被相続人の遺産に現金や預金が少ないケースでも、場合によっては、相続財産は思いのほか高額になるケースがあります。とくに預貯金だけでなく、不動産や証券をはじめとするさまざまな資産を有していた方が亡くなった場合、多額の相続資産が残されることもあるのです。その中でも不動産のような現物資産が大半を占めている場合には、早期に“相続税の納付”について考えるべきでしょう。

なぜなら、相続税の納税期限というのは、相続が開始されたことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10ヵ月以内と定められているからです。しかも、相続税は現金での一括納付が基本となるため、すぐに用意できない場合が少なくありません。そこで、不用意に延滞してしまわないよう、「延納」や「物納」について理解しておきましょう。

「相続税の申告と納税」国税庁

延納を活用するための4つの条件とは

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(写真=astephan/Shutterstock.com)

そもそも延納とは、相続税を一括で支払えない場合に活用する制度です。一定の条件をクリアしておけば、分割によって支払うことができます。延納を行うための条件とは、主に次の4つです。

1.相続税額が10万円を超えること
2.金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
3.延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません)
4.延納申請にかかる相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること

「相続税の延納」国税庁

このように延納は、条件さえ満たしていれば、納税による負担を緩和できる制度となります。一方で、法律に定められた担保を用意しなければならない点、あるいは延納利子税がかかってしまう点など、デメリットも見逃せません。活用時にはよく検討しておくようにしましょう。

物納できる相続財産と順位について

次に、物納について見ていきましょう。物納とは、延納によっても相続税を納税するのが困難な場合に、納税者の申請により、一定の財産を活用して納税できる仕組みのことです。具体的には、次のような資産および順位で物納の対象とすることができるとされています。

第1順位:不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式など
第2順位:非上場株式など
第3順位:動産

「相続税の物納」国税庁

これらのうち、「担保権の目的となっている不動産」や「権利の帰属について争いがある不動産」、さらには「境界が明らかでない土地」など、物納に不的確な財産もあるため注意が必要です。実際に物納を行う際には、相続税の納付期限を守ることはもちろん、物納申請期限までに、物納申請書と物納手続き関係書類を管轄の税務署に提出することが必要です。

物納は、一定の条件を満たした財産があれば、物納許可限度額まで譲渡所得税非課税で対応してもらえる制度です。一方で、物納が許可されるまでは利子税がかかってしまうため、延納と同様に注意が必要となります。

不動産を売却して資金を捻出する方法も

さらに、延納や物納などの制度を活用するのではなく、遺産である不動産を売却して相続税の原資を捻出する方法もあります。その場合には、不動産の名義変更や登記手続きを経て、不動産を売却できる状態にしておかなければなりません。また、抵当権など売却に支障をきたす可能性がある権利が付随している場合には、その対応も必要となります。

このように不動産を売却して資金を捻出する方法は、無事に売却できれば延納や物納による利子税を取られなくて済むでしょう。しかし、売却まで時間や手間がかかったり、売却までのスケジュールが見通しにくかったりするなどのデメリットもあります。そのため、不動産を売却する際には、できるだけ早く売却に着手することが求められます。(提供:相続MEMO


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