少子高齢化と労働力人口の減少から、日本政府は「働き方改革」を推進しています。そのキーワードのひとつに「パラレルキャリア」という言葉があります。仕事に関する新しい言葉の中でも「フレックスタイム」や「テレワーク」は、浸透してきた感があります。しかし、「パラレルキャリア」はいまひとつ耳慣れない人も多いのではないでしょうか。副業との違い、役立つこと、そのメリット・デメリットなどについて考えてみましょう。
パラレルキャリアとは
「パラレルキャリア」とは、著名な経営学者ピーター・ドラッカーが、その著書『明日を支配するもの』の中で提唱した人間の生き方です。一言でいうと「本業の他に、別の仕事を持つこと。もしくは仕事に限らない社外活動をすること」です。ドラッカーは社会活動と本業を両立させることで、それらが相乗効果を生み、人生が豊かになると主張しました。この社会活動が「パラレルキャリア」です。
パラレルキャリアと副業の最大の違いは、「報酬だけを求めない点」にあります。副業の主目的は、本業以外にも収益源を持つことにあります。一方、パラレルキャリアの目的は、社会活動を通して「自己成長」「スキルアップ」「夢への挑戦」などを実現することです。
最近のパラレルキャリアのいちばんわかりやすい事例は、サラリーマンとして働いたり、自営業をしたりしながら、インターネットを利用して、ブロガーやユーチューバーをしている人ではないでしょうか。彼らの目的はグルメやクッキング、趣味やおすすめ商品を紹介し、多くの人から共感を得たり、交流が生まれたりすることです。ファンや購読者を集めるためには、コンテンツを制作する上でさまざまな努力や試行錯誤を重ねます。その結果、今までのスキルをさらに磨いたり、新しい知識を学ぶことができ、成長に繋がります。さらに、書籍の出版や広告収入に繋がったりもします。
自分が活躍できる場所を見つけるという意味では、ボランティア活動も立派なパラレルキャリアでしょう。40歳以下の人が参加できる青年会議所(JC)の活動や、地域の子供たちの見回り活動、消防団活動なども当てはまるでしょう。そうした活動は数限りなくあります。
また、活動内容によっては費用がかかるケースもありますが、すべて自分でお金を払います。無報酬はもちろん、資金の持ち出しがあってもパラレルキャリアになるという点も副業との大きな違いです。
築いた人脈が本業で役立つ
実はこうした活動で生まれた人脈や得られたアイデアが、いつか本業に活用できる可能性があります。それがパラレルキャリアの魅力です。
例えば、SNSを活用してボランティアやNPO活動を積極的に発信することで、参加者や賛同者が増え、人脈の輪が広がるケースもあります。また、ブロガーやユーチューバーもさまざまなメディアで話題を集めることで、イベントやセミナー、大学などの講師として招かれたりするかもしれません。本業に没頭していたため、これまで放置してきたことに、再チャレンジできるかもしれません。作家、野球監督、政治家、あなたが本当にやりたかったことを改めて思い浮かべてください。
本業以外に自分の居場所を持つと、世の中を見る視野が広がります。客観的に自分を見つめることで、本業のパフォーマンスも向上し、収入や地位が上がるかもしれません。
お金や時間に追われて、本末転倒になる可能性
パラレルキャリアにデメリットはないのでしょうか。パラレルキャリアを持てば、異なることを同時並行で行うケースが増えるわけで、それぞれに費やす時間の配分を間違えると、物事がうまく進まなくなるかもしれません。パラレルキャリアが本業よりも面白くて、のめり込んでしまう可能性もあります。結果的に本業に支障をきたして、自分の評価が下がって収入が減ったり、忙しすぎて体調が悪くなったりするかもしれません。本来、パラレルキャリアは本業を充実させるものですが、これでは本末転倒です。
内容によっては、予想以上に出費が多くなることもあります。また、人間関係がうまくいかなければ、精神的な負担も増えるでしょう。依頼を断り切れず、本業に時間を取られてしまうこともあるかもしれません。費やす時間とお金の範囲はあらかじめ決めておくことが大事です。
始める前に考えを整理する
パラレルキャリアを持つことの重要性を理解した人でも、いざ始めるとなると、二の足を踏む人も多いでしょう。ある転職サイトが2016年に行ったアンケート調査では、「58%がパラレルキャリアを実践したいと回答したが、実際にパラレルキャリアをしている方は26%」という結果が出ています。
また、パラレルキャリアをしていない方のうち、8割以上が「興味がある」と回答しましたが、活動していない理由として「何をしたいか定まっていない」「始め方がわからない」の2点を挙げています。あなたが生きがいを感じる活動は何ですか。これだけはやりたくないということはありますか。パラレルキャリアに取り組む前に、自分が「やりたい」こと、自分が「やりたくない」ことを、すべて書き出し、しっかりと整理しましょう。きっとそこに、自分に最適なパラレルキャリアが見えてくるはずです。(提供:Dear Reicious Online)
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