実力のある投資家も口をそろえて言うのが「今年の株式マーケットは難しい」。でも、本格的な下げ相場になったらさらに難しくなります。今のうちに、下げ相場を乗り切る方法を身につけておきましょう。
今はバブル崩壊後最長の長期上昇相場
2018年9~10月にかけての日本株は、まさにジェットコースターのような動きでした。日経平均株価が27年ぶりの高値更新となったと思った矢先に株価が急落して上昇前の水準へ戻ってしまいました。
しかし、今回の日経平均株価の下落をぜひ月足チャートで確かめてください。ほとんど下落していないように見えるほど、小さなものであることが分かると思います。
そして、1989年のバブル崩壊からの日経平均株価の月足チャートをみると、ある事実が分かります。なんと、2012年11月から始まった、6年間に及ぶ株価上昇は、バブル崩壊以降最長を記録しているのです。
次に長いのが、いわゆる「小泉相場」といわれる2003年4月から2007年7月までです。
逆に、2000年4月から2003年4月までは3年間ほぼ下がり続けていますし、バブルピークの1989年12月から1992年8月、1996年6月から1998年10月など、一旦長期的な下げ相場に突入すると、2~3年株価下落が続くと思っていた方がよいでしょう。
アベノミクス相場がスタートしてから株式投資を始めた方はあまりピンと来ないと思いますが、アベノミクス相場による長期上昇は、かなりのレアケースなのです。今後2年、3年と続く長期的な下げ相場になった場合、今以上に利益を得ることが難しくなるどころか、多額の損失を被ってしまう可能性が高まってしまいます。
下げ相場での「買い」は圧倒的に不利
なぜなら極めて単純な話で、買った株が値上がりしにくく、値下がりしやすくなるからです。株式投資は買った値段より高くならなければ利益(値上がり益)を得ることができず、逆に下げ相場で株を持ち続ければ持ち続けるほど、損失を被ってしまいます。
このように、右肩上がりの長期上昇相場がバブル崩壊によって終焉した日本株では、「買い」だけで長期間株式投資を行って成功するのは不可能ではありませんが結構難しいのです。
でも、それは「株価が上がらないと利益が得られない」からであって、「株価が下がっても利益が得られる」手法を使えば、利益を得られる機会は格段に増えます。
その手法として代表的なものが、「個別銘柄を空売りする」「日経平均先物を空売りする」「インバース型のETF(上場投資信託)を買う」という3つです。
手法1:個別銘柄を信用売り(空売り)する
個別銘柄を空売りし、その後株価が値下がりすれば、その差額だけ利益を得ることができます。1,000円で1,000株空売りし、株価が800円まで下がったところで決済すれば、(1,000-800)×1,000=20万円の利益を得ることができます。
もしこの間、空売りをせずに株価下落を眺めているだけでは利益を得ることができません。空売りを使うことで、下落相場で守るのではなく、積極的に利益を獲得しにいくというスタイルを取ることができます。
空売りを含めた信用取引を行うためには、信用取引の口座を開設する必要があります。空売りの注意点などについては、別の機会にお話したいと思いますが、「損切りは厳守」「逆張り(株価上昇途中の空売り実行)は厳禁」の2つは必ず守るようにしてください。
手法2:日経平均株価の先物を空売りする
空売りは、慣れていない方にとっては抵抗を感じることもあるようです。今まで株価上昇による利益を目指していたのが、逆に株価下落で利益を目指すということに対しピンとこないからかもしれません。
そこで、個別銘柄の空売りに抵抗がある方は、日経平均株価の先物を空売りするという方法もあります。
一般的に、個別銘柄よりも日経平均株価の方が値動きはゆるやかです。同じ金額を空売りするのであれば、日経平均先物を空売りする方が、得られるリターンこそ小さくなるものの、損失のリスクも小さく抑えられます。
ただし、今年のように、日経平均株価はあまり値下がりしないのに、多くの個別銘柄は値下がりしてしまう、というような場合は、空売りの効果が見込めないこともあります。
先物取引を行うためには、別途先物・オプション口座を開設する必要がありますので、取引の前にあらかじめ開設を済ませておきましょう。
手法3:インバース型のETFを買う
筆者は、下げ相場で空売りをすることで利益を得るということには抵抗はありませんし、空売りのリスクをよく理解したうえで実行しています。
でも個別銘柄、先物問わず「空売りは怖い」とか「空売りはリスクが高い」と尻込みしてしまう方も少なくないかもしれません。
さらには、空売りをするには信用取引口座の開設が、先物売りをするには先物・オプション口座の開設がそれぞれ必要となります。投資初心者にはハードルが高いことは否めません。
そんな方が代替案として使えるのが、インバース型のETFを買うことです。「インバース型」とは、ETFの対象となっている株価指数(日経平均株価やTOPIXなど)の値動きと逆の動きをするETFのことです。
例えば日経平均株価が10%値下がりすれば、インバース型のETFの価格は逆に10%値上がりするイメージです。
ですから、株価の値下がりによる利益を「売り」ではなく「買う」ことによって得ることができるのです。信用取引口座も先物・オプション口座も不要で、個別銘柄のように買うことができるのがインバース型ETFの特徴です。
なお、中には株価指数のマイナス2倍の値動き(つまり日経平均株価が10%値下がりすれば20%値上がり)をする「ダブル・インバース型」もあります。ただこのタイプは商品設計上、長期的にみると株価指数のマイナス2倍よりも小さいマイナス幅(マイナス1.5倍など)にとどまる傾向があります。ダブル・インバース型は比較的短期間の株価下落を狙うという使い方がよさそうです。
別の回で、それぞれの手法を詳しく見ていきたいと思いますが、これから先もずっと株価上昇が続くと思うのは早計です。
いつ本格的な長期下落相場に移行してもおかしくありません。そうなる前に、株価が下落しても利益を得られるようにするための手法をマスターしておきましょう。
足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。
(提供=トウシル)
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