2017/9/12のチェスターNEWSでもお伝えした通り、平成29年をもって現行の広大地評価が廃止され、新たに「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されることになりました。
新評価の方法は既報の通りですが、施行期日が平成30年1月1日からということもあり、新旧の評価額によっては本年中の贈与を検討している方もいらっしゃるかと思います。
今回は、新評価方法施行を前に実際の影響を考える上で必要な事項と留意事項を解説したいと思います。
1.新評価方法と旧評価方法の違い
現行の広大地評価はその評価算式こそ単純でしたが、適用にあたっては定性的要件によるところが多く、納税者と課税庁との間で多くの争いが発生しました。
今回の新評価方法である「地積規模の大きな宅地の評価」では、適用要件が非常に厳密化されたため、適用の可否について悩むことはなくなったと言えるかもしれません。
実際の適用要件及び評価方法については、2017/9/12のチェスターNEWSをご覧いただければと思います。
しかし評価方法の変更に伴い、以前であれば広大地の適用を受けられていた土地が新評価方法では適用対象外となるケースがあります。
具体的なケースとしては下記となります。
①三大都市圏の500㎡未満のミニ開発分譲地
現行の広大地評価では、公共公益的施設用地の負担が必要と認められれば地積が500㎡未満だとしても広大地評価の適用対象でした。
しかし新評価方法では、画一的な地積による判定により適用可否を判断しますので、三大都市圏であれば500㎡未満の土地には適用を受けることはできなくなります。
②基準容積率が400%又は300%未満である土地
現行の広大地評価では、中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものでないことが広大地の適用要件であり、その実務判断は都市部においては容積率が300%未満であることとされていました。
現行の広大地評価における容積率とは、指定容積率と基準容積率のいずれか低い方とされていましたので、仮に指定容積率が300%以上であっても基準容積率が300%未満であれば、広大地の適用を受けることができます(東京都特別区の場合)。
しかし新評価方法における容積率とは、現状では指定容積率のみにより判断するものと思われますから、たとえ基準容積率が400%(東京都特別区は300%)未満であっても適用対象外となる可能性があります。
③中小工場地区にある土地
新評価方法の適用要件では「普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区として定められた地域」にある土地が適用と対象となっています。
これも今までの広大地の適用判定よりも制限をかけた要件となっていますので、今までは広大地の適用を受けることができていた中小工場地区にある土地も新評価方法の適用を受けることができない可能性があります。
2.広大地評価における駆け込み贈与について
上記1.において、現行の広大地と新評価方法で適用の可否が変わってくる土地のご説明をしました。
また計算方式が違うため、現行の広大地評価と新評価の両方とも適用対象となる土地でも、その評価額はおおむね新評価方法の方が高くなることが予想されます。
このため広大地を所有する方にとっては現行広大地評価ができる平成29年中に贈与を検討されることをお勧めします。
一般的に制度変更の過渡期においては、調査等において旧評価については寛容になると期待されることがあります。しかし課税庁内部においては、現状そういった動きは認められていないようです。
したがって、現行の広大地評価の適用を受けるために焦ってしっかりとした検討を行わずに駆け込み贈与を行うことは避けるべきでしょう。
従来の広大地判定と同様に税理士や不動産鑑定士と相談しながら新旧評価方法による評価額を比較していく必要があります。
また調査に備えて、現状で国税庁が公表している質疑応答事例等の適用関係に関する資料はしっかりと保存しておくことをお勧めします。
(提供:チェスターNEWS)