3月期企業の新年度は、為替の円高などを背景に利益の伸びが鈍化する見通しだ。ただ、各社の想定は慎重な色合いが強く、期中の増額修正も視野に入る。決算を受けた物色対象のタイプ別有力候補を探った。
東証1部の決算発表ピークに当たる4月27日までに今3月期の業績予想を発表した企業のうち、日経500種平均株価採用の約120社の合計営業利益(一部経常利益)は前期比3%の増加が見込まれる。前期(前々期比18%増)から増益率が大幅に縮小するのは、計画段階で前期比5~6円程度の円高(対ドル)を想定する輸出企業が多いほか、原材料や人件費の上昇を織り込んでいるためだ。
一方、決算発表直後の株価反応はまちまちとなっている。タイプ(1)「ネガティブ」、タイプ(2)「ポジティブ」、タイプ(3)「ニュートラル」のそれぞれから中期的な上昇が期待される総合メディカル(4775)、日本特殊陶業(5334)、トプコン(7732)をピックアップした。
総合メディ、悪材料はおおむね織り込む
調剤薬局の総合メディは、今期の連結営業利益を前期比19%減の58億円と予想。調剤報酬改定の影響を大きく受ける見通し。株価は報酬改定への懸念からもみ合いが続いた後、決算発表を受けて昨年5月以来の水準まで急落した。ただ、ここからは見直し買いが狙えそうだ。
2年前の調剤報酬改定時にも、同社の営業利益は期初の減益予想が最終的に増益に転じた。今回も計画は保守的とみられる。大幅調整で株価は悪材料をおおむね織り込んだ。今後は徐々に上ブレ期待が反映されるだろう。
中・長期的には、医療モールの開発が成長の原動力となる上、「敷地内薬局」の拡大や、新たなM&A(企業の合併・買収)も期待される。1月高値(3640円)へ向けた戻りの動きに付きたい。
特殊陶、欧州での環境規制追い風
特殊陶は4月27日に、今期の連結営業利益が720億円(前期比7%増)になりそうだと発表した。1ドル=105円(前期は約111円)の円高想定を吸収しての増益予想から、旺盛な排ガス処理装置向けセンサーや自動車用プラグの需要がうかがえる。
今期は主力のプラグが前期比5%の増収となるほか、センサーは窒素酸化物(NOx)用が同2.6倍に急拡大する見通し。また、高付加価値の全領域空燃費センサーも同3割近い伸びが期待される。
強含みの業況を受け、株価は騰勢を強めつつある。まずは1月高値(3050円)奪回から、2015年12月の3595円までの戻りが視野に入る。欧州では一段と環境規制が強化される方向にあり、特殊陶の商機がさらに増しそうだ。
トプコン、調整から戻り相場本格化へ
測量システムのトプコンは、4月27日の引け後に前期決算を発表。今期の連結営業利益は150億円(前期比24%増)への拡大を見通す。これを受けた5月1日の株価はほぼニュートラルの反応で寄り付いた(その後は値を消した)。
建設業界や農業のIT化が収益の支援材料。また、眼科用機器も本格的な収穫期を迎えそうだ。建設向けは地方自治体や民間企業からの引き合いが強まる中、舗装工事の自動化といった現場でのIT導入も見込まれる。農業分野でも世界的にIT投資が進む。
これまで投資が先行していた眼科用機器も、1月には一部製品がFDA(米食品医薬品局)の認可を得た。今期の前提為替レートは1ドル=105円、1ユーロ =130円。1円円安に伴う年間営業利益の押し上げ額は対ドルが約2億円、対ユーロが約1億円。株価は1月の高値(2917円)から3割超の調整を経ており、本格的な戻りが期待される。(5月2日株式新聞掲載記事)
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