株価が年末にかけて上昇しやすいという「アノマリー」。これを信じて乗るべきか、それとも無視するべきか……、筆者の明快な考え方をお伝えします。

「アノマリー」ってなに?

アノマリー,トウシル
(画像=トウシル)

「アノマリー」という言葉が良く使われます。アノマリーは、理論的に説明がつかない、傾向・経験則のことをいいます。

株式投資で有名なものに、「セル・イン・メイ」というものがあります。これは過去の経験則上、5月以降株価のパフォーマンスが悪くなるので、その前に株を売っておこう、という相場格言です。

ほかにもいろいろなアノマリーがありますが、最近にわかに言われているのが、秋から年末にかけて株価が上昇する、いわゆる「年末高」のアノマリーです。

年末高のアノマリー、実際のところは?

ある投資情報サイトでもこの年末高アノマリーについて取り上げられていました。それをみると、2012年から2017年まで6年間、9~12月にかけて株価が上昇していて、かつ2015年を除けば10%超の上昇になっていると書かれていました。

そこで筆者も、過去の日経平均株価の値動きを調べてみました。なお、2012年よりさらにさかのぼって、2007年まで調べました。それが下記の表です。

表1
(画像=トウシル)

確かに、2012年から2017年まで連続してプラス、かつ2015年以外は10%超の上昇となっています。

しかし、もう少しさかのぼると、2010年は大幅プラスですが、2011年や2007年はマイナス、そしてリーマン・ショックが起きた2008年は非常に大きなマイナスになっています。ちなみに、2008年10月の安値6994円90銭に達したときの下落率は46.5%にも達しています。

アノマリーに乗るべきか、無視すべきか?

このように、2012年11月からスタートしたいわゆる「アベノミクス相場」が始まった後と、その前とでは、年末に向けての日経平均株価の動きはだいぶ様相が異なっていることが分かると思います。

確かに年末に向けて株価が「上がりやすい」とはいえますが、必ず上昇するわけではないことに注意すべきです。

もし、このアノマリーに乗って日本株を大量に買い仕込んだ結果、リーマン・ショックに近い状況になったとしたら、とつてもないダメージを受けてしまう恐れもあります。

そもそも、2012年11月以降のアベノミクス相場は、長期上昇相場です。上昇相場であれば、時が経過するにつれ株価が上昇しやすいのも事実です。

長期上昇相場の時期だけを取り出し、「6年連続でプラスだから今年もそれに乗るべき」とする考え方には危うさを感じてしまいます。

アノマリーに「乗る」のではなく結果として「乗れている」のが理想的

したがって、筆者はアノマリーの類は一切無視しています。ところが、過去6年間の年末高にはしっかりと乗ることができています。結果としてアノマリーに「乗れている」というのが正しい表現です。

なぜアノマリーに「乗れている」のか、それは筆者が株価のトレンドに従って常に行動しているからにほかなりません。大幅な上昇となれば、株価が上昇トレンドになりますから、それに素直に乗っているだけです。

ですから、もし9月以降株価が上昇せず下降トレンドが続いたとしたら、株を新規に買うことも保有することもしません。たとえ6年連続年末高になっているというアノマリーが存在してもです。

筆者はアノマリーではなくトレンドに従って動いているのです。そうすれば年末高の上昇が生じた時は上昇トレンドになりますからそれに乗ることができます。2007年や2011年、そして2008年のリーマン・ショックのような事態が生じた場合は株価が下降トレンドになるため保有株は売却し、新規買いは行いません。その結果、株価上昇の恩恵を受けつつ、株価下落を回避することができるのです。

6年連続ならば本当に7年目も続くのか?

もし、年末高アノマリーを信じている状況で、急落・暴落が生じた場合、適切な時期に保有株を売却することができず、多額の含み損をかかえてしまう恐れがあります。

また、急落・暴落に至らないとしても、長期上昇相場が終焉してしまえば、株を保有し続ければするほど株価が下落してしまうことになりかねません。

個人投資家の中には、アベノミクス相場がはじまってから株式投資を始めた、という方が大勢います。その人は、リーマン・ショックをはじめと急落・暴落や、バブル崩壊後の長期低迷相場を経験したことがありません。

ですから、6年連続年末高と言われると、「きっと今年もそうなる!」と考えてしまいがちです。

しかし、筆者をはじめ、急落・暴落や長期低迷相場を経験しているベテラン投資家は違います。相場に100%確実なことはないことを身を持って経験していますから、6年連続年末高と聞いても、「今年もそうなるとは限らない」と思って行動します。

アノマリーを信じると、アノマリーとは異なる結果となった場合に大きな損失を被ってしまいます。でも、株価のトレンドを信じれば、上昇トレンドになれば株を新規買いして保有し続けますから結果的に年末高のアノマリーに乗れますし、下降トレンドであれば株を保有しないので損失を回避できます。

アノマリーに乗るのではなく無視をする、しかしトレンドに乗れば結果的にアノマリーに乗れる……これが筆者が考えるアノマリーとの付き合い方です。

足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。

(提供=トウシル

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