東京は渋谷、道玄坂のブックカフェ「ブックラボトーキョー」を舞台に、読書を通じて人と人、人と知をつなげる朝活コミュニティ「朝渋」が静かな盛り上がりを見せています。
その「朝渋」に、freee株式会社の佐々木大輔CEOが登壇。自身のキャリアやfreeeのミッション、著書『3か月の使い方で人生は変わる』の内容について語りました。
(本記事は2018年9月12日に行われたトークイベント「著者と語る朝渋」における基調講演の内容をダイジェスト化したものです)
インターン時代、自分がつくった作業自動化プログラムが会社を変えた
トップシェアを誇る「クラウド会計ソフト freee」を開発し、創業したfreee株式会社を6年で社員500人の規模に成長させた佐々木さん。早朝から集まった約100人のビジネスパーソンを前に話しはじめたのは、学生時代インターンとして働いたデータ分析会社での経験でした。この経験はその後のキャリアに大きな影響を与えたそうです。
佐々木大輔氏「学生時代にデータサイエンスの勉強をしていましたが、勉強だけじゃ面白くない、実際のデータ分析の仕事をしたいと思って、それができる会社をさがして、インターンとして働き始めました。
ところがやってみると、当時のデータ分析の仕事はまだ『データをきれいにすること』が重要で、その膨大な作業が人力で行われていたんですね。アルバイトさんも大勢いて。もちろん、学生インターンの僕もひたすらそればかりやらされてすっかりイヤになり、『もうやめます。こんなことやってられません』と社長に訴えたら、『いやそうじゃなくて、そんなにイヤな仕事なら自動化するとか考えたらどうだ』と返されて。
それで、その日の帰りに本屋に寄ってエクセルのマクロの本を立ち読みしていたら、『あの仕事自動化できるんじゃないかな?』と思いついて、勉強して、ちょっとしたプログラムをつくり導入してみたんです。
すると、考えていた以上に、社内の人たちの働き方が大きく変わったんですね。データをきれいにする仕事に追われていた人が、プロジェクト管理をしたりもっと難しい分析の仕事をこなすようになった。こんなことを経験して、業務を自動化するというのは世の中にとってすごくインパクトのあることなんじゃないか、と感じました」
グーグルで日本の中小企業の現状に危機感を覚える
佐々木さんは大学卒業後、大手広告代理店などを経て友人が始めたALBERTというスタートアップにCFOとして参画しますが、ここで経理などバックオフィス業務の手作業の多さ、煩雑さに愕然とします。再び「自動化」「効率化」の必要性を強く感じましたが、当時は大手企業が使うような大掛かりなシステムを入れないと解決できない問題でした。
その後佐々木さんはグーグルに移ります。日本、そしてアジアの中小企業向けのマーケティング責任者となり成果をあげますが、そのとき感じたのは日本の中小企業のテクノロジー化の遅れでした。
「日本の中小企業はITやインターネットの活用が遅れていて、グーグルのような会社から見るとマーケットとしてそれほど魅力的じゃなかった。このままでは、新しいテクノロジーが日本に入って来なくなってしまうんじゃないかと、非常に強い危機感を覚えましたね。
一方で、たとえば京都で『竹』を扱う老舗の建材屋さんが、グーグルに広告を出すことで世界中のお客さんにアクセスできるように、新しいテクノロジーが中小企業を変えることも実感していました。
こんなことから『日本の中小企業のテクノロジー化を進める』という自分がなすべきことが浮かび、ALBERTでの経験とあわせて『クラウドサービスを利用した自動会計ソフト』をつくろうと、メンバーを集めて開発を始めたわけです」