先週末11月16日(金)の日経平均株価は2万1,680円で取引を終えました。
前回のレポートでは、前週末11月9日のローソク足が2本の移動平均線を下抜ける「二本抜き」の形となっていたため、思ったよりも弱気になっているかもしれない点に注目しました。
そして実際に、週足ベースでは、3週ぶりの下落に転じ、前週末終値(2万2,250円)からの下げ幅も570円安となって、再び節目の2万2,000円台を下回っています。
今週もこのまま軟調ムードが続くのでしょうか。
まずはいつもの通り、図1で足元の状況から確認します。
■図1:日経平均(日足)の動き(2018年11月16日取引終了時点)
先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて25日移動平均線を下回る展開が続き、弱めの推移だったと言えます。
また、ローソク足の並びに注目すると、陽線(白)と陰線(黒)が交互に続く「鯨幕(くじらまく)相場」が前週まで2週にわたって続いていましたが、先週の13日(火)と14日(水)に陰線が続いたことで、途切れる形となりました。
鯨幕相場の終えん自体が今後の相場の見通しに大きな影響を与えるわけではありませんが、途切れる要因となった13日(火)と14日(水)のローソク足の形は、意外と重要かもしれません。
特に重要なのが13日(火)のローソク足です。
下ヒゲの長い陰線となっていますが、この13日(火)の取引は、米国株市場がアップル株を中心に大きく下落した流れを受けた日です。
実際に、日経平均は「窓」を空ける格好で取引が始まり、一時、前日比で785円も値を下げる場面も見せました。ただし、その後は459円安まで下げ幅を縮小させて終え、これが長い下ヒゲの理由になります。ヒゲの長さは326円です。
一般的に、ローソク足のヒゲは「揺らいだ気持ち」を表すとされていますが、13日(火)の取引では、「このまま相場が崩れてしまうのでは?」という心理が一時的に表れたのかもしれません。
それ故に、翌14日(水)の陰線も、迷いを示すとされる「十字線」に近い形になっています。揺らいだ気持ちが迷いにつながったことにより、15日(木)と16日(金)のローソク足は13日(火)のローソク足の範囲内での推移となったと見ることができます。
また、13日(火)のローソク足には、もう一つの重要な意味が隠されています。
先ほど「下げ幅を縮小させたことで下ヒゲが長くなった」と触れましたが、その下げ幅の縮小をもたらしたのは、中国株市場が堅調だったことです。この日の上海総合指数は上昇して終えていますが、日本株は「米国株からの軟調ムード」で揺らぎ、「中国株の堅調なムード」によって支えられた面があると言えます。
結果的に日経平均は前週末比で500円超下げましたが、その下げ幅が示すほど弱気一辺倒ではなく、前回は「思っているよりも弱気かも」だったのが、今週は「思ったよりもしっかりかも」に転じる可能性があります。
そこで、中国株市場の動きについても見てみます。下の図2は上海総合指数の日足チャートとMACDです。
■図2:上海総合指数(日足)とMACD(2018年11月16日取引終了時点)
チャート全体の形では下落トレンドをたどってきた上海総合指数ですが、最近は10月26日の安値を底に、反発の兆しを見せています。徐々に下値を切り上げ、これまで上値の抵抗となってきた75日移動平均線にトライしようとしていることが分かります。ここを上抜けできると、本格的に戻りを試す展開も期待できます。
さらに、下段のMACDを見ても「0(ゼロ)」ラインを超えてきました。MACDは短期と中期の(平滑)移動平均線の価格差の推移を示した線です。MACDの値がマイナスということは、短期の移動平均線が中期の移動平均線よりも下に位置している状態です。つまり、MACDが0(ゼロ)ラインを上抜けたということは、短期の移動平均線が中期の移動平均線を上抜ける「ゴールデン・クロス」の達成を意味します。
今週の中国株市場が引き続き堅調であれば、日本株を支える材料となりそうです。
最後に、同じMACDからの視点で日経平均の様子もチェックします。下の図3は週足ベースの日経平均とMACDの動きです。
■図3:日経平均(週足)とMACD(2018年11月16日取引終了時点)
日経平均は先週の値動きで「0円ライン」を下抜けしてしまい、こちらは「デッド・クロス」の形になっています。
上段のローソク足についても、これまでサポートになっていた52週移動平均線を下回ってから4週間が経過しました。早いうちに株価水準を回復させて、再びサポートにしたいところではありますが、なかなか戻しきれません。
その一方で、株価と移動平均線の乖離(かいり)は拡大しておらず、何とか踏ん張っている様子もうかがえます。とはいえ、ジワリと下方向への意識が強まっている点には一応注意しておく必要があります。
迷いや悩みが生じた場合、背中を押すきっかけや覚悟を決める材料があれば、大きく前へ足を踏み出すことができるのですが、今週はイベントや経済指標などの注目材料が比較的少ない週です。
むしろ、今週末にスタートする米クリスマス商戦の滑り出しや、G20(世界主要20カ国・地域)開催に合わせて予定されている米中首脳会談の動向など、相場の視線はやや先にある来週以降に向いています。そのため、今週は手掛かり不足の空白期間とも言える中で、堅調に過ごせるのかが焦点になりそうです。
土信田 雅之(どしだ まさゆき)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
1974年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。国内証券会社にて企画や商品開発に携わり、マーケットアナリストに。2011年より現職。中国留学経験があり、アジアや新興国の最新事情にも精通している。
(提供=トウシル)
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