シンカー:夏場の自然災害による生産の落ち込みからの明確なリバウンドが確認された。冬のボーナスの増加を背景とする消費が回復すること、がバブル崩壊後はじめてGDP比率16%の天井を打ち打つ破った設備投資サイクルが強さ増すこと、そして災害復旧と来夏の猛暑対策などの補正予算の執行を含めた公的支出の増加が予想される。11月の誤差修正後の経済産業省予測指数は前月比-2.1%と10月の挽回生産の反動で低下するが、12月の予測指数はどう+2.2%と堅調であり、10-12月期は前期比+2.0%程度となるペースである。10-12月期の生産は明確にリバウンドし、7-9月期の落ち込み(前期比-1.3%)が自然災害による一時的なものであることが確認されるだろう。マイナス成長となった実質GDPも、7-9月期の前期比年率-1.2%から、10-12月期には同+3%程度にリバウンドする可能性がある。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

10月の鉱工業生産指数は前月比+2.9%と大幅に上昇した。

6月には大阪での地震、7月には西日本での豪雨、8月には異常な猛暑と2回の台風上陸など、自然災害が多発する夏となり、サプライチェーンが一部で寸断するなど、経済活動全体が阻害された。

9月には2回の台風上陸や北海道での地震などの自然災害が多く、物流が滞り、生産活動が阻害された。

6月から9月までに実質輸出は3.7%も減少し、生産も1.8%減少している。

生産活動の低迷は、需要ショックより供給ショックの影響の方が圧倒的に大きかったとみられる。

貿易紛争や不安定なマーケットなどの不透明要因を抱えながら、現在のところはまだ内外需ともに堅調なようだ。

10月からはサプライチェーンと物流の復旧と、これまでの遅れを取り戻す生産の動きがみられた。

10月には実質輸出は前月比+6.2%もリバウンドし、生産も同程度(9月までの落ち込みの1.5倍程度)で、生産もしっかりリバウンドした。

10月の経済産業省の誤差修正後の生産予測指数は前月比+0.9%と控えめであったが、予測で織り込みきれていなかったサプライチェーンと物流の復旧があった分、大きく上振れたとみる。

鉱工業生産指数は、確報は9月から、速報は10月から、基準年が2010年から2015年に更新された。

2010年から2015年までは、技術革新と汎用性の向上により、IT・情報関連財の生産には大きな変化があった。

新旧の指数を比較すると、2014年から2016年までの生産の停滞は旧指数でより顕著であった。

IT・情報関連財で新たな製品に更新され、生産が激減したものの影響が大きかったとみられる。

一方、2017年以降は、新旧の指数の動きに大きな差がなくなっている。

日本の生産は、汎用品から特殊品に中心が移ってきた。

IoT・AI・ロボティクス・ビッグデータなどの産業変化もあり、データセンターや車載向けの部品などの需要は増加を続けているとみられる。

グローバルに設備投資は拡大し始めており、日本が比較優位を持つ資本財の生産には追い風が吹いているようだ。

競争力の改善と米中の貿易紛争を反映して世界貿易に対する日本のシェアも緩やかに上昇しているとみられ、生産拠点の国内回帰の動きもある。

これらが、汎用品を中心に既に古い製品の調整が終わった後の旧指数と、特殊品の影響がより強くなった新指数が同じような動きを示している理由かもしれない。

冬のボーナスの増加を背景とする消費が回復すること、がバブル崩壊後はじめてGDP比率16%の天井を打ち打つ破った設備投資サイクルが強さ増すこと、そして災害復旧と来夏の猛暑対策などの補正予算の執行を含めた公的支出の増加が予想される。

10月は生産が大幅に増加したが、在庫指数は前月比-1.4%と低下し、在庫管理に問題はまったくみられない。

11月の誤差修正後の経済産業省予測指数は前月比-2.1%と10月の挽回生産の反動で低下するが、12月の予測指数はどう+2.2%と堅調であり、10-12月期は前期比+2.0%程度となるペースである。

10-12月期の生産は明確にリバウンドし、7-9月期の落ち込み(前期比-1.3%)が自然災害による一時的なものであることが確認されるだろう。

マイナス成長となった実質GDPも、7-9月期の前期比年率-1.2%から、10-12月期には同+3%程度にリバウンドする可能性がある。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司