(本記事は、北澤孝太郎氏の著書『まんがでわかる 営業部はバカなのか』=ゴマブックス、2018年11月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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駆引き3つの鉄則
ものが売れる第3の瞬間は、「駆引きが上手くいった瞬間」です。
駆引きという言葉を聞いてどんな場面を連想されますか。好きな人への告白、ビジネスの交渉、国と国との外交等々、駆引きを使う場面はいろいろありますが、目的は、自分の意図するところをできるだけ多く相手に認めさせるということではないでしょうか。
ビジネスでは、素晴らしい顧客価値を創り出し、そのセールス手法も間違ってはいなかったのに、最後の最後で交渉に失敗し、あまり大きな儲けが出なかったということは多々あります。
逆に、顧客価値はぼやっとして差別化されていないのに、交渉が上手だったため、結局大きく儲けられたということもよくあります。
では、この交渉、つまり駆引きというのはどのように成立するのでしょうか。
既出になりますが、駆引きには次の3つの鉄則があります。
⑴「感情優先」の鉄則
⑵「理屈は先行」の鉄則
⑶「マーカー(期待値の線)は先方」の鉄則
まず相手に感情をぶつける
まず、相手と交渉が始まったなと感じたら、どれだけこの取引をしたいのか、成立させるのにどれほど大変だったか、あなたのことをどれほど大切に思っているのか、どれだけあなたの会社の役に立ちたいのか……など、その取引相手に対する感情をぶつけることが重要です。
これが⑴「感情優先」の鉄則です。人間は感情の動物です。相手から感情をむき出しでこられると、その感情を覆す難しさを直感的に感じます。必死で訴える感情のエネルギーに、対抗できるだけの手段がなかなか見つからないのです。
相手より先に理屈を切り出せ
もちろん感情だけで押しても話は進まないでしょう。感情で押しまくった後に、それだけでは結論を出せなくて、どうしても理屈を言わなければならなくなったら、そのときは、先方より早く理屈を切り出さなければなりません。それも強烈な理屈を、です。これが、⑵「理屈は先行」の鉄則です。
その理屈こそ、感情で押しまくられている先方にとっての逃げ道となります。この逃げ道に先方を追い込むのです。
マーカーは先に相手に引かせる
また、相手にいかにマーカーを先に引かせるかというのも、上手い駆引きの進め方に必要です。マーカーとは、この交渉における期待値の線のことです。この辺で取引したいという条件とでもいいますか、マーカーをこちらから絶対に引いてはいけません。
もし、引いてしまったら、その時点でこちらの期待値が相手にバレてしまい、交渉の主導権を握られてしまうからです。そのため、できるだけ相手に先に引かせて期待値を探り出せれば、こちらの希望に近い条件で「それではこうしませんか」「この辺にしませんか」と駆引きの条件を提示できます。
また妥協するにしても、妥協点を決めてから条件を出すことができます。これが、⑶の「マーカーは先方」です。
締めくくりは「掛け算」「引き算」で
このように駆引きに勝つためには、3つの鉄則に従い、最初に、感情×理屈で押しまくり、マーカーを先方に引かせた上で、先方が納得するような取引変数を考え、最後に引き算するという手法を取ります。「掛け算、引き算で駆引き」と覚えておくといいでしょう。
交渉の順番は、必ず掛け算のあとに引き算です。そして、もし、その掛け算がご破算となっても、またもう一度イチから掛け算をし直します。これが交渉技術です。この駆引きという交渉力を身につけ、購買意思と顧客価値のギャップを上手に埋められるようになれば、第3の売れる瞬間、すなわち「駆引きが上手くいった瞬間」を作ることができるのです。
北澤孝太郎
東京工業大学大学院 特任教授(MBA科目 営業戦略 組織担当)。レジェンダコーポレーション 取締役。1962年京都市生まれ。1985年神戸大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。20年に渡り、通信、採用・教育、大学やスクール広報などの分野で常に営業の最前線で活躍。採用・教育事業の大手営業責任者、大学やスクール広報事業の中部関西地区責任者を担当後、2005年日本テレコム(現ソフトバンク)の執行役員法人営業本部長に転身し、音声事業本部長などを歴任。その後、モバイルコンビニ株式会社社長、丸善株式会社執行役員、フライシュマン・ヒラード・ジャパン バイスプレジデントなどを経て、現職。営業リーダー(組織長や部長、役員)教育の第一人者として、数多くの研修や講演の経験を持つ。現在、東京工業大学大学院 環境・社会理工学院の特任教授として、大学・大学院で日本初であり、現在も唯一の営業の授業を担当している。著作に、『営業部はバカなのか』(新潮新書)、『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)、『人材が育つ営業現場の共通点』(PHP研究所)、『営業力100本ノック』(日本経済新聞出版社)などベストセラー作品が多数ある。
文・MONEY TIMES 編集部/MONEY TIMES
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