スマホから誰でも簡単に売り買いが楽しめるフリマアプリ「メルカリ」。世界中で1億回 以上ダウンロードされた日本発の人気アプリとして、国外でも勢力を拡大中だ。
メルカリは独自のC2Cサービスを前面に押しだしてるものの、「AmazonやeBayの強力なライバルに成長する可能性を秘めたスタートアップ」というだけではなく、「米市場に挑む日本の希少なユニコーン企業」としても注目を浴びている。
メルカリは国際事業を展開する上で米国市場での成功を最優先事項とみなしており、これまで米国進出に挑戦した日本企業とは違う戦略で新たな境地を開拓すると期待されている。
山田CEO「米国での成功なしに国際的な成長は成し得ない」
2013年、東京で設立されたメルカリは、幅広い層をターゲットにした簡単・安心のC2Cサービスの提供で、瞬く間に時価総額2520億円へと成長を遂げた。2013〜16年に実施された過去5回の資金調達ラウンドで、三井物産や日本政策投資銀行、WiLなどから総額1.2億ドルを調達。2018年3月の資金調達ラウンドでは新たに総額50億円を調達し、時価総額を2年前の2倍に押し上げた。
2018年6月には東京証券取引所の新興企業向け市場「マザーズ」 に上場を予定しているほか、2014年に進出を果たした米国市場での事業拡大も計画している。
ロイターの取材 に応じた山田進太郎代表取締役会長兼CEOは、「米国での成功なしに国際的な成長は成し得ない」とし、米国市場で受け入れられたサービスは世界中に広がるとの見解を示した(ロイター2018年4月2日付記事)。
CNBCはかつてメルカリを「Amazonのライバル」的位置づけで紹介していたが(CNBC2016年11月4日 付記事)、フリマという点では欧米最大のオークションサイトeBayに近いのではないかと思われる。しかしeBayが C2CサービスだけではなくB2C、B2Bサービスも扱っているのに対し、メルカリはあくまでC2Cサービスに焦点を絞っている。そのため山田CEOは「市場に直接的なライバルは存在しない」と断言している。
楽天、LINEの米市場敗退に怖気づかないチャレンジ精神
米国市場が日本企業にとって、過酷な挑戦の場であることは疑う余地がない。日本最大のeコマースである楽天は米国市場拡大に向け、2014年に米ネット通販のEbatesを10億ドルで買収した。しかし米国進出を含む国外事業は巨額の減損という結果を生み、苦戦を強いられている。
日本最大のメッセージアプリ「LINE」も、WhatsAppやFacebook Messengerの登場によって米国での人気に陰りがみえ、現在はターゲットをアジア圏に移行させている。
山田CEOもこうした日本企業の頓挫や道のりの険しさを認識しているものの、何度でも挑戦する意気込みだ。過去4年間の米国でのダウンロード件数は、日本の2分の1に値する3000万件以上。中々の好調ぶりといえるのではないだろうか。
米市場最優先主義で厳しい競走に勝ちぬく?
2017年にはFacebookの元ヴァイスプレジデント、ジョン・ラーゲリン氏を自社のチーフビジネス・オフィサーに雇い入れたほか、英国にも進出している。ラーゲリン氏の雇用は「日本のユニコーンが米大手ITのトップを引き抜いた」として、メディアの注目を集めた。 同氏はFacebookで事業開発、モバイルおよび商品パートナーシップを担当していたほか、Googleでもリーダーシップを務めたIT界のベテランだ。就任に辺り、ラーゲリン氏はメルカリが米市場を第2の市場ではなく、第1の市場とみなしている点を強調した。これが米市場で苦戦する楽天やアリババとの差だという。
本国で大きくなり過ぎた企業が国外進出を目指す場合、どうしても優先順位が本国での事業に傾いてしまう。新たな市場を開拓する際、これが成長を阻む足かせになるというのだ(テッククランチ2017年6月22日付記事)。 ラーゲリン氏は山田CEO同様、「米国という国際的に競走の激しい市場で勝ちぬくことができれば、他の市場でも成功できる」と確信している。「メルカリの挑戦は大胆ではあるが勝算はあると思う」と述べた。
2016年には30人だった米従業員数を2017年には100人に増やすなど、雇用にも力を入れている。
欧米ユーザーの反応は良好 解決すべき課題もあり
同社は米国に続き、2017年に英国進出を果たしている。AmazonやeBayとは異なり、利用が完全に無料という点が逆に消費者の不安をあおったのか、メルカリのアプリを試した英ブロガーが「本当に無料だった、怪しい点はない」と自身のブログに投稿しているのが面白い。
肝心の欧米ユーザーからの評価はどうなのか。App Storeのランキングではショッピングアプリ部門36位(2018年4月26日データ)。ユーザーによる口コミ評価は平均4.8ポイント(5ポイント満点)と中々の健闘ぶりだ。
「出品者も購買者も100%無料で利用できる素晴らしいアプリ」「親身になって対応してくれるカスタマーサポート」と絶賛を受けている反面、「2回、出品基準に満たなかっただけで除名されるのは不公平」「幽霊会員がかなり前に出品したものが削除されていない」「フィードバックシステムを改善すべき」といった不満も聞こえる。
メルカリにとってはこうしたユーザーの不満をひとつひとつクリアしていくことが、今後の課題となるだろう。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)