起業を考えている人の中には、ありきたりではないビジネスをしたいという人もいるだろう。自分で頭をひねって斬新なビジネスアイデアを見つけるのも一つの方法だが、既に存在するビジネスを見ることも参考になるはずだ。きっと「こんな商売があったのか」という、自分では思いつかない発見ができる。
M&Aの売り案件の中にも、普段ではなかなかお目にかかれない珍しい案件も見られる。本稿では、小規模案件に強みを持つM&Aプラットフォーム「&Biz(アンドビズ)」の売り情報一覧から、ユニークな案件を紹介する(案件情報は2018年9月上旬現在)。
実際に売りに出されているM&A案件
・ドローン撮影も可能な映像制作会社
東京都のある映像制作会社は希望価格250万円で売りに出されている。映像および動画制作について長年の実績があるのに加え、ドローン撮影、制作演出、ナレーションまで自社のリソースでカバーできる。今後、さらにドローンの性能が向上することで、これまでにない映像を生み出させる可能性もあるだろう。
・バスを改装した移動美容室
兵庫県にある美容室は希望価格648万円で売りに出されている。美容室といっても、普通の美容室ではない。実は中型バスを改装した移動式となっているのだ。内装はレトロなアメリカンなスタイル、外装もエイジング塗装で統一感がある。移動式という強みを活かせば、高齢者施設や大型小売店などを訪問することができる。営業範囲を限らない、可能性の大きな美容室といえるのではないだろうか。
・イビサ島のラーメン店
スペインのイビサ島にあるラーメン店は希望価格1,950万円で売りに出されている。イビサ島といえば、おしゃれなクラブや美しい海が魅力の有名リゾート地だ。慣れない海外ビジネスでも、日本人スタッフの引き継ぎや仕入ルートの確保、ビザの手配など、各種サポートが得られるのはM&Aならではの大きなメリットといえる。ラーメン以外の料理を出す店に転用することも可能だという。
・司法書士事務所
北海道の司法書士事務所は希望価格5,000万円で売りに出されている。同事務所が所在する地域では同業が少ないため、広告宣伝費かけずにクチコミで顧客開拓できるほか、他士業との相互紹介なども期待できる。独占資格系のビジネスで基盤をイチから築くのは並大抵のことではない。M&Aが時間を買う手法であると言われるゆえんはここにある。
柔軟な発想でM&Aの可能性はさらに広がる
&Biz(アンドビズ)の売り案件には、司法書士に限らず、さまざまな資格に関連する会社や店舗が含まれている。自身の保有資格やこれまでの勤務経験と能力にマッチした案件を見つけるのも賢いやり方といえるだろう。
またイビサ島の例でも触れたように、ラーメン店を買収した後に他の料理をメインとした店舗に転用するという方法も考えられる。そのほか、高齢者の顧客層を持つビジネスを買収して、自社の既存事業を高齢者向けに展開していくという方法もある。
売り案件は必ずしもそのままの形で継続しなければならない訳ではない。既存の製品やサービスを他のターゲットにも広げるような水平展開、一つのビジネス領域の中で川上や川下の商流を強化する垂直展開、あるいはそれらとは違った方法で自社とのシナジー効果を生み出していけるのがM&Aが持つ大きな魅力だ。
売り案件を探す際にはなるべく視野を広く持ちたい。柔軟な発想を持つことができればM&Aの可能性はさらに広がりを持つはずだ。珍しいビジネスのヒントやアイデアを得るために、既存の売り案件を眺めてみるのも面白いのではないだろうか。