海外不動産投資に関心のある医師の多くがアジアや北米を検討していることでしょう。実は欧州には、低金利、おおむね安定した経済成長、事業成長の活発化など不動産市場にプラスとなる要素を秘めた国があります。ただし英国のBrexitなど予断を許さない状況もあります。不動産投資先としての欧州の価値や将来性を検証してみましょう。

欧州4都市が「国際不動産都市トップ10」入り

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(写真=koya979/Shutterstock.com)

不動産外国人投資家協会(AFIRE)が2018年1月に公表した調査結果によると、海外投資家が最も関心を示している不動産投資先のトップに輝いたロンドンを筆頭に、ベルリン(3位)やフランクフルト(5位)、パリ(6位)がトップ10入りしています。

国際コンサルティング企業プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は調査報告書「不動産の新興動向・2018年欧州版」の中で、「欧州の不動産産業は依然として警戒が必要だが、ポジティブさを感じる」との見解を示しています。

ユーロ圏におけるマクロ経済の見通しが明るさを増し、不動産投資が堅調さを維持していることから、こうした期待感が欧州の不動産産業全体に広がっているようです。ロンドンにおける高級住宅地の値崩れなど、プライム不動産の価値に対する懸念も根強いものの、調査に協力した818人の不動産専門家の半数は「2018年は利益及び雇用が伸びる」と回答しました。

欧州の某投資マネージャーは、欧州市場の成長が堅調な伸びを示していることを挙げ、「ピークに達した感が強い米国と比べ、欧州はまだまだ成長の余地がある」と期待を寄せています。

英国不動産の今後の行方は?

Brexitによる経済的影響が懸念されるロンドンは、人気の不動産投資先としてトップの座を今後も維持できるのでしょうか。

AFIREの調査ではニューヨークを抑え首位に就いたことから、「Brexitに対する市場の懸念が和らいだ」との見方もありますが、この調査は2017年の市場を反映したもので、2018年以降の影響はより深刻なものになるのではないかと推測されます。

2016年6月のEU離脱決定以後、ポンドが下落から回復していない為、英国不動産は海外投資家にとって投資の機会である反面、Brexitの不透明さが英国経済の未来に暗い影を落としている感は否めません。

同調査の「不動産投資が最も安定している国」と「資本増強の機会に恵まれた国」の欧州トップはそれぞれドイツとスペインで、英国は4位、5位という結果でした。

またPwCの調査では、81%の回答者が「2018年、英国不動産への投資が減る」、78%が「価値が下がる」と悲観的です。しかし大幅な減少を予想しているのはごく一部だけという点は希望材料でしょう。「英国不動産の低迷はあくまで短期的なもの」との意見もあります。

欧州トップはドイツ?4都市がトップ10入り

既に欧州の不動産投資市場には変化の兆しが見えます。英国の不動産市場とは対照的に、他の欧州圏ではBrexitによるポジティブな影響が広がっており、ドイツやフランスなどが英国を追い上げています。特にドイツの勢いは凄まじく、欧州における「資本の安全な避難場所」としての地位を着実に強化しています。

PwCが実施した「2018年投資・開発が活発化している都市ランキング」に、ベルリン(1位)、フランクフルト(2位)、ミュンヘン(4位)、ハンブルク(6位)と4都市がトップ10入りしました。それだけ投資や開発が活発で、将来性が期待出来るということです。この4都市は、過去1年間で家賃や資本価値の変動が最も大きかった都市でもあり、共に4%前後の増加を記録しています。

価格高騰傾向にあるとは言え、ドイツの不動産はロンドンやニューヨーク、東京といった他の主要国際都市に比べるとまだまだ手が出しやすい価格でしょう。首都ベルリンで経済発展と人口増加が続く一方、フランクフルトを含む他の都市の勢いが拡大する見込みです。

Brexit後、金融都市フランクフルトには、スタンダードチャータード銀行や野村ホールディングスが新たな拠点を築くことが決定しています。そのため「Brexitの勝者はフランクフルト」と見なす専門家もいます。

マクロン政権誕生で急成長が期待されるフランス

首都パリは「2018年投資・開発が活発化している都市ランキング」 では14位と、トップ10入りを逃しているものの、過去1年間の家賃・資本価値は各3.81%上がっており、変動率はドイツ4大都市とルクセンブルクに次ぐ6位です。フランスの跳躍は、国内の経済改革を精力的に推し進める「マクロン政権の誕生によるところが大きい」と専門家は見ています。

マクロン大統領はBrexitを機に移転先を物色する国外企業の誘致に注力しているほか、「グランド・パリス」と呼ばれる都市開発計画を通し、輸送やデジタルインフラへの投資を拡大しています。ただし、パリの不動産価格が非常に高いことが一部の投資家を躊躇させているようです。

その他、コペンハーゲン(2位)、マドリッド(5位)、ダブリン(7位)、ストックホルム(8位)、ルクセンブルク(9位)、アムステルダム(10位)が、ロンドンに代わる(あるいは並ぶ)都市として頭角を現しています。

距離は遠いものの欧州には不動産投資の対象として魅力的な国・地域・都市があるようです。北米やアジアとともに、欧州も検討の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。(アレン琴子、英国在住のフリーライター / d.folio

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