前日の海外時間では、アルバイラク・トルコ財務相が「自動車や家具など複数分野で減税を行う計画」との公表を突然行いました。これまでの同財務相の方針としては、財政支出を抑える姿勢を示しており、市場も同財務相の方針に同意していた部分がありましたが、突然景気刺激策を打ち出したことを受けて、方針に一貫性がないことへの不信感、そして財政規律を重視する姿勢に対する懐疑的な見方が強まり、トルコリラ円は20.60円付近から20.00円付近まで下落しました。今回の刺激策を推し進める方針は、エルドアン大統領の方針と重なるため、トルコの行く先が再び同大統領の目指す方向と同じになるのではとの思惑は、引き続きトルコリラの上値を重くするかもしれません。
ドル円については、NYダウが460ドル超上昇するなど堅調な推移により、113.30円付近まで続伸したものの、月末のロンドンフィキシング(日本時間1時)に絡んだドル売りにより、112.80円付近まで下落しました。クドロー国家経済会議(NEC)委員長が「株式市場の不安定さの一因は中間選挙」と発言し、現状の乱高下する株式市場の影響が中間選挙に起因することを示唆しており、引き続き中間選挙までは乱高下する株式市場への懸念も、ポジション手仕舞の動きを活発化させ、ドル売りに繋がったものと考えています。
ただ、前日の動きで最もダイナミックだったのがポンドです。ラーブ英EU(欧州連合)離脱担当相が「英EU離脱を巡る交渉は11月21日までに合意すると期待」と発言し、ハント英外務相も「ブレグジット交渉が11月21日までに進展し決着することは十分可能」との発言を行ったことから、ポンドドルは1.2760ドル付近から1.2820ドル付近まで急伸しました。本日の東京時間においても、一部報道でメイ英首相と欧州連合(EU)が離脱交渉の金融サービス分野で合意したとの報道があり、ポンドドルは1.2850ドル付近まで再度急伸しています。本格的にブレグジット交渉の決着が見えてくるようであれば、ポンドはもう一段高を目指す動きになりそうです。
今後の見通し
ポンドがブレグジット交渉の前進により急伸した一方、ユーロについては引き続きイタリアの予算案問題などがまだまだ不安定なため上値の重さが継続しています。これまでは、欧州、英国共に下落材料を多数抱えていたこともあり、下落時には同じように下値を拡大、ポジティブサプライズがあった時は共に上値を拡大という「欧州通貨」という括りで動意があったものの、今回はポンド急伸にユーロ小幅安と、いままでの動きとは明確に違いが出てきています。現状の動きが継続するようであれば、ポンド上昇時においてもユーロの連れ高という動きは期待できないのではないでしょうか。
米国の中間選挙絡みの報道が、ちょくちょくヘッドラインを騒がせており、いよいよ中間選挙に対する見方がマーケットの動きに直結しそうです。トランプ大統領が「中間選挙で民主党が勝利すれば株は下がるだろう。共和党勝利なら株は上がる」と発言しているように、明日には米雇用統計が控えているものの、マーケットの注目は既に中間選挙に向いている可能性が非常に高いです。前日のドル売りの材料は、あくまで月末のロンドンフィキシングが影響しているため、一旦ドル円については113円台を回復してから仕切り直しという展開になりそうです。
前日発表されたADP雇用社数は22.7万人増と市場予想19.4万人増を大きく上回り、8か月ぶりの大幅増加となりました。米国経済の好調さ、それに伴う労働市場の底堅さも確認されており、明日の米雇用統計についてはある程度強い数字は織り込まれていると考えられます。急速にポンドが買い戻されているものの、ポンドについては1.33ドル付近から1.27ドル付近までの下落という動きがあったため、まだまだ上昇余地はあるものと考えられます。ラーブ英EU(欧州連合)離脱担当相は、議会のEU離脱委員会に宛てた書簡の中で、ほとんどの課題は解決済みであるものの、北アイルランドの問題は依然残っているとし、合意時期は11月21日が適当である、と説明しました。また、残っている問題はアイルランド問題や移行期間延長を含む4つだとしています。逆に考えれば、ポンドが上昇する材料があと4つ残っていると考えることもできるため、ポンドについては一転上値拡大と考えた方がいいのかもしれません。
ポンド急伸時においても、ユーロの連れ高は限定的、上値は重いと見る
ブレグジット交渉が前進するのではないかとのヘッドラインにより、ポンドが急伸する一方、ユーロについては依然として上値の重い地合いが継続しており、現状のユーロ円のショート戦略に変更はありません。ポジションメイクは128.20円、引き続きユーロ円ショートの戦略を継続します。損切りは128.70円上抜け、利食いに関しては126.70円付近を想定しています。
海外時間からの流れ
前日は、ポジティブサプライズがない以上はポンドの上値が重い旨の寄稿をしましたが、すぐさまブレグジット交渉前進の可能性という最も効果的なポジティブサプライズがありました。この流れで進展するのであれば、格付け会社からの格下げもないでしょうし、これまでの懸念材料が一気に解消するかもしれません。ただ、ユーロについてはイタリアが計画する財政拡大と債務削減とは両立し難いとの見解は変わっておらず、引き続き大きな懸念材料として意識されそうです。
今日の予定
本日は、英・10月製造業PMI、英中銀(BOE)政策金利、米・新規失業保険申請件数、米・10月ISM製造業景況指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。