文系のための「統計思考」入門

村の平均年収
(画像=THE21オンライン)

ビッグデータの活用が一般的になり、最近ではデータサイエンティストを自社で育成する企業も増えている。今や統計学は現代の必須教養科目と言えるだろう。しかし、数字に苦手意識を持っていて、データの扱い方を知らない文系ビジネスマンは少なくない。数字を使わずに統計の基礎知識を理解できないものか。そこで、データ分析のプロとして活躍し続ける神永正博氏に、統計学とは何か、そして統計で何ができるのかを噛み砕いて教えていただいた。

「平均値」は全体の標準ではない!

統計を学ぶと聞いて、皆さんはどんなことをイメージしますか。テクノロジーによる未来予測でしょうか。確かに、AIエンジニアの自動運転開発に代表されるように、現場の最前線では統計が使われています。彼らは、パターン認識による統計的機械学習を通じて、人の動きを予測した自動車走行を研究しているのです。

一般ビジネスマンの場合、そこまで専門的な領域まで学ぶ必要はありません。ただ、統計学の基礎を知っておくことで、データに惑わされず事実を正しく把握することができるようになります。

所得を例に説明していきましょう。下の図1をご覧ください。

村の平均年収
(画像=THE21オンライン)

平均所得金額が545万8,000円で、中央値が428万円とあります。さて、このデータで国民の標準的な所得を表わしているのはどちらでしょうか。正解は、428万円です。ほとんどの人は標準=平均値だと思いこんでいるのではないでしょうか。詳しくは後述しますが、平均値は実態を表わす指標としてはあまり適切ではないのです。これだけでも、現状を正しく理解するために統計の知識が必要だとわかっていただけると思います。