相続の手続きでは、他の相続人の同意を証明する書類として「相続同意書」の提出を求められる場合があります。この記事では、相続同意書とはどのようなものかについてお伝えします。

相続人どうしで遺産分割について話し合った結果を記した書面として「遺産分割協議書」がありますが、「相続同意書」との相違点についてもお伝えします。

1.「相続同意書」とは?

相続同意書
(画像=税理士が教える相続税の知識)

「相続同意書」とは、ある遺産を誰が受け取るかを相続人どうしで取り決め、その合意内容を証明した書面をさします。多くの場合、手続きする機関が指定する書式があり、その書式に相続人全員が記名、押印します。

具体的な例としては、遺産分割協議を行う前に被相続人名義の預金を引き出す場合などで必要になります。

金融機関は預金者が死亡したことがわかると、預金の引き出しを凍結します。これは、一部の相続人が不正に相続財産を取得することを防ぐための措置です。原則として、相続人全員による遺産分割協議が終わって遺産分割協議書が提出されるまで預金の凍結は解除されません。しかし、実際の窓口業務では、生活資金や葬儀費用など預金を引き出す必要がある場合に、相続人全員の同意を条件として引き出しに応じる場合があります(金融機関によって取り扱いは異なります)。

このほか、被相続人が営んでいた許認可事業を相続人が引き継ぐ場合や、船舶や自動車の名義を変更する場合に相続同意書が必要です。

許認可事業の相続で相続同意書が必要となる例

  • 食品営業許可が必要な業種(飲食店、食品の製造業、食品の販売業など)
  • クリーニング所
  • 理容所・美容所 など

2.「相続同意書」と「遺産分割協議書」の違い

相続手続きで必要となる書類には「相続同意書」のほか、「遺産分割協議書」があります。どちらも遺産を誰が受け取るかを相続人どうしで取り決め、その合意内容を証明する点では共通していますが、次のような違いがあります。

●相続同意書
預金や自動車など特定の遺産について誰が受け取るかを記載。許認可事業の相続でも必要。
遺産分割協議書に比べて簡便な様式。不動産の相続登記では使用できない。

●遺産分割協議書
被相続人の遺産のすべてを包括して、どの遺産を誰が受け取るかを記載。
相続同意書も遺産分割協議書も、相続人全員の記名と実印の押印が必要です。

なお、法務局で不動産の相続登記をするときは、相続する不動産の確定と誰が相続するかの確認が求められます。そのため、相続同意書ではなく遺産分割協議書という体裁が必要になります。不動産の相続登記だけを先に行う場合は、「一部遺産分割協議書」を作成することで手続きができます。

遺産分割協議書の作成については、次の記事を参考にしてください。

ひな型をダウンロードして完全解説!遺産分割協議書の書き方の決定版

3.「相続同意書」の文例

この章では、預金口座と自動車の手続きで活用できる相続同意書の文例をご紹介します。

もし、自分で作成することが難しい場合は、行政書士や司法書士に作成を依頼することもできます。なお、提出先で指定の様式が準備されていることもあるため、事前に確認することをおすすめします。

預金口座の相続同意書の文例

相続同意書
(画像=税理士が教える相続税の知識)

自動車の相続同意書の文例

各地の運輸局のホームページでは「遺産分割協議書」として様式が掲載されています。自動車だけについて記載するため「相続同意書」に近い様式です。

相続同意書
(画像=税理士が教える相続税の知識)

4.まとめ

「相続同意書」は遺産を誰が受け取るかを相続人どうしで取り決め、その合意内容を証明した書面です。同様の役割の書面として「遺産分割協議書」がありますが、相続同意書は遺産分割協議書より簡便な様式で、指定の書式がある場合は、空欄に必要事項を記入するだけで作成できます。

しかし、相続財産の種類が多ければ、提出先ごとに相続同意書を作成するとかえって手間がかかってしまいます。個別のケースに応じて、相続同意書と遺産分割協議書を使い分けるとよいでしょう。これらの書類の作成は、行政書士や司法書士に依頼することもできます。

(提供:税理士が教える相続税の知識