サラリーマンに小さな会社を買うことを勧める新書がベストセラーとなっている。意外と思われる人もいるかもしれないが、個人でも会社を買うことはできる。だが当然、個人による買収でも税金がかかる。本稿では、個人が会社の売買を行う際、どのような税金がかかるのかについて説明する。

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(写真=PIXTA)

会社を買ったときにかかる税金

・譲渡契約書の印紙税 受領額の記載があれば必要だが……
会社の購入とは、株式を購入して会社の支配権もしくは経営権を持つことだ。通常、売り手と買い手との間で株式譲渡契約書を取り交わすが、これには収入印紙を貼る(印紙税を支払う)ことになるのだろうか。

これについては、仮に契約書の中に「譲渡代金○○円を受け取りました」というような記載があれば、印紙税が必要となる可能性もある。それは印紙税法にいう17号文書のうち「売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書」に該当するかもしれないからだ。だが通常、そのような文言は契約書に入らないため、印紙税がかかる文書には該当しない。

・消費税 有価証券は非課税取引なので……
店で買い物をするときには消費税を支払うように、株式を買うときには消費税がかかるのだろうか。これに関しては、株式などの有価証券の譲渡は非課税取引とされているため、消費税はかからない。

・登録免許税 役員が代われば登記が必要なので……
会社の購入によって株主が交代しても、それだけでは登記などは必要ない。しかし、購入者が代表取締役になるなど、役員変更を行う際には役員変更登記が必要となる。役員変更登記には1件当たり3万円(資本金1億円以下の会社については1万円)の登録免許税がかかる。

ただし、この登録免許税は会社が負担するものなので、会社購入時に個人に税金はかからないということだ。

会社を売ったときにかかる税金

会社を売ったときにかかる税金としては、株式を譲渡した場合、売主である個人に譲渡所得が発生する。この譲渡所得は所得税と住民税の対象となる。

譲渡所得は、株式にかかる総収入金額(譲渡価額)から必要経費(取得費や手数料)を差し引いた額だ。このように計算された譲渡所得に対して20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金が課される。大まかにいうと、株式の売却益に対して約2割の税金がかかるという計算だ。

なお、株式を売ったときの譲渡所得は事業所得や不動産所得などの他の所得とは損益通算できない決まりになっている。たとえば、株式の譲渡所得で黒字が出たときに他の所得の赤字と相殺したり、逆に株式の譲渡所得で赤字が出たときに他の所得の黒字と相殺したりして税金を安くすることはできない。

なお株式譲渡契約書が印紙税法の非課税文書であることや有価証券の譲渡が消費税法の非課税取引であることは、株式を売った場合も同様である。

株式を売却したら確定申告が必要になる

以上のように、個人が株式を売り買するときに考慮しておくべき税金は、株式売却時の譲渡所得にかかる所得税と住民税といえる。

譲渡所得には申告分離課税という方式が適用される。申告分離課税の「分離」は、先ほど述べたように他の所得とは損益通算できないことを意味する。一方で「申告」は自分で確定申告をしなければならないことを意味する。

不動産取得税や固定資産税のように、自治体から納付書が送られてくる賦課課税方式とは異なる。もし株式を売却するなら、翌年の3月15日までには確定申告をして税金を納めなければならないことに注意しよう。