成年後見人は、認知症などで判断能力が不十分な人に代わって財産管理や契約などを行います。判断能力が不十分な人は家族が亡くなったときに相続の話し合いに加わることができず、成年後見人を立てる必要があります。
高齢化社会の進展により認知症を発症する人が多くなっています。こうした背景から成年後見人を必要とする人は増えていると見込まれますが、実際に成年後見人を立てる人はまだ少数です。これは、制度があまり普及していないことや、成年後見人の負担が大きいことが要因です。
成年後見人は、本人の親族や法律・福祉の専門家のほか、福祉関係の法人でもなることができます。一個人では負担の大きい成年後見も、組織単位で行えば一人あたりの負担は軽減できます。また、数十年にわたる長期の後見も可能になります。
1.成年後見人とは?
成年後見人は、成年後見制度のもとで判断能力が不十分な人に代わって財産を管理したり、契約や相続などの法律行為を行ったりします。
認知症や精神障害などで判断能力が不十分な人は、自分で財産管理や契約の締結を行うことが困難で、悪徳商法の被害にあう人もいます。家族が亡くなって相続人になった場合も、相続の話し合いに加わることができません。
こうした判断能力が不十分な人を保護し支援する制度が成年後見制度です。成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」に分けられます。
法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人を保護・支援する制度で、本人の判断能力の程度に応じて「補助」、「保佐」、「後見」から選択できます。
任意後見制度は、現在は判断能力が十分である人が、将来判断能力が不十分になった場合に備えて利用する制度です。
これらの制度の体系や詳しい内容については、次の図と表を参考にしてください。
(この記事ではこのあと「補助」や「保佐」の場合もまとめて「成年後見」、「成年後見人」と呼びます)
2.法人(会社)が成年後見人になることは可能?
成年後見人は、本人の親族や専門家のほか、法人でもなることができます。成年後見人になる法人について、特に制限はありません。
法人が成年後見人になると、長期にわたってサポートが受けられるメリットがあります。
成年後見を一度始めると、本人が死亡するか判断能力が回復するまで、成年後見人はその役割を果たさなければなりません。精神障害や知的障害で本人が若いときから成年後見人を立てる場合は、長期にわたるサポートが必要になります。
個人が成年後見人になった場合は、成年後見人が本人より先に亡くなる可能性があります。また、成年後見人が高齢になると、体力面や精神面から成年後見人の役割を十分に担えなくなる可能性もあります。こういった場合は、改めて成年後見人を選びなおさなければなりません。
法人が成年後見人になっていれば、実際は複数の人が成年後見人の役割を担うため、後見を長期にわたって継続できます。複数の人が役割を担うことで、一人あたりの負担が軽減されるほか、あらゆる業務に対応することもできます。
一方、法人が成年後見人になることにはデメリットもあります。たとえば、複数の人が業務に携わるため、意思決定がスムーズにできない場合があります。また、本人と成年後見人の関係が個人対個人の関係でなくなるため、対応が事務的になることもあります。
3.依頼できる法人は具体的にはどんなところがある?
成年後見を依頼できる法人には、次のようなものがあります。
- 社会福祉法人(社会福祉協議会など)
- 社団法人
- NPO
- 弁護士法人、税理士法人、司法書士法人、行政書士法人など専門家で構成される法人
成年後見人を立てるときは、家庭裁判所に申し立てをします。申し立てでは、成年後見人の候補者として法人を推薦することができますが、誰が成年後見人になるかは家庭裁判所が決定します。
なお、成年後見人が希望したとおりに選ばれなかったからといって不服を申し立てることはできません。成年後見の申し立てそのものを取り下げようとしても認められない場合が大半です。
4.まとめ
成年後見人は法人でもなることができます。個人に比べて長期的なサポートができるほか、あらゆる業務に対応できるところもメリットです。
成年後見人は家庭裁判所によって決められますが、申し立てをするときに成年後見人の候補を推薦することができます。身近に適任な人がいない場合は、法人を候補にすることもできます。
(提供:税理士が教える相続税の知識)