前日については、イタリアの2019年度予算案について欧州委員会は財政赤字が財政規律に違反しているとして、是正措置を求めることを決め、過剰財政赤字の是正措置(EDP)を勧告しました。サルビーニ伊副首相が予算修正の余地を見せるとの報道から、一時ユーロの買い戻しが入りましたが、報道は否定され、その後は売り優勢となりました。ただ、コンテ伊首相が改革実施を約束したとの報道もあり、一旦はユーロ売りが落ち着きを取り戻しています。あくまで可能性の域ではありますが、最終的にGDP比で0.5%の制裁金を科す可能性があり、このケースだとユーロは急落する見通しです。

事前のコンセンサス通り、EUによるとイタリアは財政赤字削減の公約を果たしておらず、重大なコンプライアンス・リスクとなっているとの認識を示しました。EDPは正式には開始されてはいいませんが、今後の方針を決めるまでにに2週間程度はかかるのではないかと言われています。制裁の実施には通常のプロセスであれば6ヵ月、ファースト・トラックのプロセスを採り入れた場合には3ヵ月の期間が必要となるため、今回のイタリアの予算案問題は来年にかけても影響を及ぼすものになりそうです。

週末の25日には、EU臨時首脳会議が予定されています。ただ、依然としてEU離脱協定素案は完成しておらず、25日に間に合わなければ、EU臨時首脳会議が中止される可能性があると報じられており、このケースだと週明けのポンドは下窓(下落してスタート)する展開になりそうです。メイ英首相の現在の立ち位置としては、政権内からEUと合意した離脱協定案の修正を求める声に直面する一方で、EUからは修正に応じない構えを突きつけられています。メイ英首相とユンケル欧州委員長との会談にて、何かしらの方向性を示したい意向ではあるものの、今以上の修正要求を求めれば、EU臨時首脳会議の開催も危うくなりそうなこともあり、この協議での進展は多くは望めないと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、米国がサンクスギビングで祝日に当たり、明日は日本が勤労感謝の日で祝日、米国は祝日ではないものの感謝祭翌日のブラックフライデーで株式及び債券市場は短縮取引となります。通常時と比べると商いの薄い展開が想定されるため、全体的に動意は限定的になりそうです。ただ、様子見の動きがベースにあることにより、25日のEU臨時首脳会議への注目は一層高まることが考えられます。ただ、このイベントについては結果如何でポンドの動きが大きく変わるため、週末のヘッドライン、月曜早朝のポンドの値動きを見極める必要がありそうです。ただ、メイ英首相に対する不信任決議が実施されるとの報道があった場合は、事前にポンド売りが主導しそうです。

「FRBは、早ければ来年春にも利上げサイクルを休止する可能性」、これが前日ドル円の上値を抑えた報道の内容です。よくある観測報道ではありますが、直近でパウエル・FRB議長やクラリダ・FRB副議長のハト派的発言と整合性があることで、マーケットが意識せざるを得ない内容になっています。ただ、ドル円が113円台から112円台後半に下落した材料ではありますが、すぐさま113円台に回復していることを考えると、マーケットの目線はまだ上方向にあると考えられますが、FRB関係者から再びハト派よりの発言が出てくるようであれば、再びドル円は下落基調を強めることになりそうです。

基本的に様子見の地合いが強まりそうな週末ですが、本日は南ア中銀政策金利発表が予定されています。現在6.50%の金利を据え置きと6.75%に引き上げで市場の予想は拮抗しており、ランドについては政策金利の思惑で動意付きそうです。直近公表されたCPIでは、予想よりも低い結果(前回+4.9% 予想+5.2% 結果+5.1%)となり、利上げするかどうかが微妙なラインとなりましたが、発表後にも緩やかにランド買いが強まっていることを考えると、市場は利上げを徐々に織り込んでいるものと考えられます。リスク要因としては、据え置き後のランド売りということになりそうです。

臨時EU首脳会議前で動きづらいか

ポンドドルについては、臨時EU首脳会議前で1.2800ドルを中心に膠着状態になっています。25日の結果次第ではマーケットの状況が大きく変わってしまうことを考えると、指値、逆指値の幅を縮め、ある程度利益確定の手仕舞とします。利食いについては、引き続き1.2650ドルを見込んでいますが、利食いの逆指値については1.2830ドルに設定します。

海外時間からの流れ

25日にEU首脳会議、本日が米国祝日、明日が日本の祝日に加え米国がブラックフライデーとなるため、流動性は一気に低下する見通しです。狭いレンジでの動きが今週末は中心になりそうですが、流動性が低いため、予定外のヘッドラインには注意が必要です。また、想定外のヘッドラインについては、欧州通貨を中心としたネガティブな内容になると思われます。

今日の予定

本日の経済指標としては、南ア中銀政策金利発表が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。