみましょう。

手取り収入がアップする方法

健康保険や年金保険料の次に多いのが、税金です。「会社員の節税」としては、老後資金の準備ができる「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や医薬品の購入費用に対して活用できる「セルフメディケーション税制」もあります。さらに、自己負担で支払った転居費や資格取得費、図書費などを計上できる「給与所得者の特別支出控除」にも注目です。

そのほかにも「医療費控除」「雑損控除」など確定申告によって、税金を減らすことができる制度はたくさんあります。生命保険や地震保険の支払金額に応じて税金が少なくなる「保険料控除」もありますので、必要に応じて上手に加入していくことで、税金を減らし、手取り収入を増やすことができるでしょう。

残業代が多い人は要注意

業績の悪化や、社内規制で残業時間が減ったとき、今まで残業代が多かった方は一気に手取り収入が減ってしまいます。残業代込みで生活設計をされていた方は、住宅ローンの支払いに困ったり、生活費を大幅に見直ししたりする必要がでてくるのです。残業代は「おまけ」と思って、貯蓄に回すなど生活費とは別管理しましょう。給与明細の「支給」部分を見て、残業代がいくらになっているのか、確認してみてください。

がんばって働いたお金だからこそ、大切に

「収入から何が引かれるのか」「どれくらいが手元に残るのか」「手取り収入を増やすにはどうすれば良いのか」を把握することは重要です。仕事で得た収入は、がんばって働いた自分のお金になります。そのお金を、今後に活かすためにも、しっかりと給与明細の項目をチェックしながら夢を膨らませていきましょう。

文・冨士野喜子(ふじのFP事務所)

(提供=fuelle(フエル)