テレビや新聞、雑誌で大人気の家計再生コンサルタントである横山光昭さん。書籍などをご覧になったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回、横山さんには老後に向けたお金を貯めるコツについてアドバイスをいただきました。横山さんが提唱される「消費」「浪費」「投資」とはどのようなことかも伝授いただきました。

すぐに始めてほしい3つのお金の「袋」!「使う」「貯める」「ふやす」

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――将来的に必要な金額と年金を中心とした収入のギャップを埋めるために、私たちはまず何から始めればいいんでしょうか。

横山さん:いくら貯金をすればいいのでしょうかという質問をいただくことが多いのですが、そのときに私たちはいつも、“3つの袋”の話をさせていただいています。袋といっても、本当の袋ではなく、口座を「使う」「貯める」「ふやす」に分類して管理するということです。

●使う
まず「使う」の袋には、最低限、生活費の1.5ヵ月分はおいておきましょう。

●貯める
「貯める」の袋には最低6ヵ月分はおいておきましょう。もちろん車を買う予定がある、お子さんの入学金が必要であれば、それに応じて増やします。この袋はいわば、生活防衛資金というようなイメージですね。「使う」と「貯める」の線引きをせず、“使わずに残っているのが貯金です”といった状態にするのはあまり好ましくはありませんね。

もちろん、生活費は毎月一定額ではないので、少しバッファは持たせておくべきでしょう。「使う」に置いたら、すべて使うという意味ではなく、きちんとお金を棲み分けておこう、ちょっとやそっとのことで「貯める」のお金に手をつけないでおこうという考え方なのです。

●ふやす
「使う」と「貯める」の袋に7.5ヵ月分のお金ができあがってから「ふやす」の袋、すなわち投資を行うのが理想です。「使う」から「ふやす」にいきなりジャンプするのも避けるべきでしょう。

ただ、「使う」と「貯める」の袋を作るまでに3年や5年かかるという人もいらっしゃるわけですよね。そういう方は「貯める」と「ふやす」を同時に併走させてもよいのではないかと思うんですよ。3年とか5年の年月を無駄に過ごすのは、すごくもったいないと思うんですよね。

貯金をできない体質の人が貯金体質になるためにはとうしたらいいの?

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――これまでコツコツと貯金ができなかった人が、いきなりマインドを変えて、お金を貯めるのは難しいのかなあと思うのですが、どのように指導をされるのですか。

横山さん:我々にご相談いただいた場合、お尻を叩いて励ますことはできるのですが、おひとりでモチベーションを維持するのは、正直、難しいですよね。家計簿をつけても誰からも褒められるわけではなく、さぼったら怒られるでもなく、お金がたまったからといって誰かに自慢できるわけでもなく、結局、自分との戦いみたいな部分があるではないですか。途中で挫折することだってあって当然だと思うのです。

でも、ひとついえることは、あまり高い目標を追いかけるのではなく、今月は赤字にしないとか、今まで貯金ができなかった人が、3ヵ月間で5万円とか10万円を貯めたとか、まずは小さな成果をあげるために前進し、頑張っているわけで。そういうちょっとした変化を何回も感じたほうがいいと思うんですよね。

いうなれば、私たちの仕事って、貯金ができない方々に自信をつけさせなければいけない仕事なんですよ。ちょっとした前進を繰り返しながら自信を持って向き合うと、絶対、家計に変化が現れると思うのです。

――確かに、おっしゃるとおりですね。ただひとつ心配なのが、人間のモチベーションって、そんなに長く維持できるものなのか?ということです。老後のために、ロングスパンで挫折せずに貯めていけるのかなぁといった不安をお持ちの方はいらっしゃいませんか。

横山さん:そうですね。上手に貯金をされている方々をみてみると、意外にも、いわゆる“浪費”をしているのですよ。良い意味での“適当さ”がありますよね。やっぱり5%くらいの枠を決めて無駄使いをしています。

そもそも、1年間を通して支出を一定にコントロールできる人なんてほとんどいません。お子さんがいらっしゃれば、夏休みには旅行に行きたいですし、年末年始にはお金がかかります。年間通じて支出を一定にするだとか、無駄遣いは絶対にしないとか、それはそれで味気ないですよね。

やはりメリハリですよ。これをやるためには、これをやらないといった、バランスの良い選別が必要だと思います。使うときには使って、使わないときは使わないといったコントロール力のようなものは、上手にお金を貯めている人ほど持っていますね。

直伝!横山さん流「消費」「浪費」「投資」とは?

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――それでは、もしこれは浪費だろうなぁと思ったときにはどのように考えたらいいのでしょうか。

横山さん:あえて浪費をするのであれば、自分は“浪費をする”のだという認識のもとでやって欲しいと思います。怖いのが、それが無駄だと認識しないままに使ってしまうことです。

お金を使ううえでは、「消費」「浪費」「投資」をしっかり意識する必要があります。

●消費
消費というのは、住居費だったり、生命保険だったり、食費や衣服のように、生産性はないけれども、生きていくために必要なものです。

●浪費
浪費は、簡単にいえば、無駄使いなのですが、これは絶対にNGというイメージではなくて、良い浪費と悪い浪費があるのですね。さっきもいったとおり、重要なのは、“これは浪費だ”と意識して使うことです。

●投資
投資はいうまでもなく、金融商品はもちろん、自己投資もひっくるめての投資という意味合いです。貯金も入りますし、金融商品を買うのもそうでしょうし、本を読んだり、何かを習ったり、資格を取ったり、とにかく“生産性があるもの”が前提にあります。

この3つを意識することが、お金をうまくコントロールするための第一歩だといえるでしょう。

消費、浪費、投資の3つのバランスって?

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――消費、浪費、投資についてバランスのよい割合はありますか?

横山さん:理想的なバランスとしては、「消費」が70%、「浪費」が5%、「投資」が25%。上手に貯めることができる方々ほど、その数字に近かったりします。これは年収が800万円くらいまでの方のデータですね。1,500万円とか2,000万円になると、「消費」が65%とか60%に下がるのですが、面白いことに浪費は5%のままなんですね。

しかも、これは「浪費」だと明確にとらえている。貯められない方は「浪費」を「浪費」だと認めていないのです。いつも「浪費」はゼロだというのです。そんなわけはないのです。

そして年収の高い方ほど「投資」の部分が30%から35%になる傾向があったりします。この割合というのは、うまくやっている人の分析結果なんですよ。すなわち、このバランスにこそ意味があって、このバランスを意識していけば、家計をうまく回している人に近づけるのかなと思っています。

人間って、よく“食べたものでできあがっている”といったりしますけれども、私は“使っているお金でもできている”のではないかと思うんですよね。健康のために食べるものを意識する人がいるのと同様、せっかく稼いだお金なんですから、使い方も意識したほうがよいと思うのです。

自分への投資も必要です。生きるために必要な「消費」を85%、残りの15%を「浪費」に充てるような生活を続けるより、自分に対してお金を使い、生産性があることに取り組んでいる方のほうが、何年か後にお会いしたときに人間的に成長を遂げられているようにみえます。

私たちが生きていくためのコストって決して低いものではありません。住むところも都内なら高いし、食費や水道光熱費など、いろいろお金がかかります。でも、生活費を払うためだけに生きるのって、すごく悔しいと思うのですよ。だからこそ自分で稼いだお金の一部は自分のために使っていくということは非常に大事だと思うんですよね。そういった意識や指標を自分の中に持ちながら貯蓄をしていきましょうということです。

横山 光昭さん(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント。株式会社マイエフピー代表取締役。
家計の借金・ローンを中心に、盲点を探りながら抜本的解決、確実な再生をめざす。個別の相談・指導では独自の貯蓄プログラムを生かし、リバウンドのない再生と飛躍を実現し、これまで8000 人以上の赤字家計を再生した。業界でも異端児的活動で、各種メディアへの執筆・講演も多数。雑誌、新聞、テレビ、ラジオでも活躍。Web では日本経済新聞社などで連載を公開中。全国の読者や依頼者から共感や応援の声が集まる、庶民派ファイナンシャルプランナー。
独自の貯蓄法などを紹介したシリーズ累計61万部の『年収200 万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめ、『約7000 世帯の家計診断でわかった!
ずっと手取り20 万円台でも毎月貯金していける一家の家計の「支出の割合」』(ダイヤモンド社)、『NHK「あさイチ」お金が貯まる財布のひみつ:不安がなくなる貯金の極意』
(共著/新潮社)など著書も多数。

(提供:お金のキャンパス

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