株価が上がったら売るとか、下がったから売ると考えているうちは「なんとなく売買」のレベル

株価急落,トウシル
(画像=トウシル)

執筆時点(2018年10月13日)、株価が大きく下がって話題になっています。米国のNYダウは800ドル、日経平均株価は1,000円を一気に下げたということで、久しぶりの急落です。なかばパニックになっている人もいるかもしれません。

とはいえ、ここで焦っているのは投資経験が浅い人に違いありません。10年も投資をしていればこれくらいの騰落は何度も経験していますし、今まで得てきた利益も含めて投資の判断ができるからです。

しかし、本連載のテーマである「なんとなく投資からの卒業」を考えたとき、むしろ取り上げてみたいのは「株や投資信託を売るのに、株価は関係ない」というアイデア、発想法です。

もし、意味が分からないと思ったら、ちょっとコラムを読み進めてみてください。あなたの投資スタンスを広げるヒントになるかもしれません。

売ったあと今より上がったら? 納得のいく判断ができるか

まず、「儲かっていて売った場合」「元本割れして売った場合」「一時的に下がったので急いで売った場合」について考えてみてほしいのは、「売ったあと、今より値上がりしたらどう思うか?」ということです。

焦って売却ボタンを押す前に、一度考えてみて欲しいと思います。そして「自分には今急いで売る必要があるのか」ということを合わせて考えてみてほしいのです。

そもそも、今売って現金を手にする必要がない人が、焦って売る場合には、「デイトレードなど投資スパンをあまりにも短期に設定している」「信用取引などレバレッジをかけているので損失が投資額以上にふくらむ恐れがある」「あなたの財産全体に占める投資ウエートが高すぎる」など、株価以外のところに原因があったりします。

そしてそれらは無理をした投資方針を設定したことによるしわ寄せが生じたということです。もともとリスク資産の投資にはこれくらいの上下動はいつでもあり得るものですし、それを理解せずに過剰な投資資金を突っ込んでいたとしたら、むしろあなたの投資スタイルがやりすぎだったといえます。これが「株価が売る理由ではない」最初のポイントです。

「売る理由」はマーケットより「心の中」に求めたほうがいい

それに、売る理由は株価に求めない方が実は合理的だったりするのです。売る理由を株価に求めるというのは合理的なようで実は非合理的で、恐怖心や利益を確定したいという欲望に左右されがちです。

むしろ売る理由は、自分の胸に手を当てて自分の心の中に求める方法を覚えたほうがいいと思います。

同じ売るにしても「株価が1000円下がったからヤバいので」ではなく「自分の投資経験から、その下落が明日以降も続くことに耐えられそうにない」と考えるほうが個人投資家の売り方としてはいいでしょう。自分のリスク許容度を判断材料にしているからです。

「自分はそろそろリタイア年齢に近づいているので、ここまでため込んだ含み益をもう手放すわけにはいかない」というのも株価よりも自分自身の資金ニーズにともなう行動で、よっぽど合理的な判断です。

株価が明日戻るか、明日も下がり続けるのか、明日は今日よりも大きく下がるのか、下がるけれども下げ幅は縮小するのか、最終的には明日の市場が終わらなければわかりません。

しかし、「自分自身」のことはあなたが一番分かっているはずです。それこそ「いやー、儲けた。もうこの利益は全部自分のものにしておきたい」が売る理由としてもOKです。自分の中に理由をみつけています。ただの欲望かもしれませんがそれをきちんと認めることが大事なのです。(そうはいっても、マーケットから全額降りてしまうことはおすすめしませんが)

リバランスも、自分の中に売買理由を求めているといえる

ところで、リバランスは自分の中に理由を求めているでしょうか。株価に理由を求めているでしょうか。

一見すると政策アセットミックス(目標とするポートフォリオ)と現実のポートフォリオの乖離を調整するわけですから、株価に理由を求めているように思えます。

しかし、リバランスの見方を変えれば、もともとの目標のポートフォリオは「自分が取り得るリスクに見合った資産配分」です。そして「自分が取り得るリスクのポジションに戻す」ということがリバランスのテーマです。

だとすれば、取り過ぎたリスクや取らなさすぎているリスクを、リバランスにより調整していることになり、判断の根っこは株価よりも自分の中にある、といえます。

問題となるのは、むしろ現状是認(げんじょうぜにん)のような形でリバランスルールを破ることです。こちらの場合「今株価も上がっているし、リスク資産の保有ウエートは計画より高くしてもかまわない」とか「今は下げ相場なので、リバランスをしてリスク資産を組み入れすることは留保しよう」という判断をしていることになり、むしろ目の前の株価に理由を求めている売買行動になってしまいます。

それに、日経平均株価1,000円くらいの下げはリバランスを急ぐ必要がないかもしれません。リバランスの実行タイミングとして、あなたの投資ウエートが5%以上ずれた場合に実行するとします。仮に300万円の資金のうち50%にあたる150万円を投資していて調整するとすれば、18%の下げが必要です(150万円が123万円に下がり、資産全体が273万円になると投資割合が45%相当にダウンする)。リバランスの観点でも、まだ時期をみてもいいでしょう。

――いろんなことを考えながら「もう一日、様子を見てみようか」というのも、即決で売却するより貴重な投資経験です。そして「大きく下がった経験もしたけれど、ホールドして株価が戻るまで持ちきった」というのも、損切り以上に貴重な投資経験になります。

別にこの世の終わりが来たわけではありません。下げ相場とも上手につきあってみてください。

山崎 俊輔(やまさき しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー
1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒業。企業年金研究所、FP総研を経て独立。企業年金連合会調査役として確定拠出年金の調査、制度改善要望等を担当。老後の年金や退職金制度も考慮したトータルな資産運用プランを提案。1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。

(提供=トウシル

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