2017年は世界の不動産投資が史上最高額の1.62兆ドルに達し、そのうち5割以上をアジアからの投資が占めていたという。北米の投資家が最大の投資規模を維持している一方で、アジアの投資家も勢いを増している。しかし中国の投資家による国外投資は、今後失速するとの見方も強い。
アジア圏における不動産投資も活発化しており、2017年第4四半期だけで総額520億ドルを記録した。特に香港は前年比171%増と飛躍的な伸びで、2018年前半には香港不動産市場史上最高額となる52億ドルの取引が予定されている。日本の不動産投資は31%増だった。
5割以上が国際不動産投資 アジアからEMEAへの投資が急増
非上場不動産サービス企業として世界最大の規模を誇る、英国のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドが2018年3月に発表した報告書「グローバル・インベストメント・アトラス2018」によると、2017年の不動産投資市場は予想を上回る好調ぶりをみせた。
2016年の1.43兆米ドルを上回る過去最高の1.62兆ドルが世界で不動産に投資され、投資規模は13.2%増、優良物件の家賃は1.7%増。2018年もさらに拡大する見込みだ。
EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)への不動産投資が全体への51パーセントを占めており、成長率は7.5%増。アジアからEMEAへの投資が95.0%増えるなど、アジアの投資家が勢いを増している一方で、依然として北米の投資家の活動が最も積極的である。
こうした市場の拡大は、アジアからの投資によるところが大きい。不動産投資資本の半分以上はアジアから流入しており、取引量の46%はアジアの投資家によるものだ。アジア圏ではますます資本源が増加傾向にあることから、国外投資の活発化は今後も当分続くと予想されている。
北米投資は低迷 英国がトップ不動産投資都市の座を維持
米国全体の不動産投資市場は予想以上の繁栄ぶりだったが、北米における投資活動は低迷気味。国内・外からの投資は昨年から6.9%減った。しかし12.0%増を記録したカナダを筆頭に一部の地域では投資活動が活発化しているため、総体的に2018年も期待を持てる要素がある、とクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドはみている。
過去10年で最も堅調な経済を維持している欧州での投資は8.3%増。過去3番目に大きな伸びとなった。全域において取引量が増えたものの、特に経済向上がみられた南欧州での投資は19.2%を記録した。
Brexitで揺れる英国は、最も人気の不動産投資市場の座を維持。Brexit後の次なる欧州主要都市としてベルリンやフランクフルトといったドイツの都市が投資家の関心を集めているが、取引量では英国がドイツを3.9%上回った。
産業別の成長率ではオンライン販売が強い小売業に押され、不動産業は43.3%増。最も需要が大きかったのはオフィスへの投資で、全不動産投資の40%を占めた。
中国投資家による国外不動産投資は失速?
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのカーロ・バレル・ディ・セント・オールバノCEOは2017年の好調ぶりが2018年も続くと予想しているが、アジアで最も国外投資に熱心だった中国投資家の活動が下火になる可能性を指摘している。
同国では既に、国外への資本流出を懸念する政府が対外投資規制強化に乗り出しており、大連万達集団や安邦保険集団、復星国際、海航集団など、国外投資に積極的だった中国企業への圧力を強めている(ロイター2017年8月21日付記事)。こうしたM&Aの制限が中国企業の成長を低迷させるのではないかという懸念とともに、国際不動産市場にも陰りを落としているようだ。
香港史上最高52億ドル級の超大型売却
英事業主・投資家向けの商業用不動産サービス企業JLLの調査によると、アジア圏への投資も好調で、2017年第4四半期だけで総額520億ドルを記録。同年同期比16%増となった。
過去1年間で香港における取引は171%増え、総額74億ドルに。オーストラリアでは40%増、日本では31%増。香港では2017年、九倉集団 が九龍東部の商工業・住宅地の地域、観塘で開発中だったプロジェクト「8 Bay East」を12億ドルで緑景中国地産に売却したほか、2018年前半には73階建ての超高層ビル「ザ・センター」の買収完了が予定されている。
2017年11月に不動産大手、長江実業集団が中国・香港の投資家連合に売却すると発表したもので、52億ドルという香港不動産市場史上最高額で取引きされる。またヘンダーソン・ランド・デベロップメント(恒基兆業地産)による、香港のセントラル(中環)地区にある美利道も売却29.8億ドルで売却が決まっている。
JLL香港のマネージングディレクター兼資本市場部門責任者のジョゼフ・ツァン氏は、香港で売りに出される優良オフィス物件は限られているものの、2018年も10%前後の成長を期待している。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)