相続税の申告は、税理士に依頼しなくても自分だけですることができます。相続税申告を自分だけでする場合は、国税庁ホームページや税務署にあるパンフレット、ネット上の情報、相続税について解説した本などが参考になります。

しかし、税務署のパンフレットはあらゆる事例に対応するために情報が詳しく記載されていて、不要な部分もたくさんあります。ネット上の情報は玉石混交で適切な情報を得られない場合もあります。結局、相続税について解説した本を参考にする場合が多いのではないでしょうか。一般の納税者に向けて書かれた本であれば、2,000円以内で手に入れることができます。

この記事では、相続税専門の税理士が相続税申告に役立つ本をご紹介します。最新の制度に対応できるよう、できるだけ新しいものを選んでいます。相続に関する手続き全般を知りたいときに役立つ本もあわせてご紹介します。ぜひ参考にしてください。

1.相続税について理解したいときに役立つ本

相続税申告
(画像=税理士が教える相続税の知識)

まず、相続税とはどのような税金か全体像を理解したいときに役立つ本を2冊ご紹介します。どちらの本も、初めて相続にかかわる人でもわかるように工夫されています。

1-1.「図解 いちばん親切な相続税の本 18-19年版」

図解 いちばん親切な相続税の本 18-19年版」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書はある家族で突然起こった相続を例に、身近な人が亡くなったときの遺産相続の考え方と相続税の申告方法を解説しています。

家族が亡くなってから相続税を申告するまでの流れと、次に残された配偶者が亡くなるときの二次相続の対策について、連続したストーリーのマンガで理解できるようになっています。マンガのあとには詳しい解説があり、一般家庭の相続で起こりそうな問題はおおむねカバーしています。

なお、本書では相続税の申告は税理士に依頼することを前提に解説しています(マンガのストーリーも税理士に依頼する設定になっています)。自分で申告するときの申告書の書き方については、巻末でごく簡単に触れている程度です。

1-2.「マンガでわかる! 相続税のすべて ’18~’19年版」

マンガでわかる!相続税のすべて ’18~’19年版」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書では、相続税の基本的な考え方と財産評価の方法、税額計算の方法、申告書の書き方について解説しています。書名は「マンガでわかる!」となっていますが、「図解 いちばん親切な相続税の本」のように連続したストーリーのマンガではなく、4コママンガと図解、書類の記載例などで構成しています。

生前贈与も含めた節税対策や身近な人が亡くなったときの手続きにもページを割いていて、生前に対策を立てるときや実際に相続が起きたときにも役立つ一冊です。

2.自分で相続税を申告するときに役立つ本

続いて、自分で相続税を申告するときに役立つ本を3冊ご紹介します。相続税の申告では申告書の書き方よりも財産を適正に評価することのほうが重要です。ここでご紹介する本も財産評価に多くのページを割いています。

2-1.「自分でできる相続税申告」

自分でできる相続税申告」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書は申告書の書き方だけでなく、相続税の対象になる財産を把握して価値を正しく評価する方法についても詳しく解説しています。戸籍の確認や財産評価に必要な資料は入手先が複数の窓口にわたりますが、これらの資料をもれなく集めるための解説も充実しています。

巻頭にはケースごとに相続税申告の難易度を評価するチェックシートがあります。遺産に自宅以外の土地がある、家族名義の財産がある、財産が海外にあるといった場合は、早めに税理士に相談するよう勧めています。

2-2.「相続税の申告が自分でできる本 2017-2018 相続 対応版」

相続税の申告が自分でできる本 2017-2018 相続 対応版」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書は、相続と相続税に関する基礎知識や財産評価の考え方をQ&A形式で解説しています。続いて、設例をもとに財産評価の計算と申告書の記入方法を例示しています。

巻頭には「自分で相続税の申告をすることが困難なケース」を掲げています。遺産に非上場会社の株式や山林がある場合のほか、亡くなった人が農業や事業を営んでいた場合などでは、税理士に依頼するよう勧めています。

2-3.「相続税は過払いが8割」

相続税は過払いが8割」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書では財産評価のうち、特に土地の評価を間違えて相続税を払い過ぎてしまう危険性について解説しています。

相続税の過払いは、自分で申告する場合だけでなく税理士に依頼した場合にも起こってしまいます。普段相続税を扱わない税理士であれば、財産評価を間違えることもあるからです。

これから相続税の申告をする人には、相続税の払い過ぎを避けるために一読をおすすめします。すでに相続税を申告した人でも、5年以内であれば過払いの相続税を取り戻せる可能性があります。心当たりのある人はぜひ読んでおきたい一冊です。

3.生前の相続税対策に役立つ本

相続税は多額の遺産に高い税率が課されるため、払いきれないほどの金額になることも珍しくありません。相続税の負担を少なくするためには生前の対策がカギを握ります。この章では、生前の相続税対策に役立つ本を1冊ご紹介します。

3-1.「わかりやすい相続税・贈与税と相続対策 ’18~’19年版」

わかりやすい相続税・贈与税と相続対策 ’18~’19年版」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書では、今ある財産にどれぐらい相続税がかかるかを把握したうえで、相続税を抑えて家族に財産を残すための対策を解説しています。具体的には、生前贈与、生命保険・不動産の活用、養子縁組などを紹介しています。

遺産相続の手続きや遺産分割、相続税の申告に関する解説もあり、相続が起きたあとでも本書を活用できます。

4.相続に関する手続き全般を知りたいときに役立つ本

身近な人が亡くなった場合は、死亡届の提出や不動産の名義変更など、相続税の申告以外にもさまざまな手続きが必要です。これらの手続きはどこか1か所に届け出れば済むものではなく、死亡届は市区町村役場、不動産の名義変更は法務局といったように窓口が分かれています。

自分にはどの手続きが必要かをもれなくチェックするためには、相続手続きについて書かれた本を参考にするとよいでしょう。この章では、相続に関する手続き全般について解説している本を2冊ご紹介します。

4-1.「身近な人が亡くなった後の手続のすべて」

身近な人が亡くなった後の手続のすべて」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書は遺産相続と相続税申告のほか、死亡届など戸籍関係の手続きや遺族年金など年金関係の手続きについても詳しく解説しています。それぞれの手続きについて、全員に必要なのか該当する人だけが必要なのかを明記していて、自分に必要な手続きが簡単に確認できます。届け出書類のサンプルが豊富で、どこに何を書けばよいかも一目でわかります。

遺産相続や相続税に関する手続きについては、半分以上のページを割いて詳しく解説しています。生前対策についての解説もあり、身近な人が亡くなる前でも役立つ一冊です。

4-2.「これ一冊で安心 相続の諸手続き・届出・税金のすべて18-19年版」

これ一冊で安心相続の諸手続き・届出・税金のすべて18-19年版」(Amazonの書籍ページにジャンプします)

本書は、相続に関する手続きや届け出、相続税の申告、遺言や節税対策について詳しく解説しています。誰が法定相続人にあたるかの判定フローチャートや、相続税が課税されるかどうかのチェックシートで、遺産相続に関する疑問や心配が解決できるようになっています。

巻末には書き込んで使える「相続財産整理ノート」があります。身近な人が亡くなったときは、財産がどれぐらいあるかを調べるだけで時間がかかってしまいます。生前に「相続財産整理ノート」に書きこんでおけば、残された人がスムーズに相続手続きをすることができます。

5.本を参考に自分で相続税を申告するときの注意点

本を参考にすればコストをかけずに自分だけで相続税を申告することができますが、税額計算を間違えるリスクもあります。本を参考に自分で相続税を申告するときの注意点は主に次の3つです。

  • 税制改正に対応できない場合がある
  • 特殊なケースに対応しづらい
  • 本に書いてあるとおりに申告書を書いても間違える

5-1.税制改正に対応できない場合がある

相続税を申告するときは、最新の税制改正の内容を知っておかなければなりません。数年前の本では、税制改正に対応できず税額計算を間違えてしまう恐れがあります。

この記事でご紹介している本は、いずれも掲載時点での最新版です。多くの場合は毎年新しい版が出されるため、本を買うときは最新版であることを必ず確認しましょう。

5-2.特殊なケースに対応しづらい

相続税申告の本では、一般的なケースについて財産評価や申告の方法が解説されています。

遺産の内容は人それぞれで、評価が難しい土地、山林、書画骨董が含まれることもあります。亡くなった人が事業を営んでいた場合は事業用資産や非上場株式の評価も必要です。このような特殊なケースに当てはまる場合は、相続税専門の税理士に相談するようおすすめします。

5-3.本に書いてあるとおりに申告書を書いても間違える

本に書いてあるとおりに自分で申告書を書いたとしても、相続税の専門家でない以上、財産評価と税額計算を間違える可能性はゼロにはなりません。困ったことに、自分ではこうした間違いに気づくことはできないものです。

税理士が相続税の申告に関与していない場合は申告内容が誤っていることが多いため、税務調査が実施される可能性が高くなります。税務調査では高い確率で申告漏れを指摘され、税金を追徴されることになります。

一方、申告を間違えて税金を納め過ぎる場合もあります。この場合は税務署から連絡されることがないため、知らない間に損をすることになってしまいます。

6.まとめ

ここまで、相続税を申告するときに役立つ本をご紹介してきました。これらの本を参考にすれば、自分だけで相続税を申告することができます。

ただし、自分だけで申告することをおすすめできるのは、遺産が現金預金や自宅だけといったようにシンプルな場合に限られます。自宅以外の土地がある場合や農業・事業を営んでいたなど複雑なケースでは、自分で申告することは難しくなります。申告書を書くことができても、財産評価の誤りで税金を追徴されることになりかねません。

自分だけで申告することが難しい場合は、早めに相続税申告を専門にした税理士に相談することをおすすめします。

(提供:税理士が教える相続税の知識