起業家には「自分を信じて前進あるのみ」という心構えが不可欠だ。しかし世間一般の起業家が何を考え、何歳で起業し、また何に不安を感じたのかといったデータも、ビジネスの成功への一助となるだろう。そこで本稿では、起業にまつわるさまざまなデータを紹介してみたい。
廃業率が低い日本――だが開業率も低い……
日本は欧米各国と比べ開廃業率が大幅に低い。過去10年において、欧米各国における開業率および廃業率は、ともに10%前後の国が多いのに対して、日本では2015年度の開業率が5.2%、廃業率が3.8%と低水準であることが分かる(厚生労働省「雇用保険事業年報」による)。
開業率に比べて廃業率が低いことは好ましいが、日本は開業率と廃業率ともに低くなっているといえる。これは経済的な閉塞感に覆われた現状を表しているといえるのではないだろうか。
なぜ企業したのか?――前向きな起業家たちのマインド
開業率が他国と比較すると低いとはいえ、日本にも起業を志す人は存在している。起業を志した理由を調査した「中小企業白書」のアンケート結果によると、上位に入った回答は①「自分の裁量で仕事がしたいから」、②「年齢に関係なく働くことができるから」、③「仕事を通じて自己実現を図るため」など、前向きなものが多い。
質問に対しては、「就職先がないため」や「職場の賃金が不満だったため」など後ろ向きな回答の選択肢も用意されていたものの、そのような回答をした人は少数だった。
女性の起業家はどれくらい?――彼女が起業した理由
起業家の性別構成推移データを見ると、80年代から90年代にかけて起業家に占める女性の割合は40%程度であったが、2000年代から2010年代には30%強といった割合になっている(総務省「就業構造基本調査」をもとに分析)。
起業希望者に占める女性の割合は増加傾向にあるものの、実際に起業家としてスタートを切る女性の割合はそれほど増えていない。これは家庭との両立が難しいこと、社会経験が不足しているといったハードルがあるためと考えられている。
上述した起業を志した理由の質問に対して女性の回答として多かったのは、①「性別に関係なく働くことができるから」、②「趣味や特技を活かすため」、③「家族や子育て、介護をしながら働けるため」などが多くなっている。
何歳ごろに起業した?――若いとは限らない
起業家の年齢構成の推移をみて特徴的なのは、60歳以上の割合が年を追うごとに高まっていることだ。それも82年で8.1%、92年で14.2%、02年で24.6%、12年で32.4%と、目覚ましい増加である。これは「就業構造基本調査」をもとに分析したデータから分かっている。
日本の高齢化が進んでいる影響もあるだろうが、この年齢層は資金も社会経験も豊富であることが多いため、起業家になるポテンシャルを秘めているといえる。60歳以上の起業家が始める事業内容としては、特に実務経験を活かした経営コンサルティングや営業代行などのサービス業の割合が多いようだ。
起業前に不安を取り除くための十分な手立てを
起業に際して感じる不安に、「収入の減少、生活の不安定化」や「事業に失敗した時の負債の返済(借入金の返済、個人保証)」と回答する割合が高かった。これは中小企業庁が委託して行った2013年の「日本の起業環境及び潜在的起業家に関する調査」による。
起業家にとって一番の悩みどころは生活に関する不安、お金に関する不安のようだ。中小企業庁による「経営者保証に関するガイドライン」などの取り組みはあるものの、日本ではまだまだ起業家に対する支援が少なく、起業に失敗した場合のリスクも大きい。
起業に際しては、資金計画の策定や、事業が軌道に乗るまで赤字でも生活していけるだけの十分な資金確保など、入念な事前準備が必須といえる。