1.相場は動いている

長期投資,トウシル
(画像=トウシル)

皆さんは、相場と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?株式相場、為替相場、債券相場、金相場、商品相場、ゴルフ会員権相場…など様々な相場があります。

取り扱うものは異なりますが、共通点は、取引される物の価格を表したものであることです。取引の価格は、時々刻々と変化します。価格がなぜ動くかというと、それを買いたい人と売りたい人のバランス(需要と供給)が常に変化しているからです。

今回は、代表例として「株式相場」について考えていきましょう。

株式相場の特徴は、

・買いたい人が多いとき、株式相場は上がる
・売りたい人が多いときは、株式相場は下がる

です。株式相場は、経済指標の発表、個別企業のニュース、アナリストの意見など、様々な材料(要因)が出る度に上がったり下がったりしますが、根本的には、それを聞いた人々の間で、株式を買いたいと思う人と売りたいと思う人のどちらが多いかで、価格は動きます。ニュースそのものではなく、みんながどう思うかで、価格の動きが変わるのです。

ただし、厳密には、単純に買いたい人と売りたい人のどちらが多いかで、株式相場の動きは決まりません。ある株式の銘柄を売買するときに、どれだけの株数を買いたいか、売りたいかは、人それぞれ違うからです。世の中には、大金持ちの人もいれば、そうでいない人もいます。どれだけ、株式の売買にお金を使うかは、人それぞれです。

そのため、株式相場の動きは、株式を買いたい人が買う株数と、株式を売りたい人が売る株数のどちらが多いかで動くということになります。株式を買う人の数が圧倒的に多くても、数では劣勢の売る人の中に、とてつもないお金持ちがいて、巨額の株数を売りに来たら、株式相場は下がってしまいます。

この話は、株式相場に限りません。あらゆるもので同じように、買いの数量が多いか、売りの数量が多いかで相場は動いています。

2.短いスパンで相場を当てるのはムズかしい

次に、株式相場が動くなかで、投資することを考えてみましょう。

何度も書きますが、買いの数量が多いか、売りの数量が多いかで、株式相場は動きます。 では、どれだけの人が買い、または売りと判断するのか、またどれだけの株数の注文を出すのか、予測することはできるでしょうか。これは、簡単なことではありません。

そもそも自分自身がどう思うかではなく、人々がどう動くかを予想するだけでも難しいうえに、たった一人の大金持ちが巨大な注文を出せば、世の中の大半の人々が買いだと思っていても、売り優勢に変わり、株式相場は下落してしまうからです。

その上、このような予想を連続してかなりの勝率で当て続けることは、ほとんど神業といってもいい話です。こういったことを踏まえると、株式市場で出てくる様々な材料(ニュース等)を受けて、その度に短期的な売買をして儲け続けることはほとんど不可能だと思いませんか。

では、買いの数量が多いか、売りの数量が多いか、予測することは絶対に不可能でしょうか。

いえ、実は不可能ではありません。言っていることが反対だと言われると思いますが、時間軸を変えれば、可能です。短期的なひとつひとつの材料を受け、買いが勝るか、売りが勝るかの予想を的中させることは困難ですが、長期的な視点であれば、予想を当てることは不可能ではないのです。

株価は企業の利益を反映して動くものです。企業の利益が予想を下回れば、株価は下がります。株式市場全体は、個別企業の株価の集合体ですので、株式相場は、経済全体を反映して動くと言えます。概ねの話ですが、景気が良ければ、経済の成長率が高くなり、株式相場は上昇し、景気が悪ければ、経済成長率が低くなり、株式相場は下落します。経済全体は、成長率が時にはマイナスになる局面もありますが、長期的に見れば、成長をしています。そのため、株式相場は、経済の成長拡大に連動するように、長期的は上昇し続けてきたのです。

ですから、株式へ投資し、利益を得たいのであれば、長期的に経済成長の波に乗り、株式相場の上昇をじっくり待つのが得策です。たとえば、長期的に世界経済が成長拡大することについて異論を持つ人はまずおらず、基本的に長期であれば、株式相場は上昇するものということが、ほとんどすべての人々に共有されているからです。

3.いつが買い時か

最後にいつが買い時か、考えてみましょう。

まず短期的な投資では、予想を当て続けることはほとんど不可能なので、買い時を考えるのは難しいですが、リーマンショックのときのように極端に激しい下落が発生したときは、株価は売られ過ぎることが多いため、買い時と言えます。ただし、そのような激しい下落は、せいぜい10年に1度といった頻度でしか起きませんので、買い時として待つのは賢い選択とは言えません。

次に長期的な投資を考えてみましょう。長期的な投資は、前述のとおり、長期的に成長拡大する経済の波に乗った投資ですので、長い目で見れば、いつ投資してもよいという答えになります。ただリターンをできる限り、大きくしたいのであれば、株式相場が低迷しているときが投資の好機です。景気のサイクルで言えば、景気が悪いときほど、株価は低迷していることが多いので、チャンスと言えるでしょう。

しかし、景気の悪いときは、会社の業績は悪化し個人のボーナスも減り、投資をしようという気分にはなかなかなれないものです。また株式相場は長期的に上昇するとしても、上昇するまでにかなりの時間がかかるケースもあります。上昇を待ちきれず、投資している株式の価格が大きく下がり、評価損が大きくなれば、精神的に耐え切れず、売却してしまうことも珍しくありません。

そういった事態を避けるには、投資するタイミングを分散して、毎回同じ金額で積立投資をすることが解決策になります。投資をするとき、株式を購入することになりますが、「購入する株数=投資額(定額)÷株価」であるため、株価が高いときは、株数を少なく購入し、株価が低いときは、多く購入することになります。これは、なるべく株価が低いときにたくさん株数を買おうとする行為なので、結果的に株式の平均購入単価が低くなります。平均購入単価が低ければ、当たり前ですが、利益が出る確率が高まります。

「いつが買い時か」というのはよくある質問ですが、「いつでも買い時、ただし長期で毎月決まった金額を定期的に投資すること」というのが筆者の回答です。

4.長期投資ってなんだ?

最後にまとめとして、長期投資とは何かを書きます。 長期投資とは、長期的に経済成長の波に乗り、勝つべくして勝つ、儲けるべくして儲ける投資手法のことです。

逆に短期投資とは、儲けるかどうかよりも、儲かるかもしれないワクワク感やスリルを楽しむ投資手法です。投資というより投機といったほうが近いと思います。

お金を増やしたいのなら、長期投資を、スリルを楽しみたいのなら、短期投資(投機)をお勧めします。

大澤 健吾(おおさわ けんご)
楽天証券 投資運用室 室長 チーフ・ストラテジスト
関西学院大学経済学部卒業。大和証券投資信託委託、日興コーディアル・アドバイザーズ(現・日興グローバルラップ)、横浜銀行などで、ファンドや銀行自己資金の運用に従事した後、現職。国際分散投資が専門で、ロボアドバイザー「楽ラップ」の運用責任者を務める。

(提供=トウシル

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